記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2019.06.24 ポストカードの使い方

旅行先などで手軽に買いやすい「ポストカード」。
皆さまは、そのポストカードをどんなふうに使われますでしょうか。

私が思いつくのは(旅先から)知り合いに送る、フレームに入れたり壁やコルクボードなどに貼ったりして部屋に飾る、などですが、先日「旅先でポストカードを必ず買う」というお客様がおられて、お話をしている中でポストカードの使い方をいろいろと教えてくださいました。
その中で、私が特に「試してみたいなぁ」と思った使い方を2つ、ご紹介させていただきますね。

ひとつは、旅行の時などに購入したポストカードの宛名面(文字を書くスペースのあるところ)にそのときの様子や感想などを書き込むこと。それをアルバムに貼ったりファイルにまとめたりするとちょっとした旅行記のようになるのだとか。写真や行った施設のチケットなども加えると旅行の様子がより分かりやすく、自分はもちろん、他の方が見ても楽しめるのだそうです。

もうひとつは、知り合いにお土産を渡す時、現地で購入したポストカードに旅行の感想などを一言書いて一緒に渡すこと。メッセージカードの代わりに添えたポストカードが、旅行の雰囲気をより伝えてくれるということで、喜んでくれる方が多いそうですよ。

ここ記念館のショップでもポストカードを販売しています。
伊丹監督映画作品のポスター、伊丹さんの写真や描いたイラスト、記念館の外観や中庭の写真がプリントされている、「伊丹十三記念館」ならではのポストカードばかりです。

20190624-1.jpgポストカード売り場

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おトクなセット販売も行っています

ご興味のある方は、記念館のポストカードでぜひ試してみてくださいね。

スタッフ:山岡

2019.06.17 名前

記念館にご入館なさるお客様に、受付で常設展の展示品解説リストをお渡ししております。
そのリストのはじめに、「池内岳彦(本名・池内義弘、後の伊丹十三)~」という一文があります。受付で、まずそれをご覧になったお客様から、「本名のほかに、岳彦という名前があったのですか......?」とご質問いただくことがあります。

そうなんです。伊丹さんの戸籍上の本名は池内義弘なのですが、通称は岳彦(タケヒコ)だったのです。

どういうことか、少しご説明させていただきます。
伊丹十三は、映画監督・脚本家の伊丹万作(本名・池内義豊)の長男として、1933年5月15日に生まれました。
池内家には、男子の名前に「義」の一字を入れるという代々の習わしがありました。
万作はその習わしを受け継ぐつもりはなく、息子を「岳彦」と命名しようとしていましたが、祖父の意向があり、戸籍上は「義弘」と名付けられました。
けれども、日常的には「岳彦」と呼ばれていた、ということなのです。

というわけで、記念館の常設展示室にある13のコーナーは、「一 池内岳彦」からはじまっています。

20190617_01.JPG常設展示室「一 池内岳彦」のコーナー


ところで、万作が書いた、こんな文章があります。

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「子供ノ誕生日ニ」   伊丹万作

岳彦 オメデトウ         
今日ハオマエノ誕生日ダネ
十年前ノ今日           
オマエガウマレタトキ
父ハ物置ニハイツテ       
郵便受ケヲツクツテイタ
ソノトキ父ハ嬉シサト       
心配ノアマリ
何ヲシテヨイカ          
自分ノスルコトガワカラナカツタノダヨ
スルトソノウチ          
突然オマエノ最初ノ声ガ
高ラカニ聞エテキタ
ソノ声ヲ父ハ一生忘レナイダロウ 

(後略)

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息子の10歳の誕生日に書いたもので、何度読んでも息子への深い愛情に心打たれるのですが、こちらも「岳彦」の呼びかけからはじまっていますね。
岳彦の呼び名は幼少期だけのものではなく、親しい間柄では、生涯にわたって使われていたのだそうです。

「子供ノ誕生日ニ」の文章は、岳彦さんの幼少期の写真とともに、記念館の併設小企画「伊丹万作の人と仕事」で紹介しております。ぜひ、記念館でご覧くださいませ。

20190617_02.JPG併設小企画「伊丹万作の人と仕事」
企画展示室の一角にあります

20190617_03.JPG「子供ノ誕生日ニ」の展示

スタッフ:淺野

2019.06.10 開館12周年記念 収蔵庫ツアーを開催いたしました

「近頃、小鳥の声がやけに聞こえてくるなあ」と思っていましたら、ヤマザクラに小さなさくらんぼがたくさん生っていました。これを目当てに来ていたのですね。

tour2019_0.jpg小鳥たちには美味しいらしいですが、
お客様には決してオススメいたしません!
なぜなら食べてみたことがあるからです(笑)

気付けば初夏の晴天の頃も過ぎ、梅雨空の毎日ですが、皆様お元気でいらっしゃいますか。


5月17日(金)~19日(日)、開館12周年記念の収蔵庫ツアーを開催いたしました。

記念館の収蔵庫の2階には「展示風収蔵」になっているコーナーがございまして、直筆の原稿・原画、衣類、食器などの愛用品や書籍が収められています。
それらの収蔵品に関する伊丹十三ならではのエピソードを交えながら、1時間ほどご案内する催しです。

shuzoko.jpgtour_yugawara2.JPG自邸の一室を再現したコーナーもあります

収蔵庫内のご見学スペースには、脚本監督作品や、イラスト、デザイン、といった仕事にまつわるものも多くございますが、おもな話題といたしましては、伊丹十三が「ものとどのように付き合う人であったか」をご紹介しております。


