記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2010.06.21 記憶を呼び起こすもの

こんにちは。
いつもよりちょっと遅めではあるそうですが松山も梅雨入りし、だいぶん曇り空や雨降りの日が増えてきました。でもこの雨も、記念館の庭の桂の木(←涼しい場所を好むそうです。)にとってはまさに恵みの雨なんです。
 わたしは、今頃の夕方、戸外に漂っている植物のにおいがとても好きです。咲いているバラや新緑のにおいなんでしょうかね、あおいというか懐かしいというかこのにおいをかぐと「あ?、今年も夏がくるんだなぁ」と思います。みかんの花のにおいも好きです。咲いているのは5月半ば?6月はじめ頃です。さわやかな中に優しい感じのするにおいです。みかんに花が咲いているのは一年のうちのほんのいっときなので、みかんの花が咲いているのを見ると近寄っていってす?っと深呼吸してみます。
 みなさんの思い出を呼び起こすものってなんですか?わたしは、においや音楽からいろんなことを思い出すことが時々あります。夕方、帰宅途中に自転車で走っていてよそのお宅から漂う「晩ご飯のにおい」から祖父母の家での夕飯を思い出したり、なにげなくラジオから流れてきた曲を聴いていて、ふと その曲を聴いていた頃のことを思い出したりします。そんな体験から、「においや音楽」と「記憶」はとても密接につながっていることをひしひしと感じます。

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 伊丹さんはさまざまな顔を持っていましたが、その中に「音楽愛好家」としての一面がありました。伊丹さんは、早くに亡くなったお父さんの形見として蓄音機と大量のレコードを持っていて、京都から松山へ転校してきた高校生時分、下宿の一室でバッハやモーツァルトのレコードをかけて過ごしました。この部屋には古今東西の文学や音楽に惹かれる友人たちが集い、音楽を聴いたりおしゃべりをしたりしていました。このメンバーの中には大江健三郎さんもおられたそうです。働き始めてからは聴くだけではもの足らなくなったのでしょうか、ヴァイオリンを「習った」そうです。ギターも弾きこなし「楽器の演奏は欠かすことのできない人生の習慣」と語っていたそうです。そんな伊丹さん、大人になってからもお父さんの形見のレコードを時々なつかしく聴いたりして過ごしたのでしょうかね。
                                                                                                              スタッフ:多胡

写真は、記念館の近くを流れる小野川沿いのアジサイです。アジサイもほんのりよい香りがするんですね。