記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2012.10.29 「遠くへ行きたい」と伊丹十三のテレビ制作

すっかり秋です。旅行したくなるような、知らない町でも歩いてみたくなるような季節です。
知らない町を歩いてみたいと言えば、昨日28日の日曜日、伊丹十三記念館は日本テレビ系列の人気番組「遠くへ行きたい」で取り上げられました。
伊丹十三のことが大好きだという俳優の大浦 龍宇一さんとその息子さんがご来館され、館内を熱心にご覧くださいました。

さて、「遠くへ行きたい」と言えば、伊丹十三も1971年、30代後半の頃からレポーターとしてよく出演したテレビ番組です。映画監督になる10年以上前ですが、当時伊丹十三はテレビの可能性と面白さに目覚め、出演者であることにとどまらない、製作スタッフの一員と言えるような形で番組作りに携わっていったようです。
その様子を伺える本人の記述がいくつかあります。例えば、

「遠くへ行きたい」という旅番組をやっていたころ、スタッフを画面に出そうとしたことが何度もある。/物を作る人間のさまが全身に滲み出ているのであって、これを番組にとりこまぬ法はない。/「遠くへ行きたい」のスタッフたちが、カメラを向けられても平然として仕事を続けられるようになるまでは、一年以上もかかったろうか。
 そうして、スタッフの「出演」は、タレントやディレクターやスタッフの間に介在する、仕事場におけるカースト制を内部からぶち破って新しい人間関係を作り上げるのに大きな力を持ったし、それは、必ずや番組のメッセージとして見る人に伝わったと、私は信じているのである。

著書「女たちよ!男たちよ!子供たちよ!−(イチカメ)」一部抜粋

出演している芸能人の意見とは思えませんよね。この他にもテレビ制作に関して意見を述べている記述があります。

 テレビの仕事の特質は、みんなが横一線になって、同時に走るところにある。特にドキュメンタリーの仕事はそうである。レポーターもカメラマンも演出も録音も、各各、自分の責任と力量と判断において同時に走っている時、最も充実した仕事ができるように思われる。

著書「女たちよ!男たちよ!子供たちよ!−(スタッフ)」一部抜粋 

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【画像:著書「女たちよ!男たちよ!子供たちよ!」】

仕事全般に言えることで納得できる部分も大きいですね。どれほど真剣にテレビ番組の制作に取り組んでいたかがよくわかる文章です。

テレビ制作以外にもCM作成や様々なことにチャレンジした伊丹十三ですが、映画監督として成功した後のインタビューの中で、それまで自分が取り組んできた様々なことは、結果として全て映画監督になるための準備となった、ということを語っています。
映画監督になったのが、51歳ですから、割と大人になってからのチャレンジにも関わらず、第1作目の「お葬式」から大ヒットを飛ばしたのも、様々なことに興味を抱き、どの道でもプロとして真剣に取り組んできた結果だと思うと、納得ですね。

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【画像:カフェの「しょうが紅茶」。からだを温める効果のある生姜のメニューが人気です】

スタッフ:川又