記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2020.07.27 Tシャツ

7月も終わりに近づき、松山では日を追って暑さが本格的になっています。皆さまがお住まいの地域はいかがでしょうか。

暑さ厳しい夏の必須アイテムといえば、Tシャツ。毎年夏に新調なさる方も多いことと存じます。
記念館のグッズショップでは、オリジナルTシャツを販売しております。

20200727_1.JPGグッズショップ Tシャツコーナー


伊丹さんが描いたイラストをプリントしており、デザイン・カラーなど宮本館長がこだわって作った商品です。男女問わず幅広い年齢のお客さまからご好評いただいているんですよ。たとえば、こちら――

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伊丹エッセイの中でもよく知られる「二日酔の虫」(『女たちよ!』収録)の挿絵をプリントしています。「二日酔の虫」は、文章とともに挿絵が印象に残っているというお客様も多く、「このイラストのTシャツがあってうれしいです」とお声をかけていただいたこともあります。

今年2月に販売を開始した、こんなデザインのTシャツもあります。

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エッセイ「ネコノ眼ハナゼ光ルノ?」(『問いつめられたパパとママの本』収録)の挿絵をプリントしたものです。3匹の猫の表情が、とてもいいですよね。生地のカラーがネイビー(濃紺)で、白や黒と同じように着まわしやすいのもポイントです。

オリジナルTシャツに使用しているイラストは、他に「スパゲッティの正しい食べ方」(『ヨーロッパ退屈日記』収録)があります。イラストごとにカラー展開が異なりますので、店頭でお手に取ってみてくださいね。

今年も猛暑になりそうです。皆さま、くれぐれもご自愛くださいませ。

スタッフ:淺野

2020.07.20 "十三"日は映画の日です!

梅雨明けを待たず蝉の声が聞かれる松山です。
みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

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伊丹十三の脚本監督作品を常設展示室でご覧いただける「毎月十三日の十三時は記念館で伊丹十三の映画を観よう!」、今年も開催しております。

先日7月13日(月)には『マルサの女』(1987年)をお目にかけました。

開催日には、あらすじ・スタッフ・キャスト・公開データなどをまとめたミニ解説(A4二ツ折り)をお作りして、ご来館くださったお客様にお配りしているのですが――

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展示室に関連資料が出ているときは、こんなご紹介も載せています。

20200720_marusa_commentary.jpg『マルサの女』ミニ解説(20年7月13日配布分)

『マルサの女』の撮影台本に関する部分を書き出してみましょう。

撮影から完成まで伊丹十三が使用した台本を常設展「十三 映画監督」に展示中。カット割りに関する書き込みが多数見られる、パチンコ屋訪問の場面のページをご覧いただけます。このシーンでは、順光と逆光を利用して税務調査官と脱税者の攻防が巧みに表現されていますが、「優位に立っている者を逆光で/劣勢なほうを順光で捉える」という方法は、撮影当日の朝、寝床の中で考え付いた妙案だったのだそうです。

「優位に立っている者が逆光」ということに、一瞬「ん?」と感じられると思うのですが、この場面を本編で見てみますと、光を背負って(光源のある側に立って)いる姿や、顔が暗く表情が読み取れないことが、たしかに「優位」の表現になっているのです。

次に、実際の展示資料、すなわち「伊丹十三が現場で使用した台本の実物」をご覧いただきますと、

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カメラ・俳優の配置図などとともに「逆光」「順光」という書き込みが見られます。
キャラクターの力関係とその展開を視覚的にあらわすためのものだったと分かって見ると「なるほどなぁ~」となりますね。

せっかく記念館で伊丹映画をご鑑賞いただくからには、展示と併せてご覧いただくことで楽しみがいっそう深まるようでなければ、と心掛けております。映画本編の前、後にも、展示室で関連資料をご覧いただくお時間を確保して、ぜひゆっくりとお越しください。

「毎月十三日の十三時は記念館で伊丹十三の映画を観よう!」は5月と8月以外の毎月13日、13日が火曜日にあたる場合は翌14日水曜日に開催しています。

次回は、マルサも敵もグレードアップのシリーズ第2弾、板倉亮子と仲間たちが巨大脱税組織に挑む『マルサの女2』(1988年)。

8月は開催がございませんので、9月13日(日)、ミニ解説を作ってお待ちしております。さて、どんな情報を盛り込みましょうか!

