こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。
2019.07.29 新資料、燻蒸中!
"湯河原の家"から、家具・書籍・生活用品などの資料が届きました。湯河原から記念館への追加収蔵は開館以来初めてで、段ボール箱にして50箱超のボリュームです。
※湯河原の家...自然豊かな環境での子育てのために、伊丹十三が移り住んだ家。のちに別荘。一六タルト・西友・味の素マヨネーズなど数々のテレビCMのほか、監督デビュー作『お葬式』のロケ撮影にも使われました。
収蔵庫に入れる前に、資料に付着しているであろう虫や菌を退治しておくため、7月28日(日)から29日(月)にかけて燻蒸(くんじょう)を行っております。
密閉した空間に気体状にした薬剤を充満させる"燻蒸"、皆様お馴染みのところでイメージしていただくなら「バルサン」みたいなもの......といったところでしょうか。
博物館施設によっては"燻蒸庫"という専用設備をお持ちのところがあったり、それがなくとも、収蔵庫を丸ごと密閉して燻蒸するやり方もあったりしますが、今回は新規に受け入れる資料を対象に行いたい――
ということで、総合衛生コンサルタント・生物害防除の東洋産業松山支店さんご相談しましたら、コンパクトに実施できる方法として「包み込み」式の燻蒸をお勧めいただきました。休館せずに行えるのも、包み込み式のメリットです。
使う薬は虫・卵・カビ(菌)に幅広く効果を発揮する、こちらです。
文化財虫菌害研究所の文化財虫菌害防除認定薬剤「エキヒュームS」。
左奥は、薬をじゅうぶんに温めて、気体の酸化エチレンにするための気化器です。
館内(2階)に専用シートの"テント"を設営していただき、
シートにはガスを通さない加工がされています。
燻蒸したいものを詰め、薬剤ガスを送り込むホースを引いて、
テスト用の虫と菌のサンプルも置き、
燻蒸後、文化財虫菌害研究所に送って効果を判定していただきます。
テントの口を端から端まで、テープと大きなクリップでピッチリ!と閉じます。
隙間なくホースだけが入っている状態になったら――
スタンバイできましたーー!
(手前の機械はガス警報器です)
いざ投薬!!
「文化財虫菌害防除作業主任者」の資格を有する方が
法令を遵守して進めてくださいます。安全第一!
テント内部の気温25℃以上、酸化エチレンの空間濃度1%以上の状態を保ちながら、24時間かけて燻蒸します。
所蔵資料を展示に供するだけでなく、安全に、虫菌害の起らないように保管していくのも博物館の務めでございます。
専門業者さんに殺虫・殺菌していただいてから収蔵しますと、収蔵庫内の環境が保全され、すでに入っている資料へ悪影響を及ぼすことも防げますので安心ですね。
燻蒸がすみましたら、新規収蔵資料はお手入れ・整理をしつつ、皆様のお目にかけられるようによく調査させていただきます。
たくさん受け入れましたのでちょっと時間がかかると思いますが、お楽しみにお待ちくださいませ!
学芸員:中野
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