こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。
2019.09.02 積乱雲
夏の暑さが落ちつくころといわれる処暑を過ぎ、9月になりました。
松山は朝晩の暑さが随分やわらぎ、記念館の周辺では、夕方になると虫の音が聞こえます。ゆっくりと秋が近づいているのを感じます。
ところで、伊丹さんのエッセイ集『女たちよ!』の中に、こんな一節があります。
" 年を取ったせいか、朝、やたらに早く目が覚める。
五時、六時、というのに、もうはっきりと目が覚めてしまう。
永井龍男さん流にいうなら、一息に眠れる時間が、だんだん短くなってきた、というのだろう。
朝のうちは、そこで、裸で屋上に寝そべって呆然として過す。朝の強い日ざしの中で、青い空、白く光る積乱雲を見上げて、呆然として過す。
積乱雲などというのは、一体何年ぶりでしみじみ見上げるのか知らないが、実に昔と同じだね、あれは。
輪郭が、どこか人の横顔に似ていたり、その横顔の形がどんどん崩れながら、峰のほうへ峰のほうへ伸びていったりするのも昔のままだ。
それから、その峰のあたりの雲をつぶさに見ていると、だんだん綿菓子そっくりに見えてくるのも、これまた昔と同じ。(子供の頃、えらくだだっ広い道だと思っていたのが、大人になってから見ると、どうしても同じ道とは信じられないくらい、みすぼらしい路地だったりするもんだが、綿菓子に関しては不思議にそういうことがないね。昔も大きかったし、今もやっぱり大きい)
そうして、動いてゆく雲を見ていると、いつしか、雲は動きを止め、われわれの寝そべっている建物が、大地自身が、巨大な汽船のように、音もなく、震動もなく、滑るように動き始めるところまで、何もかも子供の頃とそっくり、そのままだ。
動くのは、雲か、われか? "
「ウイローの紳士」『女たちよ!』(1968年)より
青い空に湧き上がる積乱雲、この夏もよく目にしました。エッセイに書かれているように、昔も今も変わらぬそのようすを、何とはなしに眺めてしまうときがあります。
開館・閉館作業で外回りをチェックしているとき、
空や雲のうつくしさに気づきます。
8月下旬頃からは、空を見上げると雲が高い位置に浮かんでいることが多くなり、夏の風物詩・積乱雲の出番が減ったようにおもいます。空のようすからも、少しずつ秋が近づいているのがわかります。
中庭から空を見上げると、
季節によって違う空のようすが綺麗に見えます。
とはいえ、日中は、まだ気温の高い日もあります。
夏の疲れが出るころですので、皆さま、くれぐれもご自愛くださいませ。
スタッフ : 淺野
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