記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2009.03.10 野越え山越え海越えて

ビンカミノール.JPGこのところ、雨ばかりの松山。スカっと晴れる日がなかなかありません。が、雨が降るたび記念館の庭では緑が増え、花が咲き、春は着実にやってきています。そんな庭を眺めていますと、風邪でもないのにツと鼻水が...イヤな予感...今のところ「気のせい」ということにしています...。


さて、ニュースでも報じられているように、この春から、ETC車限定で土日祝日の高速道路の料金が値下がりするそうですね。
本州四国間の連絡橋は通行料金がとってもお高いので、今回の料金の値下げがきっかけとなって「ほな四国に行ってみようかいな」という方が増えたとしたら、これは大変に喜ばしいことであります。「せっかくだから伊丹十三記念館にも行ってみようかいな」という方が増えたなら、これはもう本当にありがたいことであります。本四を結ぶ橋は3ルートありまして、いずれの橋からの眺めも(運転手はよそ見厳禁ですけれども)それぞれに素晴らしく、道中のスペクタクルとして旅の思い出になること必至です。

しかし、気がかりなことがひとつ。

「どこまでも安く行ける!」というお得感から、「遠くまで行かなきゃ損!」と、体力以上の遠出をしてしまう方がいらっしゃるのではないかしら、ということです。食べ放題のお店に行くと胃袋のキャパシティを度外視して食べてしまう、という(私のような)タイプの方は要注意です。

スパゲッティの茹で方、食べ方、サンドウィッチの持ち方、包丁の持ち方、ミカンの剥き方...などなど種々の「正しい」やり方をエッセイで説いた伊丹さんは、車の運転についてこんな風に書いています。

 「いまさら申し上げることもあるまいが、自動車というものは危険物であります。これを扱うに当って、男たるもの、どんなに自分自身に厳しくあろうとも、厳しすぎるということはない。」

 「われわれは、巧みに運転する前に、品格と節度のある運転を志そうではないか。」

(「スポーツ・カーの正しい運転法」『女たちよ!』より)

自分に厳しく、品格と節度をもって、というのも、疲れていたのじゃできることではありません。疲労のせいで注意力が低下してしまってウッカリ...なんて、楽しかるべきお休みの日にあってはならないことです。適度な休憩を取りつつお越しください。

そういう意味では、フェリーなどの船旅もなかなかによいものです。車も我が身も船長さんの操舵にお任せして、春の瀬戸内海をうち眺めながら、ゆっくりと心身を休める、しかも、自分が休んでいる間に目的地に近づくことができる。航路によっては橋の下を通りますから、普段は見られない橋のお腹を見ることだってできます。何ともお得ではありませんか。ただし、た伊丹エッセイ.JPGまの船旅で気分が昂揚してしまい、船内をウロついてくたびれてしまう、という(私のような)タイプの方は要注意です。

旅の計画を立てる際にはくれぐれも慎重に、本当に旅を楽しめる、ご自分に合ったルートと移動手段のご検討を。船、車、電車、バス、飛行機...いずれの手段でも、野越え山越え海越えて、ご無事にお越しくださいましたらスタッフ一同大歓迎いたします。

 

写真上:記念館の春のお花、ビンカミノール(ヒメツルニチニチソウ)/写真下:車や運転に関する伊丹さんのエッセイが収録されている『ヨーロッパ退屈日記』、『女たちよ!』(新潮文庫)

 

学芸員:中野