既製品を既成概念にとらわれずに使う面あり、愛用の品をリピートするために買い置きしておく面あり、お気に入りの服を繕って大切に着続ける面もあり――

人物像や生活ぶりにふれていただけることから、伊丹さんを身近に感じていただける催しになっていると思います。

お客様方から頂戴したアンケート回答でレポートさせていただきます。

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来館ははじめて。いきなり収蔵庫の見学をさせてもらいましたが、丁寧に説明していただき、ずいぶん身近に感じ、感激しました。

 

 

想像以上の方でした。このツアーに参加できてよかったです。色々と説明してもらえたので。

 

 

大変興味深かった。解説も参考になった。前に一度見ているが、今日の見学でまた違った見方ができるように思う。

 

 

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興味本位で参加させていただきましたが、すっごく楽しかったです。説明もとても流暢で、大変わかり易かったです。もう一度、伊丹十三さんの映画を観たくなりました。

 

 

伊丹さんが生きていた感じを実際に感じることができました。できることなら、みなさんに公開してあげてほしいなぁ。もっといろいろ今の時代の映画を作って欲しかったです(涙)。「やぁ、いらっしゃい」、また寄らせていただきます。

 

 

松山にゆかりのある伊丹十三さんのことを知る機会となり、大変貴重な体験をさせていただきました。映画で使用された衣裳・小道具を拝見させていただきました。映画作品を見てみたくなりました。

 

 

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伊丹さんの多才さや、ものに対するこだわりなど、人柄を感じられる楽しいツアーでした。ほとんど前情報なく来たのですが、ガイドの方が詳しくお話しして下さったのでとても楽しめました。

 

 

伊丹さんの知的好奇心の旺盛さと、観察力の詳細さが伺い知れる収蔵品を沢山見られて、とても楽しかったです。また、映画の中で使われていたものを実際に見ることもでき、もう一度、作品を観なおしてみようと思いました。わくわくしました、ありがとうございました。

 

 

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十三さんの多様・多彩さを目の当たりにして感動いたしました。美術館めぐり等、松山市中心部や道後との連携を探れればもっともっと楽しめそうです。

 

 

過去を見れば見るほど、仮定の話にはなるが、存命であれば何をどのようにしているのかを知りたくなる気になった。

 

 

伊丹さんの人間としての生活空間が感じられて、期待通りにすばらしかったです。同じ人間なんだなーと思いながら、あまりにも多才で、早く亡くなってしまったことが非常に残念です。今、生きていたら、どんな提言や映画を撮ってくれていたでしょう。

 

 

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伊丹さんの身近な物を見られて、又、説明を受けて、とても良かったです。

 

 

長らく来たくてたまらなかった記念館に、収蔵庫ツアーのところから来館させていただけて、超ラッキーでした。
少人数で、説明いただいた上で、ツアー開始していただき、とても丁寧な説明で......最高でした。お話も、説明も、詳しくお上手で、わかりやすかったです。記念館初来館でしたが、また、これからたびたび、ゆっくり、伺いたいと感じました。楽しかったです。ありがとうございました。

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ご応募・ご参加くださった皆様、まことにありがとうございました。

残念ながらご落選となられた方々、ご参加枠をたくさんご用意できず、まことに申し訳ございませんでした。
来年も5月中頃に開催させていただくことと思いますので、ぜひまた3月頃にホームページを覗きにいらして、ご応募くださいましたら幸いです。


5月15日(水)、伊丹十三86回目のお誕生日に開館12周年を迎え、記念館は13年目に入りました。ハイ、十三年目、でございます。

よい十三周年をお客様方と迎えられるよう、また、行事のない日々の開館においてもご満足いただけるように努めてまいりますので、これからも、どうぞよろしくお願い申しあげます。

学芸員:中野

2019.06.03 楽器

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
暑くなってきましたね。これからどんどん気温も上がってくると思いますので、体調等崩されないようご注意ください。

さて先日、ご来館のお客様の中に、趣味でアコーディオンを弾いてらっしゃるという男性がいらっしゃいました。還暦を迎えた時、何かのテレビ番組で特集されていたアコーディオンに興味を持ち、習い始めたのだそうです。それまで楽器とはほとんど縁がない生活だったそうですが、始めて「弾く楽しさ」を味わい、めきめき上達して、3年経った今ではイベント会場で演奏することもあるのだとか。すごいですね!

そんなお客様は、伊丹さんの著書『ヨーロッパ退屈日記』にある、以下のエッセイが大のお気に入りなんだそうですよ。一部ご紹介いたしますね。

 

でも、わたくしは声を大にしていおう。楽器というものは愉しいものである、と。
そうして楽器というものは三、四歳の頃から習い始めなければならない、というのは最も悪質なデマである、と。職業的演奏家を志すのならいざ知らず、自分で愉しむ程度のことなら何歳になってからでも遅くはないのだ。
(中略)
深く楽器を愛する心と、そうして根気を持った人なら何の躊躇うことがあろうか。思うに楽器とはその人の終生の友である。決して裏切ることのない友である。わたくしは心の底からそのように感じるのであります。

「最終楽章」 『ヨーロッパ退屈日記』(新潮文庫)より

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習い始めの頃にこのエッセイを読んでたいへん共感されたのだとか。ご旅行中ということで、残念ながらこのお客様の " 終生の友 " を拝見することはできなかったのですが(家で "お留守番 " だそうです)、こだわって選んだというアコーディオンは、やはりとても大切になさっているそうです。

そして伊丹さん自身も「音楽愛好家」の顔を持っていました。愛用していたギターとヴァイオリンが、記念館の常設展示室「二 音楽愛好家」コーナーに展示されていますので、ご来館の際はぜひご覧になってみてください。

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3日後の6月6日は、お稽古事を始めるのによい日とされていることから、「楽器の日」と言われているそうです。楽器にご興味のある方は、関連イベントや楽器店などをのぞいてみるのも面白いかもしれませんね。


スタッフ:山岡