学芸員:中野

2020.07.13 ブルーベリーのメニュー

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。

6月20日に営業を再開させていただいたカフェタンポポで、この度、「豆乳ブルーベリー」を開始いたしました。

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ブルーベリーのさわやかな酸味・甘味と、豆乳のまろやかさが相性よくミックスされたドリンクです。上にはミントの葉っぱをのせてお出ししています。
毎年この時期から期間を限定してご提供しており、世代を問わず多くの方にご好評いただいている人気のメニューです。

そして今回は、ブルーベリーつながりでもう一つ。
季節のケーキが「イチゴのタルト」から「ブルーベリーのタルト」にバトンタッチいたしました!

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ブルーベリーの藍色が見た目にもさわやかなタルトです。
季節のケーキは召し上がっていただく時期によって種類が変わりますので、ブルーベリーがお好きな方はこのタイミングにいかがでしょうか。

上記でご紹介した以外に、オリジナルしょうがシロップを使った「ジンジャーペリエ」や「ゆずジンジャーペリエ」も、さっぱりとした後味で暑い季節には特におすすめですよ。

展示をじっくりご覧いただいた後のひと休みにどうぞ。

スタッフ:山岡

2020.07.06 伊丹家の育児の基本方針とは?

先日、ネットニュースで「幼少期に親に嘘をつかれて育った子供は、大人になると社会的適応が困難になる可能性」という記事を見かけました。
親が子供に言うことを聞かせるために嘘をついていると、成人後も悪影響を受け続ける可能性があるという研究結果について書かれた記事です。


子供に言うことを聞かせるために、小さな嘘をつくというのは割とよくある話だと思うのですが、この研究によりますとそれは子供にとって将来的には大変よろしくないことのようです。親の嘘をつく不正直な行動が、子供の信頼を損なうことになるということです。


私はこの記事を読んで真っ先に、「問いつめられたパパとママの本」のあとがきを思い出しました。このあとがきには、伊丹家では子供に「絶対に嘘をつかぬ」という方針をもって育児をしていたということが書かれていたからです。きっと「問いつめられたパパとママの本」を読んだことがある方の中には、同じことを思い出された方も多いのではないではないかと思います。


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「問いつめられたパパとママの本」はオンラインショップでも取り扱いをしております。

こちらをクリック→  問いつめられたパパとママの本

あとがきを一部ご紹介いたします。



「たとえば、私のところへ子供連れで遊びにくる親たちというのが、見ていると相当子供に嘘をつくんです。実に、つかなくてもいいような、下らない嘘を連発する。
たとえば子供が電話機で遊ぶ。初めは親は面白がって眺めております。けれども、やがて子供が受話器を外したりダイヤルを弄ったりし始めると、やはり、子供から電話を取り上げざるをえなくなるでしょう、こういう時に嘘が出るわけなんです。できるだけ摩擦を避けたいという、日本人特有の心情なのか、自分が憎まれ役をやりたくないという気の弱さなのか、
「ホーラ、電話はもうおしまいね、ツトムクン、ホーラ、電話もう壊れちゃった。ハイ電話もう聞こえなくなっちゃったから、あっちへポイしちゃいましょう」
こういう嘘を、何の疑いもなくつるつるといっちゃう。なんで本当のことをいわないのか。親が真剣になって説明すれば、子供は、理屈は判らぬまでも、親の真剣さに何事かを感じるだろうじゃないですか、それが親子というもんじゃないですか。コミュニケイションを信じよう。いや、コミュニケイションを信じざるをえないという、人間のありようそのものを素直に認識し、これをもってわが家の基本方針としよう。」

『問いつめられたパパとママの本』(中央公論新社)あとがき

 

この「親が真剣になって説明すれば、子供は、理屈は判らぬまでも、親の真剣さに何事かを感じるだろうじゃないですか」という部分がなんだかすごく説得力がありませんか? この真剣になって説明する労力と時間を省くために、親は子供に嘘をついてしまうんですよね。


また
「そもそも、絶対に嘘をつかぬ、と親が自ら思い定めることによって、子供に対する態度が真摯ならざるをえぬところに追いこまれるという、この副次的効果がまた馬鹿にできない。」

『問いつめられたパパとママの本』(中央公論新社)あとがき

 

とも言っています。


目先の自分の利益にとらわれて子供に嘘をつくことのデメリットと、子供に真摯な態度で向き合うことの重要さを、伊丹さんは40年以上も前にわかっていたのですね。
このあとがきは皆様にできれば全文読んで頂きたいと思います。お時間がおありの際に、是非どうぞ。


スタッフ:川又