記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2010.09.06 手紙

五味康祐先生をご存知ですか?
時代小説の名手としての活躍で有名ですが、氏の小説を読んだことがなくても、『柳生武芸帳』、『薄桜記』、『二人の武蔵』などの映画化された作品のタイトルを聞けばピンとくる方、多いのではないでしょうか。
クラッシック音楽とオーディオ機器にも造詣が深く音楽評論の著書もあり、そのほかにも観相、野球評論、マージャン指南...と多方面でご活躍なさった方です。
残念ながら私は記憶していませんが、テレビ出演もなさっていたそうですね。長いお髪にお髭、着流し姿の先生の写真を拝見しますと、「こんなおもしろそうなオジさん(失礼!)が近所に住んでいたら、ぜったい楽しいのになぁ。"モノンクル"のひとりになっていただきたいなぁ」と思ってしまいます。

そんな五味先生と伊丹さんにはお付き合いがあったらしく、五味先生に宛てた伊丹さんの手紙が今も残されています。...といいましても、在り処は当館ではなく、東京の財団法人練馬区文化振興協会
五味先生のご遺族が亡くなられて、練馬区文化振興協会で受け入れた遺品はなんと16,000点。文学資料だけでなく、音楽資料、美術品に衣類・日用品など、多岐にわたる資料を分類整理なさったところ、伊丹さんからのハガキも見付かったのだそうです。
音楽に関する随筆集を贈られた際のお礼状だそうですが、ハガキですから、お礼の言葉も感想も、自らバイオリンを演奏する音楽愛好家としての実感も、ごく短い文章のうちにしたためられているのです。担当学芸員・山城さんによりますと、「音楽を通じての、作家同士の交流をしめすもの。単なる礼状ではなく、エッセイの入り口のような、詩のような、ひとつの作品だと思います」とのこと。
このハガキが、現在、練馬区立石神井公園ふるさと文化館に展示されています。

「五味康祐の世界 作家の遺品が語るもの」展
 主催:練馬区、(財)練馬区文化振興協会
 期間:2010年9月5日(日)?10月11日(月・祝)※月曜休館(祝日の場合は翌日休館)
 時間:9時?18時
 料金:一般300円、高校・大学生200円、65?74 才の方150 円、
     75 才以上と小中学生以下無料、その他各種割引あり。
 会場:練馬区立石神井公園ふるさと文化館 2階企画展示室
 →くわしくはこちらをご覧ください。

展示点数は、生原稿、書簡、手記、美術品、映画ポスターにオーディオ機器や音楽資料などなど、約400点。五味先生の足跡をたどる展覧会です。

東京近郊にお住いのみなさん、また、東京へいらっしゃるご予定のみなさん、五味先生の世界にふれるとともに、伊丹さんの小さな「作品」もご覧ください。ぜひ。

それにしても、手紙って、貰うととっても嬉しいのに、出す側になるとほんとうに難しいものですよね。
目上の方へ書けば如何ともしがたい乱筆乱文に深く恥じ入り、親しい友人に宛ててさえ便箋に書けばとりとめもなく長ったらしくなってしまい、葉書に書けば言葉足らず、適量かつ的確かつおもしろくかつ気の利いた感じにまとめられないものかしら...手紙を書くたびにため息つきつき「思いが伝わればヨシとしよう」と開き直ってポストにねじ込んでいます。

昨夜などは、手紙を受け取った友人から電話がかかってきたのですが、話がなんだかかみ合わず...長々と書いた割には、どうも書くべき用件を書き忘れたまま送ってしまっていたようです。
学芸員:中野

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