記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2014.10.06 秋のおしらせ

秋涼の候、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
今日は秋らしい伊丹十三情報をふたつ、お届けいたします。

『主夫と生活』復刊

スーパーでお買い物をしておりますと、お使いで来たらしい男性がひどくマゴマゴしているのを見かけることがあります。いろいろの事情を推察して応援のまなざしをひそかに送りつつ、「私と同世代ぐらいに見えるのに、お使い程度の買い物もこなせない男の人がこんなにいるんじゃ、日本の共働き社会もまだまだね」と思ってしまったりするわけですが、哀れなほど困惑している男性の姿に上から目線で妙な優越感を覚えている私もまた、「家の中のことでは女のほうが上よね、ふふん」という「まだまだな日本」から抜け出せていないのだなぁ、と思います。

さて、今から40年ほど前のアメリカに一人の"専業主夫"が誕生しました。立ち上げた会社が軌道に乗りつつあった妻に代わって、三児のある家庭を切り盛りするために新聞社の職を辞したマイク・マグレディ氏です。人気コラムニストだったんだそうですよ。
得意だった"はず"の料理、煩雑きわまりない洗濯とアイロンがけ、絶望的に苦手な掃除、来客のもてなしに車の修理に子供の歯医者の送り迎え! 日々押し寄せる仕事の数々のみならず、家計を襲うインフレの波、「男は・女はこうあるべき」という社会の偏見と闘ったマグレディ氏の体験記"My Life as a Househusband"は日本語にも翻訳され、1983年、『主夫と生活』のタイトルで学陽書房から出版されました。

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訳者は伊丹十三です。

1995年に文庫化されたのち長らく絶版になっていましたが、このたびアノニマ・スタジオによって復刊されることになりました。
 

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イラストは故・長新太さん、デザインは佐村憲一さん。
31年前の初版と同じコンビによる新デザインの装幀です。


妻が"夫"となって稼ぎ、夫が"妻"となって育児と家事を受け持つ「交換生活」に一年間トライすることで、夫婦が自分自身と互いの役割について発見を重ね、「二人の稼ぎ手と二人のシュフもつ家族」として再出発するためにすばらしい契約を取り決める、という過程が綴られています。

「家事育児の分担」と言うは易し、自分の方が多く受け持っている、押しつけられている、と不満を感じている人はかなり多いことでしょう。(口外しないだけで、うまいこと押しつけたと舌を出しつつ申し訳なく思っている人もいるかもしれません。)
今の厳しいご時世で、マグレディ夫妻のような役割交換生活を現実に試してみるなんてことはほとんど不可能だと思いますが、「不承不承でも、思い込みを捨てて本気で取り組んだらどんどんよくなった実例があるらしい」という参考書として、この本を読んでみてはいかがでしょうか? ほんとうの家庭平和のきっかけが1,728円で手に入るなら......非常にお買い得ではないかと......お勧めいたします。

Amazonでは早くも予約受付中だそうです!

 


東京ステーションギャラリー
『ディスカバー、ディスカバー・ジャパン 「遠く」へ行きたい』展

続きましては展覧会。

東京駅丸の内北口の東京ステーションギャラリーで開催中の企画展『ディスカバー、ディスカバー・ジャパン 「遠く」へ行きたい』。

 

1970年代に展開された、かの有名な国鉄のキャンペーン「ディスカバー・ジャパン」をテーマとしたこの展覧会に伊丹さんが登場しています。
今年10月で放送開始から44年となるご長寿番組『遠くへ行きたい』の中から、伊丹十三が旅人として出演した名作「天が近い村」(1973年)を全編ノーカットで鑑賞できるそうです。(他の方のご出演回もダイジェスト映像で楽しめるそうです。)ほかにも、キャンペーン広告の驚くほどの斬新さや、それをめぐっての議論の熱さ、かつての旅の懐かしさ、いろんなエッセンスが詰まっています。

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1971年のキャンペーンポスターをモチーフにした展覧会のメインイメージ。
オヤ......フム、赤い矢印があっちとこっちで逆になってますね。
図録は内容超充実、それぞれの印刷物の紙質選択もすごく凝ってます!

日本一の旅の拠点・東京駅で1970年代の日本の旅を旅することができるなんて、幾重にも入れ子になった展示で楽しさ倍増、さらに倍、ですね。
東京駅をご利用の方、お近くへいらっしゃる方は、お時間を確保してぜひどうぞ!

  • 展覧会名:ディスカバー、ディスカバー・ジャパン 「遠く」へ行きたい
  • 会場:東京ステーションギャラリー
  • 会期:2014年9月13日(土)~11月9日(日) 月曜休館(祝日の場合は開館、翌火曜休館)
  • 入館料:一般900円 高校・大学生700円 小・中学生400円

詳しくはこちら

(『遠くへ行きたい』をはじめとする伊丹さんの旅の仕事は当館の企画展でも展示中です。お待ちしておりますヨ。)

学芸員:中野