記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2013.06.24 伊丹さんの知られざる(でもピッタリな)受賞歴

前回(6月3日)のちょっとした続きで恐縮ですが...

収蔵庫ツアーでご覧いただく収蔵品のひとつに、こんなものがあります。

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何かと申しますと...

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「第1回ベスト・ファーザー イエローリボン賞」の賞状なのです。伊丹さんは、今や父の日の恒例行事となったあの賞の、第1回受賞者なんですよ。

受賞者の一覧を見ますと、これまでに実にさまざまなお父さんたちが受賞なさっていておもしろいのですが...オヤ、伊丹さんの職業が「俳優・エッセイスト」となっていますねぇ。映画監督になる2年前、1982年の受賞でした。

1982年というと、前年始まった『北の国から』(フジテレビ)で"吉野のおじさん"を、大河ドラマ『峠の群像』 (NHK)では吉良上野介を演じた年です。どちらも印象深い演技でしたから、お客さまからも「覚えてます」、「大好きでした」、「強烈でした」とのお声をよく頂戴します。
そんなふうに俳優として充実した仕事をしながら、二児の父としての悩みや発見を綴ったエッセイを発表したり、専門家と対談したり、そうこうする間に精神分析にハマって自らの責任編集で雑誌『モノンクル』(1981年)を刊行したりして、書き手・語り手としても世の人々の関心を集めていた頃でした。

たとえば、『女たちよ!男たちよ!子供たちよ!』(1979年)は伊丹十三の父親ぶりにふれていただける著書の代表作ですが、男としての行き詰まりや大人としての挫折感をさらけ出したうえで自分の考えを述べている(何ごとも実感抜きには語らないのが伊丹十三なのですが)のを読むと、「素敵なお父さん」というひとことで表現したのでは収まらないような厳しさ、硬派さが感じられて、ちょっと胸が痛むような気持ちになることもあります。こんな俳優、なかなかいないなぁ...

企画展「父と子 — 伊丹十三が語る父・伊丹万作の人と芸術 —」では、そんな伊丹十三が、俳優から映画監督になっていく過程でいかにして「父」になっていったか、「父」である伊丹万作への思いをどのように深めていったか、そういったところもご覧いただけます。

展示品を少しずつ入れ替えながら、12月上旬まで続けてまいりますので、一度と言わず二度三度、何度でもお越しください。

学芸員:中野