こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。
2020.05.18 エッセイのレシピ
2020年5月15日、伊丹十三記念館は開館13周年を迎えました。
2007年のオープン以来、支えてくださった多くのお客様や関係者の方々に、心より御礼申し上げます。
これからも、伊丹十三記念館をどうぞよろしくお願いいたします。
しばらくお休みしておりました記念館便りも再開させていただくこととなりました。
伊丹さんのこと、記念館の最新の情報や近況、日々のちょっとしたこと等々を皆さまにお伝えしていきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。
現在の中庭の桂。新緑のきれいな季節になりました
さてここ記念館に来られるお客様から、エッセイスト・伊丹さんの著書を読み、書いていることを真似してみた・試してみたというお話をよくうかがいます。
これまでもいくつかご紹介してまいりましたが、以前、特に「料理」のレシピを試しているという中学生の女の子が来館されたことがありました。
「料理通」の顔も持っていた伊丹さんのエッセイには、料理やそのレシピを紹介しているものが数多くあります。お母さんの愛読書である『女たちよ!』(新潮文庫)を読み、お母さんと一緒にそのレシピをいろいろと作ってみたそうで、以下2つが「大のお気に入り」なのだと話されていました。作り方の部分を、『女たちよ!』からご紹介しますね。
ひとつはカルボナーラです。エッセイ「深夜の客」より引用しますと――
スパゲッティを大きな鍋で、できるだけ大量のお湯で茹でる。スパゲッティはすかっとした歯ざわりが身上であるから決して茹ですぎてはならない。
ベーコンを小さく切って、ベーコンが油と分離してかりかりになるまで炒め、これを油ごとあらかじめ暖めた大きな鉢に入れる。一人一個くらいの割りで卵をとき、その中に胡椒挽きで黒胡椒をがりがり挽いて入れる。
さて、これで準備完了、仕上げは瞬間的である。すなわち、スパゲッティのお湯を手早く切り、まだ熱くて湯気の出てるやつを、ベーコンを入れた鉢にどっとあけ、卵をざぶりとかけてかきまわす、これでよい。
卵が少なすぎると卵がそぼろ風に固まってうまくないから注意を要する。
食べる時にはパルミジャーノというチーズを、スパゲッティが見えなくなるくらい振りかけて召し上れ。
もうひとつは「スパゲッティの裏に伏兵あり」に紹介されている「ズッパ・ディ・ヴェルドーラという、すなわち野菜スープ」です。
まず、野菜を賽の目に切る。野菜はじゃがいも、人参、玉葱、それにセロリを使う。スープ鍋で、細かく切ったベーコンを炒め、これに野菜を加えてざっとかきまわし、野菜が軟くならぬうちに水を加え、塩胡椒し、あとはとろとろと煮込むだけのことである。ただし、野菜の形がなくなってしまうまで煮てはよくない。やはりじゃがいもや人参の小さな賽の目がごろごろしていないとおもしろくないのである。
どうも例によって簡単すぎて恥ずかしいような料理であるが、味は私が保証する。パルミジャーノというチーズをおろしたものを大匙三、四杯も振って食べるのであるが、熱くてよし冷くてよし、朝食によし、深夜飲みあきて、ちょっとひと休みという時によし、保存はきくし、こんな便利なものはない。
『女たちよ!』(新潮文庫)
ご興味のある方はぜひ挑戦してみてください。
スタッフ:山岡
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