こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。
2019.12.02 飛行機の窓の外の風景
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
中庭の桂もほとんど落葉し、冬のたたずまいになってきました。
吹く風も冷たくなり冷え込んでまいりましたので、体調など崩されませんようご自愛くださいね。
さてここ記念館でお客様をお迎えしていますと、伊丹さんのエッセイを読まれた方から「書かれていたことを試してみました」「影響を受けました」というお話をよくうかがいます。
先日もそんなお客様がお越しくださいました。
ふだん飛行機で全国各地を移動しておられるそうですが、伊丹さんのエッセイにあった一節をきかっけに「移動手段として利用するだけだった飛行機が、乗ることを楽しみに思えるようになった」のだとか。
その方が読まれたというのがこちら。著書『日本世間噺大系』にある「走る男」からの引用です。
実際のところ、私だって、正直いって窓際に坐りたいと思う。確かに窓際の席というものは魅力であります。特に、晴れている日に窓際の席から下界を見下ろす愉快などというものは何物にも替え難いとすら私は思う。知っている町や村を高い所から矯めつ眇めつする楽しみは言を俟たず、未だ訪れぬ山川は見知らぬものとして無限の興趣を誘う。洵に一木一草が私の目を捕らえて離さぬといって過言ではない。(中略)
窓際の席について更に一言するなら、私は相当の活字中毒であるが、窓際の席にある限り、およそ書物を必要とせぬ。窓外の風景が書物に百倍する楽しみを与えてくれるからである。
「走る男」『日本世間噺大系』(新潮文庫)
この文章を読んでから「こんな乗り方もあるのか」と飛行機の窓から見える風景を楽しむようになり、今はそれを撮影するのが趣味になっているそうです。何枚か見せてくださった写真には、飛行機の窓から見えたというきれいな青い空や雲海、山や川、夜景などが写っていて、ここで実際にご覧いただけないのが残念なくらい見ごたえがありました!
これから年末年始にかけて、帰省や旅行で飛行機を利用するという方もいらっしゃると思います。機内での過ごし方はいろいろだと思いますが、もし窓際の席に座られた際は、伊丹さんや上述のお客様のように飛行機からならではの風景を楽しんでみるのはいかがでしょうか。
スタッフ:山岡
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