記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2009.12.07 夜泣き

女たちよ!男たちよ!子供たちよ!.JPG みなさんこんにちは!お元気ですか?木山です。以前、『鯛めし』の事を記念館だよりに紹介したら、何人かのお客様に「あのお店はどこですか?」と聞かれ、ある方はプリントアウトまでして持ってきてくださって、ひとり言のように書いていたけど、読んでくれている人がいるんだぁ?と感動しました。今、読んでくださっているあなた、本当にありがとうございます。

早いもので、産休を終え、仕事復帰して5ヶ月が過ぎ、娘も1歳5ヶ月になろうとしています。赤ちゃんの頃は、あまり夜泣きもせず、なんて親孝行な子だ、なんておもっていたのですが、いつの頃からか夜泣きがはじまり、それがなかなか治まらず、母子共に寝不足の日々が続きました。

「何か原因があるのかな?」「どうやったらなおるのかな?」と考えながらも、「まぁ、いつかは落ち着くだろう」と思っていたところ、ふと、伊丹さんがエッセイの中で子育てについて書いてたなと思い出し読み返してみました。 『女たちよ!男たちよ!子供たちよ!』(1979年 文藝春秋社)は育児について色々かかれており、とても読みやすく、私の好きな1冊でもあります。子供ができてから読むとますます興味深かったり、なるほどと思ったり、それでいて思わずふきだしてしまうようなおもしろい内容になっています。 ちょうど、「夜泣き」という題名のエッセイがあり、次男の万平さんの夜泣きに伊丹さんが悩まされていた事が書かれていますが、これがまさに娘と同じなのです。

まだ話すことのできない娘は、「泣く」という行為で何かを訴えてきているのですが、夜中に起こされた私はモウロウとしながら、オムツを替えたり、ミルクをあげたり、抱っこしてみたり、しかし「違うよ?」と言わんばかりに、更に大きく泣き、ジタバタします。うちの娘は座ったままの抱っこでは納得せず、ちゃんと立ってゆ?らゆ?らと揺らしてやらないと泣きわめきます。気に入らないと近くにある物を放り投げて、怒りをアピールします。  そんな時、伊丹さんの「夜泣き」を読み返し、ハッとしました。

私は、突然、何かが判ったように思った。(中略)「つまり、コミュニケイションの不足だったのだ。(中略)マンペンの、さまざまな内容を持ったであろう訴えが「夜泣き」という一つの言葉によって引っくくられた瞬間、さまざまな訴えとして見えなくなり、訴えが見えぬ以上、泣き叫ぶマンペンは、ただ「夜泣きするマンペン」にしか過ぎず、この「夜泣きするマンペン」が親の否定的な態度ーマンペンを疎んじ、マンペンから逃げ、マンペンに対して心を閉ざしてしまうような心のあり方を引き出し、この心のあり方が更にマンペンの不安を増幅し従ってマンペンはますます泣き叫び、泣き叫ぶがゆえに親には更にそれが訴えとして見えにくくなる、という悪循環に陥っていたのではないかー

『女たちよ!男たちよ!子供たちよ!』より

その後伊丹さんは夫婦で話し合い、毎日長男の万作さんを寝かせてから一時間、万平さんとお話をすると決め、それを日課にしたそうです。すると、驚くことにその日から万平さんの夜泣きはとまったそうです。 

思えば、仕事復帰して、真剣に娘と向き合っていなかったなと。かまってあげる時間が減った分、一緒にいる時間は精一杯内容の濃い時間にしなくてはと、休みの日はいろんなところに行って、一緒にいろんなことを感じたり、保育園の帰り道は「今日は何してあそんだの?」「今日は何が食べたい?」などと一方通行ですが、たくさん話しかけたり、歌を歌ったりコミュガイドブック.JPGニケーションを増やしています。そんな日が続き、毎晩3,4回起きていたのが、今は1,2回に減り徐々になおってきているのかなといった感じです。 これからも伊丹流子育てを参考に、コミュニケーションを増やしながら、自分らしく子育てに励み子供と一緒に成長していけたらなと思っています。

 『女たちよ!男たちよ!子供たちよ!』は現在は絶版になっていますが、当館オリジナルの「伊丹十三記念館ガイドブック」の中で、内容の一部を紹介しています。

 

スタッフ:木山