記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2011.08.22 道具あれこれ

みなさま、暑い日がつづいておりますがお変わりなくお過ごしでしょうか。


 みなさんは日々の生活の中で大切に使っているものやこだわりの道具などおありですか。私も工芸品などを眺めるのが好きでささやかですが日々大切に使っている道具がいくつかあります。

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  それらの中に化粧筆があります。この筆、生まれは広島県の熊野町です。この辺りは古くから習字の筆を多く生産しているそうで今は習字をたしなむ人が少なくなったため筆作りの技術を生かして化粧筆を作っています。古くからの技術を駆使して作られた化粧筆は今や世界のメーキャップアーティストにも愛用されているそうです。材質はリスやイタチ、ヤギなどの毛です。先日、この日本一の熊野の化粧筆が なでしこジャパンの国民栄誉賞の副賞として贈られましたね!


  化粧筆の出番について男の方にも少しわかりやすくお話してみますと・・・。お化粧は大まかに言うとまず、下地を塗って(土台ですね)、顔色を整えるファンデーションを塗ります。次に"粉おしろい"をぱたぱた。このままですと粉ふきいも(?)のようですのでここで大きい筆が登場。余分な粉を払います。次に色を塗ってゆきます。私は幼少期より絵を描いたり色を塗るのが好きでしたがお化粧も言ってみれば絵を描くのと同じだなと感じます。平たい顔を少し立体的に見えるよう(!)少し白い色(ハイライトって言うようです)を塗ったり目元をはっきりしたい時、まぶたに色を置いたり・・・。暖かい色、涼やかな色、季節やお天気によって使う色も少しずつ変わります。こんな時、化粧筆が役に立ちます。

 
DSC01233.JPG  熊野の筆は粉含みがよく、顔に粉類がきれいにつきます。考え抜かれ丁寧に作られた道具は 上手な人はますます上手に、まだあまり上手でない人には 道具が 使い勝手や心地よさでやさしく導いてくれる力を持っているように感じます。ここ伊丹十三記念館には伊丹さんが愛用した生活の品々が収蔵品や展示の中に、あちこちに見受けられ、これらの道具を使ってお料理をしたり原稿を書いていた伊丹さんに実際に会いたいな、話を聞いてみたいなと思うことが度々あります。みなさん 夏休みも残り少なくなりましたが伊丹さんの生活の息吹を感じに是非記念館へ足をお運び下さい! 

写真上はいつも使っている化粧筆のうち目元用(小)とほお紅用。下は展示室内「七」料理通 のコーナーにある伊丹さん愛用の台所道具や食器です。

スタッフ:多胡