記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2016.11.21 12月の映画のご紹介 & 宮本館長出勤情報

少し早いですが......どなた様も師走はお忙しいことと存じますので、12月のお知らせを。

毎月13日の13時から常設展示室で開催している「十三日十三時の伊丹映画」、12月は13日が休館日の火曜日にあたる関係で、14日(水)に行います。
作品は『大病人』(1993年)。

テーマは「死」。終末医療をめぐる、癌患者(三國連太郎さん)と医師(津川雅彦さん)の物語です。

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パンフレットの作品解説に、伊丹監督はこんな言葉を寄せています。

病院が舞台になる映画を作ることにして、まず最初に考えたのは、等身大の病院の映画は作らない、ということです。その方向ならテレビのドキュメンタリーに絶対勝てないとわかっているからです。(中略)

――すると映画としての勝負は何なんですか?

二人の男がいます。一人は癌の患者、一人は癌と闘うことを職業としている医師です。患者は自分が癌で助からないことを知らない。医師は知っているけど教えない。医師にとって死は敗北であり、自分の守備範囲外であり、興味もないし、したがって適切に対処する能力もない。さあ、この患者がニッコリ笑って死ぬことができるかどうか。この二人の対立を極限まで高め、人格同士の激しいぶつかりあいの結果、最後には二人がスタートとは全く別の高いレベルにまで成長する、というふうに設計しましてね、観客は、二人と共に苦しみ、喜び、最後は魂が洗われた体験をして映画館を出てもらえばな、と思っています。

性格も立場も異なる「二人の男」が「対立」「ぶつかりあい」を経て「成長」する――

この映画のシナリオがいかにして生み出されたか、伊丹十三がどんな作品を意識していたかがよーく分かる資料を、企画展「ビックリ人間 伊丹十三の吸収術」に展示しています。

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映画の封切り直後に出版された著書、『「大病人」日記』(1993年)の直筆原稿です。

278ページもある本のうち、展示でお目にかけている部分はたった8ページ分ですが、「バディ・フィルム」「三幕物」という"定型"への挑戦によって伊丹映画が練り上げられていった過程を、楽しく面白く知っていただけます。
(また、この企画展のテーマでもある「伊丹十三の"異文化体験"」について記されている部分でもありますので、大変に貴重で大変にお得な展示でございます。)

伊丹映画と企画展を併せてお楽しみいただく今年最大のチャンス!
『大病人』は12月14日(水)の13時からです、ぜひお越しくださいませ。

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さて、その前の、12月10日(土)、11日(日)には、宮本館長が出勤して、ご来館の皆々様をロビーでお迎えいたします。

matsudamc.jpg記念撮影にも対応させていただきます!

12月10日(土)12:30頃~16:00頃
12月11日(日)11:00頃~13:00頃
※当日の状況により、滞在時間等は変更になることがあります。

年の瀬の慌ただしい季節になりますが、記念館では心地良いひとときを過ごしていただけるように努めてまいります。
師走の小休止に、ぜひいらしてくださいね。館長&スタッフ一同お待ちしております。

学芸員:中野