こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。
2018.03.12 伊丹映画の桜
「この冬一番の冷え込み」という天気予報の脅しから解放されてホっとしていると、テレビや新聞の話題はもう桜の開花予測。「まだちょっと寒いのに、気の早いこと!」と思うのですが、きっとあっという間なのでしょうね。
伊丹映画の桜といえば――
大病人(1993年)
「延命のためだけの入院生活は望まない、仕事をやり遂げて、家に帰って自分らしく死にたい」と願う癌患者(武平:三國連太郎)に、医師(緒方:津川雅彦)が退院を許可するシーン111と、主人公が息を引き取った後のシーン119では、見事に咲いた桜と花吹雪が画面を彩っています。
季節を表現するために雨・雪・枯葉、何でも降らせる伊丹映画ですが、ここで使われているのは作り物ではありません。クランクアップ日の1993年4月4日、桜の満開の時期に合わせて撮影されました。
本物の桜を画面の中に活かすべく凝らされた工夫もいろいろありまして、メイキングビデオ『大病人の大現場』(Blu-ray BOX-Ⅱ特典ディスク収録)で紹介されています。ぜひご覧くださいませ。
"見事な花吹雪"で思い出すシーンがもうひとつ。
こちらは初夏のお話なので桜は映りませんが――
お葬式(1984年)
義父の火葬が済むのを待つシーン91、主人公(侘助:山崎努)が木を見上げてつぶやきます。
侘 助「これは桜だな」
千鶴子「春はいいでしょうね」
侘 助「俺は春死ぬことにしよう。俺が焼ける間、外は花吹雪――いいぞ」
人間が死んだ後のドラマを描いた『お葬式』と、人間が死ぬまでのドラマを描いた『大病人』。何だか、作品を超えて主人公の思いが叶えられたのかな、と感じられますね。
さて、記念館周辺では、早春らしい景色がお楽しみいただけるようになってきました。
エントランス前のトサミズキ
記念館の前を流れる川附川。空の青と
菜の花の黄色が川面に映ってイイ感じ!
卒業・入学や異動など皆様何かとお忙しく、世間全体も慌ただしい3月ですが、ひと息つきにいらしてください。お待ちしております!
学芸員:中野
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