こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。
2018.09.10 菅井きんさんの名演技
8月10日、菅井きんさんが92歳でご逝去されました。
津川雅彦さんのご逝去から1週間後だったんですね。ご訃報が続き、悲しい夏でした。
"必殺シリーズ"の姑が中村主水をやりこめる「ム・コ・ど・のッ!」があまりにも強烈で面白くて、テレビを見ている最中はもちろん笑ったし、家族みんなで事あるごとに真似してはお腹を抱えて笑ったっけなぁ......というのが、菅井さんに関するもっとも古い記憶なのですが、それとはまったく対照的な『お葬式』でのさりげない演技も、同時期のお仕事だったのですね。
1985年、『お葬式』と『必殺!THE HISSATSU』の演技で、第8回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞をご受賞なさっています。
『お葬式』での菅井さんの名演技といえば、何といっても喪主挨拶の場面。
『お葬式』(1984年)
伊丹十三の監督デビュー作です
大人しい、ごく普通のおばあちゃんの4分ほどのスピーチが、葬儀のドタバタをすべて包み込んでしまう、という重要なシーンなのですが、「『お葬式』日記」(1985年、文藝春秋)によりますと、撮影期間中に梅雨入りしたために、このシーンを撮る頃には天候に恵まれず、リハーサルをしては後日に延期、テストをしては延期、カメラを回すと天気が変わって光量が足りず撮り直し――と、なかなかすんなりといかなかったようです。
妻としての心残り、参列者への感謝、これから一人で暮らす覚悟を「きく江」が述べる、そのしみじみとした語りと表情、背景の木々の緑が実に見事なので、難航したなんて信じられません。菅井さんの確かな演技力あってこそですね。撮影現場では、カットがかかったあとに菅井さんと伊丹さんは抱き合って喜び、スタッフ・キャストからは拍手が起こったそうですよ。
ちなみに、きく江の挨拶に聞き入る面々の「反応」は
別の日に撮影したカットがつながれています
『お葬式』は、菅井さんにも印象的なお仕事だったそうで、上映用パンフレットにこんな言葉を寄せていらっしゃいます。
台本を読ませていただいて、今までにやったことのない役柄に惹かれまして、自分なりに精一杯やらせていただきました。他の作品に比べて非常に抑えた芝居をしてみましたが、その部分が皆様のお目にとまれば、大成功だと思います。
この配役を決めて下さった監督さんに、とても感謝しております。
自分が映画を見る楽しさを覚えてから20年ほどになりますが、初めて見る作品に菅井さんが出演していることがたびたびあって、「この映画にも出ていたのね」「こんな役もやってらしたのね」と未知の菅井さんに出会い続けています。これからも、きっとそうだと思います。
菅井きんさんの長いキャリアとお仕事の数々に、感謝をお伝えしたいと思います。
淋しいですが、私たちにこれからの楽しみまで残してくださって、ほんとうにありがとうございました。
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伊丹十三記念館では、ご来館くださったお客様へのアンケートを実施しております。
お住まい、ご来館回数、記念館をお知りになったきっかけやご来館の目的など、今後、より多くの方に伊丹十三と記念館を知っていただくための分析材料とさせていただきたく、9月1日に開始いたしました。
ご入館時に少しお手数おかけいたしますが、ご協力いただけますようよろしくお願い申しあげます。
学芸員:中野
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