記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2021.06.28 伊丹さんのユーモラスなイラスト

記念館ショップのオリジナル商品には、イラストレーターの「顔」も持っていた伊丹さんのイラストを使った商品がたくさんあります。

伊丹さんならではの遊び心のあるユーモラスなイラストも多く、中には買い物をされているお客様から「何を描いたものですか?」と尋ねられることがあります。
そんなイラストについて、少しご紹介しますね。

まずはこの、Tシャツにプリントされたイラスト。

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男性がこめかみから何かを引っ張り出しています。
このイラストをみて「これは何をしているところ?」とお連れ様と話をしたり、スタッフに尋ねたりするお客様が少なからずいらっしゃいます。

このイラストは「二日酔いの虫」という伊丹さんのエッセイの挿絵ですが、何を描いているかというと――

「あのね、二日酔いのひどい時にさ、顳顬(こめかみ)んところに小さな腫れ物ができるんだよね。これが実に痒いんだな。痒いから掻き毟る。掻き毟るうちにだね、腫れ物が潰れるだろう。その潰れたところをよく見ると、なにか芯みたいなものがのぞいているじゃないか。ハハーンこいつだなと思ったから 、私はその芯をピンセットでつまんで、そおっと引っぱりましたね。すると出てくるんだよ、それが。ずるずると出てくるんだよ。紐みたいに、というか、干瓢みたいにというか、ともかく引っ張ればいくらでもずるずる出てくる」

「二日酔いの虫」『女たちよ!』(新潮社)より

――ということなのですが、さすがにイラストだけで想像するのは難しいですね!

また、同じく『女たちよ!』の別のエッセイにはこんなイラストも。

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写真はゴム印です。イラストを見て「ねずみですか?」と尋ねられることが多いのですが、実は「魚」を描いたものなんですよ。もう少し詳しく言うと、「大きな魚が白いエプロンをして理髪店の椅子にかけている」イラストなんです。

伊丹さんがどのような経緯でこのイラストを描いたのかについては、ぜひ『女たちよ!』に掲載されているエッセイ「鬚を剃った魚の話」を読んでみてください。

伊丹さんは今回ご紹介したような遊び心のあるもの、実物そっくりの緻密なものなど、本当に様々なイラストを描いています。そんなイラストを身近に感じていただける記念館のオリジナルグッズを、ご来館の際はぜひご覧くださいませ!オンラインショップものぞいてみてくださいね。

スタッフ:山岡

2021.06.21 『ポテト・ブック』の「ベイグド・ポテト」を作ってみました


ジャガイモの時期ですね。
本日は、ジャガイモの産地・北海道でジャガイモを作っている方々が「一番美味しい」と思うジャガイモの食べ方をご紹介します。
伊丹さんが翻訳を手掛けた、ジャガイモについての全てが載っている本、その名も『ポテト・ブック』の中で、伊丹さんがそのように紹介していた食べ方です。


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その食べ方とは・・・

『まず、ポテトを二つに切り、両方の切り口の中央をスプーンで丸く抉ります。できた窪みにバターを詰め、もう一度切り口をぴったり合せ、クッキング・フォイルでしっかり包んでから、ストーヴに乗せて焼くんだそうです。一種のベイクド・ポテトですが、地元の人たちにいわせるなら「これが世界で一番うまい食べ方」ということになります。』 

―『ポテト・ブック』(河出書房新社)より




まず、ポテトを二つに切り、中央を抉り、

0621-2.JPGできた窪みにバターを詰めて、

0621-3.JPG切り口をぴったり合わせて、

0621-4.JPGクッキング・フォイルでしっかり包んでから、

0621-5.JPGストーヴに乗せ...たいところですが季節柄無理なので代わりに鍋に乗せて、

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蓋をして焼くこと30分くらいでしょうか。
ホクホク感がちょっと伝わりづらいかもしれませんが、結構いい感じに焼き上がりました!バターは溶けてジャガイモに染みこんでいます。

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実に簡単で、素材がいきる食べ方だと思います。

『ポテト・ブック』にはこのような簡単な調理法から、玄人向けのレシピまで、とにかくジャガイモに関する様々な情報が載っています。1976年に出版されその後長らく絶版状態であったものの2014年に河出書房新社から復刊しました。記念館グッズショップでも取り扱っています。ジャガイモ好きの方にはぜひ一度読んでいただきたい本です。

ベイグド・ポテトも機会があれば作ってみてください。



スタッフ:川又

2021.06.14 定番の定番たるゆえん

子供の頃「ジュースを好む=子供(っぽい)」とみなされることを不満に感じたり、「大人はジュースを飲みたいと思わないものだ」と言われると「なんで?」と思ったりしたものですが、自分が大人になってフと気付くと、果汁・スポーツドリンク以外の清涼飲料水をほとんど摂らなくなっていました。

それでも時々無性に飲みたくなる、なくなったら困るなあ、と思う清涼飲料水はあって、その上位を挙げるなら、カルピスとコーラ、でしょうか。


とくに、ちょうど今頃の向暑の季節、真夏とはちょっと違う、独特な食欲不振や疲労にまいってしまうときがありますよね。そういうとき、自分の身体がカルピスやコーラを「飲みたーーい!!」と求めているのを感じます。ええ、なくなったら困るのです。

