記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2015.12.21  "ビックリ人間"伊丹十三の吸収術

みなさまこんにちは。


かねてお知らせしておりましたとおり、12月7日(月)「旅の時代」展を終了し、

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最終日の私「楽しかったなぁ、名残惜しいなぁ...」

翌日から展示替え作業に入り、

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撤収した私「ヒェーっ何もない!」
「ここをまた埋めなくちゃいけないの!?」

新企画展『ビックリ人間 伊丹十三の吸収術』を12月18日(金)に開始いたしました。

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オープンです!!

「ビックリ人間」と言っても、世界一背の高い大男とか、体がものすごく柔らかい人とか、髪の毛や爪を長年伸ばし続けている人のことではありません。
「ビックリさせる人」ではなくて、「ビックリする人」、もっと言えば「ビックリするのが好きな人、得意な人」、すなわち――伊丹十三。彼自身の自称でした。

では、何にビックリして自分の中に取り入れるか。
初めて見て、聞いて、知って、「そうなんだ!」と思ったことなら何でも! です。

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展示品の一例

本を読んでビックリ、映画を観てビックリ、人や物や出来事にビックリ。結婚して子供が生まれて父親になって、家族にも自分自身にもビックリ。
それから、義父のお葬式でビックリ、人々のラーメンへの情熱にビックリ、税金をたくさん取られてビックリ、海外のスーパーでは食品が安くて(日本の食品の高さに気付かされて)ビックリ......

例えば――

 私はラーメン屋にはほとんど行ったことがありません。行ったことがないからこそ驚くのです。人々がなぜかくもラーメンに対して情熱的でありうるのか。私にとっては心からの驚きなのです。
 驚きというのは自分の惰性化したイメージに対する一撃です。そうして、この惰性化したイメージに対する一撃こそが想像力と呼ばれるものの力であり、つまり、私が映画を通じて追求している当のものなのです。

映画『タンポポ』パンフレットより

驚きが伊丹さんの創意の源だったんですね。

自分を驚かせるもの、自分の目を開かせるものは何でも「異文化」として見聞し、さらに調べて学んで吸収し、分かりやすく面白く作品化して、楽しんでもらえたら心から喜ぶ。

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ということで、今回は、「伊丹十三を驚かせた本、映画、対談や取材に関する所蔵品を一堂に会して、驚いたら何でも吸収してしまうビックリ人間の"感心力"を紹介する展覧会」です。

そういえば、伊丹さんって、エッセイやテレビや雑誌のインタビューで「ビックリした」ってよく言っていたような......

「いやぁ、ビックリした」
「実にたまげました」
「これにはまいりましたねぇ」

多くの方が聞き覚えていらっしゃるであろう伊丹さんのそんな"声"が、この企画展でも聞こえてくるように、と念じながら準備いたしました。

資料がズラリと並んだところを見渡して、いろんな見方ができる展示になったと感じています。ですから、みどころは......(いつも言うことですが)全部です!
思い思いにご自由に、お楽しみいただけましたら何より嬉しく存じます。

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ちなみに、この企画展のための作業を終えたところの私はと申しますと、「今すぐ書店や図書館や映画館に駆け込んで、発見したことについて誰かとおしゃべりしたいなぁ」という思いに駆られています。今後のテーマですね。

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さて、早いもので、記念館便りもこれが今年最後の更新です。

伊丹十三記念館は12月28日(月)から1月1日(金)まで年末年始のお休みをいただき、2016年は1月2日(土)から開館いたします。
開館初日には館長のメッセージを記念館便りにアップいたしますので、ぜひアクセスしてください。

今年お越しくださった皆様、ありがとうございました。またお会いできますように。
残念ながらご来館の機会のなかった皆様、来年はぜひお越しくださいませ。お待ちしております。

では、よいお年を!

学芸員:中野