こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。
2018.12.10 どーーんと伊丹十三!!
あれはいつのことだったでしょうか。
私は何かの取材対応をして......そうそう、MUJI文庫の制作チームのみなさんがお下見にお越しくださって、ご案内を終え、お見送りをして館内に戻った、8月末の夕暮れ時でした。
受付にいた川又さんがメモを差し出して「小学館の『メンズプレシャス』という雑誌の方からお電話がありました。中野さんからかけ直して、詳しく聞いていただけますか?」と。
何でも、「ファッション・ディレクターの山下さん」なる、お洒落すぎて耳慣れないご役職にある方が「伊丹さんを"どーーん!"と特集したいと思っていまして、そのご相談を」とおっしゃっているのだとか。
中野「"どーーん!"と、ですか」
川又「ハイ、"どーーん!"と。ホントにそうおっしゃってました」
ついさっき、MUJI文庫のみなさんにお目にかかって、まるまる1冊伊丹さんの本を作ろうという、大変にありがたい企画の詳細をお伺いしたばかり。その最中に、今度はゴージャスな男性ファッション誌からご連絡が来ていたとは。しかも"どーーん!"と......でも、それってどのぐらいなのかしら?
以来3ヶ月余。打ち合わせとお下見、構成ラフの確認、撮影、玉置館長代行のインタビュー収録、校正などなど対応させていただきまして、12月6日に発売となった『メンズプレシャス』2018冬号は――
ハイ、どーーーーん!!
どどーーーーん!!
(2ページある目次のうち1ページ目はほとんど伊丹さん!!)
伊丹さんらしい渋い表情の写真が表紙を飾る43ページもの大特集「伊丹十三STYLE BOOK」、すごいボリュームです。確かに"どーーん!"です。そして想像以上です。
特に、質の高い紙にビシっと印刷された、美しくてシャープな写真は迫力満点で、目を瞠りました。何度か見ていた校正用のデータとは、全っ然違って見えるんです! 被写体になっている館蔵品も記念館内外の風景も、普段から見慣れているはずなのに......今年一番のビックリかもしれません。
撮影していただいた服や愛用品は、テーラーで仕立てたもの、高級ブランドのものからカジュアルなアイテムまでいろいろありますが、どの写真からも、伊丹さんの表情と存在感が浮かび上がってくるように感じます。もちろん、記事本文、新情報続々のインタビュー、ファッションのお勉強になる解説、テキストも隅々まで充実しています。
打ち合わせのとき、企画のご趣旨について「"こだわる男のモノ語りマガジン"をコンセプトにしている雑誌ですので、独特のファッションやライフスタイル、モノ選びを切り口にして伊丹さんの伊達男ぶりを伝えることが目標です」と説明してくださった山下さんは、こんな風にもおっしゃっていました。
「白洲次郎さんの特集号(2018夏号)への反響の大きさから感じたことなんですが、今の時代、みんなの精神的な指針になるような人がいないんですね、でもやっぱり、そういう存在は今も求められているんだな、と。伊丹さんも多くの人の指針となる方だと思います」。
山下さんは私(1977年生まれ)と同世代だそうですが、リアルタイムで伊丹十三を見て記憶に留めているおそらく最後の世代の者として、そのように伊丹十三を見ていて、広く伝えたいと考えてくださる方がいることに、励まされる思いがいたしました。特集のしめくくりになっている山下さんの編集後記まで、余すところなくお読みいただきたいなと思います。
本筋を重んじ、チャーミングでもあった伊達男、伊丹十三の人柄が凝縮された『メンズプレシャス』2018冬号1200円(税込)、ぜひお買い求めいただきまして、どーーん!とお楽しみくださいませ。記念館のグッズショップでも、どーーん!と販売しております!!(前回ご紹介したMUJI文庫の「伊丹十三」も11月24日に販売を開始しました!!)
さて、『メンズプレシャス』で伊丹さんの伊達男ぶりをご堪能いただきましたら、表現者としての実像に迫るドキュメンタリー番組もご覧ください。
作品づくりの現場を共にした方々、影響を受けた方々が伊丹十三の創造力を語りつくす『もっと四国 8人の伊丹十三』(NHK松山局制作)が全国放送されることになりました!
BSプレミアムで12月15日(土)15:00~15:43放送、お見逃しなく!!
学芸員:中野