20210613_calpis.jpg今日の休憩のお供。
カルピスは限定フレーバーも楽しいですよね。
(「わりと試す派」です。)

伊丹十三は「コカコーラとカルピス」というそのものズバリな題名のエッセイをしたためて、この二つの飲み物をこんなふうに称えています。

 軽い飲み物についていうなら、私は日本のカルピス、そしてコカコーラ、この二つが断然群を抜いて偉いと思う。どこが偉いかというに、双方ともそれ以前にまったく存在しなかった新しい味を開発した。その点が実に偉いと思う。考えてもみたまえ。今カルピスというものがまったく存在しないとしてだよ、あなた、ああいう不可思議なるものを独創できるかね。なかなか思いつけるもんじゃありませんよ。コカコーラもこれに同じ。戦後初めてコカコーラを飲んだ時には色といい味といい、壜の色や形といい実に奇怪な陰気臭い飲み物だと思ったのを覚えている。
 私は新しい種類のソフト・ドリンクが出ると好奇心からつい飲んでみるのだが、やはりどうもこれという新作にはお目にかかれないようです。新しい飲み物は、何かこうデザインされた味、という感じがする。非常によく考えられ設計されてはいるのだが味のデザインにどこか無理があって、口の中でその設計を感じさせてしまうという気がする。天衣無縫という趣がない。
 その点カルピスとコカコーラの味はいかにも天然自然の感じにまでよくまとまっているのであって、たとえばもともと自然なものであるに決っている牛乳やオレンジ・ジュースと比べても、少しも不自然でない。(中略)
 カルピスもコカコーラも「いかにもありそうな」無理のない味のするところがいいのだと思う。

コカコーラとカルピス(『女たちよ!』文藝春秋・1968年)より

20210613_onnatachiyo.jpg上記エッセイ所収の新潮文庫版『女たちよ!』(税込605円)は

館内ショップ・オンラインショップで販売しております!

(岩波書店『伊丹十三選集』の第2巻にも収録されています)

コーラもカルピスも発売以来100年以上の歴史があり、今の私たちにとってはあって当たり前の存在。深く考えることもなく享受してきたのですが「個性的でありながら自然な味わいが素晴らしい」と言われると、「ウーム、確かに」と頷かずにはいられません。

「え、伊丹さんもコーラやカルピス飲むんだ、意外!」と思わせておいて、定番の定番たるゆえんを見抜いている、伊丹十三らしい一文――でも、書かれたのは今から50年以上前なんですよね。

伊丹十三が絶賛してから半世紀、個性的かつ天衣無縫な味のまま、定番であり続けているコーラとカルピス。その実力にひれ伏しながら、これからもおいしくいただこうと思います。

学芸員:中野

2021.06.07 カフェタンポポよりおすすめメニュー

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。

気温が高くなってきて、半袖の服を着た方を見かけることが多くなってきました。
ここ記念館の庭木の緑も、3月や4月頃と比べると緑が深まってきたように感じます。

本日は、そんな夏のはじまりを迎えている記念館から、カフェタンポポのおすすめメニューをご案内しますね。

まずは定番中の定番、「アイスコーヒー」。
冬場はお休みしていましたが、気温の高まりとともに今年もスタートしました。
「暑い時にはよく冷えたコーヒーを楽しみたい!」という方を中心に、この季節はたくさんの方にオーダーしていただきます。
お客様の中には、グラスの中でくるくるとストローを回して「この氷の音がいいよね!」と仰る方も。確かに、グラスの中で氷が動くとカランコロンと音がして、それだけでも涼しげに感じますよね。

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アイスコーヒー

 

また、炭酸のさっぱり感を楽しみたい方にぴったりなのが「ジンジャーペリエ」「ゆずジンジャーペリエ」などのペリエ(炭酸水)を使ったメニューです。


「ジンジャーペリエ」はオリジナルの生姜シロップをペリエで割り、甘く煮こんだ生姜のみじん切りと合わせています。上に乗せたミントの葉っぱがアクセントとなって、見た目にもさわやか。すっきりとした後味で、世代を問わずご好評いただいています。
これにゆずジャムを加えた「ゆずジンジャーペリエ」も人気です!

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ゆずジンジャーペリエ

加えておすすめなのが「タンポポコーヒー」。
見た目はコーヒーそっくりの、タンポポの根っこを焙煎して作られた飲み物です。
このタンポポコーヒーには体を温める効果がありますので、冬場はもちろん、冷房などで体が冷えやすいこれからの季節にも実はおすすめなんです。ノンカフェインで、妊婦さんや、カフェインが苦手という方にもお飲みいただけます。
カフェタンポポのタンポポコーヒーはホットでお出しますので、夏だけど温かい飲み物が飲みたいという方もいかがでしょうか。

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タンポポコーヒー

じっくり展示をご覧になったあとは、ぜひカフェタンポポでゆっくりなさってくださいね。

スタッフ:山岡