記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2014.11.24 第6回伊丹十三賞 受賞記念トークショーを開催いたしました

「こんばんは、ようこそいらしていただきました。
 ――今回のこのトークショーは、応募してくださった方が2,954人、当選倍率3.28倍。
 皆さま、おめでとうございます!」

aisatsu.JPG

いつも変わらぬ元気な声で皆さまにご挨拶をする宮本館長


11月12日(水)に松山市総合コミュニティセンターで開催したトークショーは、案内役・宮本信子館長のこんなご挨拶から始まりました。

伊丹十三賞も今年で早6回目。今回のトークショーは、「第6回伊丹十三賞」をリリー・フランキーさんにご受賞いただいたことを記念するイベントでした。

題して「第6回伊丹十三賞 受賞記念 リリー・フランキー × 周防正行 トークショー」
トークテーマは「いかにしてリリー・フランキーになったのか」


伊丹十三賞・選考委員のおひとりでいらっしゃる周防監督が聞き手となって、リリー・フランキーさんという存在の謎に迫るという、大変豪華な内容でした。

冒頭の宮本館長のご挨拶にあります通り、定員を大幅に上回るご応募を頂戴しておりましたので、落選なさった皆さまには大変申し訳なく存じております。
後日、当サイトにトークショーの採録ページを設けます。トークショー全文の掲載を予定しておりますので、楽しみにお待ちいただけましたら幸いです。

本日は、スタッフ・淺野のレポートとして、当日の様子をお届けさせていただきます。

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まずはトークショーの冒頭。
「第6回伊丹十三賞」をリリーさんにご受賞いただいたことについて、周防監督が、選考委員の視点から次のように振り返ってくださいました。

伊丹十三賞は、贈賞年の前年に発表された作品等の業績を授賞対象としていますが、「その年のその作品だけではなくて、その人が、どういうことをどういう風にやってきたのか」にもこだわっていて、「その人」が大事なのだと。確かに過去の受賞者の皆さまにあてはまりますね。

さらに映画監督としてのお立場から、俳優としてのリリーさんのことを、「この人に出演を頼めるような世界を僕は用意できるだろうか、と考えた初めての人」とおっしゃり、「今まで感じたことのない魅力をリリーさんの中に見た」ことが、「伊丹十三賞を受賞していただきたいと思った理由」だったとご説明くださいました。

周防監督がリリーさんに感じた魅力が、リリーさんという稀有な存在に対する「謎」になり、「いかにしてリリー・フランキーになったのか」という今回のトークテーマに繋がっていたんですね。

kantoku.JPG「聞き手は初めて」 とおっしゃる周防監督


そんな周防監督のお話にじっと聴き入るリリーさん。実は学生の頃から伊丹さんに憧れていたそうで、今回の受賞は「今まで考えていたことを肯定していただけたようですごく嬉しい」とのこと。
トークショーの場所となった松山については、「松山は文学の街というか、ものを書いたりする人間にはちょっと敷居が高いというか......そういうところで自分の話をするのは恐縮ですね」とおっしゃっていました。

lily_san.JPG周防監督に「質問は何でも大丈夫です」と事前にお伝えしたというリリーさん


受賞のお話に続いて、周防監督はリリーさんに「人生最初の記憶」が何であったかを尋ねます。
子どもの頃から順を追って話を進めながら、「いかにしてリリー・フランキーになったのか」が語られていくという流れで、自然とリリーさんの世界に引き込まれていきました。

ちなみにリリーさんの「最初の記憶」は、ご著書『東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~』でもおなじみのエピソード(お土産の焼き鳥をお父さんに無理やり食べさせられる話)だったのですが、その時の感覚まで具体的にお話しくださるので、あらためておもしろかったです!

その後も、ひとつひとつ丁寧に周防監督が質問を重ねていきます。
リリーさんの答えは軽妙で、会場には笑いが絶えません。

talk.JPG

この日ご用意したソファー、実は映画『お葬式』でセットとして使用されたものです

会場への搬入は大変でしたが、革製の落ち着いた雰囲気がお二人にぴったりでした


リリーさんがお仕事を始められる頃までのお話がじっくりと語られたのですが、そのあたりのお二人のかけ合いは、ぜひ会話のままお読みいただきたく存じます。鋭意書き起こし中ですので、採録ページの完成を今しばらくお待ちください。

約1時間半のトークショーはあまりにも楽しくて、あっという間でした。
終演前、リリーさんはこの日のトークを振り返りながら、聞き手の周防監督について、「お医者さまみたいに、人に喋らせる何かがありますね」とおっしゃっていました。聞き手役は初めてだったという周防監督ですが、リリーさんは終始リラックスしてお話しできたようです。


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レポートの最後に、個人的にとても印象に残った部分をご紹介させていただきますね。

トークショー当日、リリーさんは周防監督・宮本館長とご一緒に記念館にお立ち寄りくださったのですが、そこでご覧になった「ある展示品」についてトークショーの中でお話しくださったんです。

企画展に展示している「伊丹さんが旅先から宮本館長に宛てた手紙」についてです。

kikaku.JPG「旅路より」のコーナーに展示しています


――家族への手紙というプライベートなものにも関わらず、イラスト入りでとても丁寧に、手を抜かずに書かれていることに触れてくださり、「日々こうじゃないと、いきなり仕事で精度をあげるのは無理」で、良いものを作る方法は、「本当に丁寧に、こまかく、諦めずに作り続ける。それしかない」とお話しくださいました。周防監督もうなずいていらっしゃいました。

また、伊丹監督と周防監督、ともにご夫婦で映画を作っていることにも触れ、「一番能力が出るパートナーだったんだなっていうのが、あの手紙一枚でもわかりました。そしてたぶん、そういう人に巡り合える人生っていうのが豊かな人生」――そんな風に思われたのだそうです。

続けて、記念館で桂の樹(並んだ二つの幹が伊丹さんと宮本館長を象徴している中庭の樹)を見たことにも話が及びました。「この樹を眺めながらプロポーズする人がいる」という宮本館長の説明を聴いて、「(パートナーと)関係性を築けていたら、この樹を見てプロポーズする気持ちはわかる」とおっしゃるリリーさん。
リリーさんの言葉で記念館のことを語っていただけて、とても嬉しかったです。


nakaniwa.JPG記念館の中庭で桂の樹を見るリリーさんと宮本館長


あらためましてリリーさん、周防監督、素晴らしいトークショーをありがとうございました。
会場にお越しくださった皆さま、そしてご応募くださった皆さまにも心より御礼申し上げます。


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【宮本館長が出勤致しました】


トークショーの翌日、宮本館長が記念館に出勤いたしました!ほんの一部ですが、お写真のご紹介です。


gesut_1.JPGgesut_2.JPG
「トークショーをきっかけに、記念館に来たくなったので来ました」という方もいらっしゃいました。大変嬉しく存じております。
ご来館くださったすべての皆さま、ありがとうございました。

スタッフ:淺野