記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2017.06.19 商業デザイナー

エッセイ『ヨーロッパ退屈日記』(伊丹十三著)のあとがきに、伊丹さん21歳当時のこととして、こんなことが書かれています。

私は駆け出しの商業デザイナーであった。(中略)職人であった私に与えられる仕事は、主に、車内吊りのポスターと、目次のデザインであった。

――「B6判のためのあとがき」『ヨーロッパ退屈日記』


ご存じない方もいらっしゃるかもしれませんが、伊丹さんには「商業デザイナー」としての顔がありました。その仕事を、記念館の常設展示室で具体的にご覧いただけます。
たとえばこちら。雑誌『文藝春秋 漫画讀本』(1954年創刊/1970年休刊)の車内吊りポスターです。

2017.0619-1.JPGユニークなキャラクターが印象的な『漫画讀本』ポスター
伊丹さんが手がけた、さまざまなパターンを入れ替えながら展示しています


ご覧になったお客様から、「あのポスター、キャラクターが印象的で憶えています。伊丹さんのデザインだったんですね」とお声をかけていただいたことがあります。
他にも、伊丹さんが手がけた書籍の装幀や題字レタリングの仕事などを展示しており、商業デザイナーだったことをご存じない方からも、「伊丹さんらしいこだわりや遊び心を感じた」といったご感想をいただきます。

常設展示室には十三の名前にちなんだ13のコーナーがあり、商業デザイナーだけでなく、多彩な仕事ぶりや趣味についてご紹介しています。

2017.0619-2.jpg常設展示室の様子


つまり、伊丹さんには「13の顔」があるということで......まだ記念館にいらしたことのない方は、ぜひその13の顔をひとつひとつ想像なさってみてください。「映画監督」「俳優」「エッセイスト」――他にもいろんな顔があるんですよ。

伊丹さんの新たな一面に出会えることと存じますので、ぜひ一度記念館にいらしてみてくださいね。

スタッフ : 淺野