記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2013.07.15 国民の祝日の過ごし方

暑中お見舞い申しあげます。

毎年毎年、「今年は去年より暑い」と言ってるような気がします。こうも暑いと、蒸し暑さでシューマイになってしまうのと自分の汗の塩分でお漬物になってしまうのと、どっちが先かなぁ......なんて考えちゃいますね。

さて、本日は国民の祝日、海の日であります。(ちなみにワタクシ、3年連続3回目の「海の日登板」でございます。)

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瀬戸内~って感じの景色ですね

ハッピーマンデー制度ができてからというもの、いくつかの国民の祝日が「単なる嬉しい三連休」の一部になってしまって、祝日である意義が薄れている感が否めませんが、何をするための日なのか、ちゃーんと法律で定められているんですよ。

自由と平和を求めてやまない日本国民は、美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために、ここに国民こぞって祝い、感謝し、又は記念する日を定め、これを「国民の祝日」と名づける。
国民の祝日に関する法律 第一条
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO178.html


フム......日本をさらにいいところにするために、「日本とはどういう国で、日本人とは何者であるか」ということに思いを致す日が、国民の祝日であるようです。(今ではトンと見かけなくなりましたし、思想的に云々というメンドくさい話になりがちなご時世になってしまいましたけれど、「旗日」と言うだけあって、玄関先に国旗を掲げるのも、そういったことを考えるためには、結構いいことのような気がします。)
となれば、「海の日」なんて、海に囲まれた島国日本とそこで生きてきた日本人について考えるのにうってつけの日ですね。

伊丹映画に限らず、良質な映画には、日本社会のありようと日本人の姿がまざまざと描かれています。そんな映画を国民の祝日にご鑑賞いただきますと、なおいっそう味わいが増して、意義深い旗日になるのではないでしょうか。

かくいう私の日本映画の味わい方はと申しますと、年齢のせいというか、さまざまの経験ゆえに年々そうなってきているのかな、と思うのですが、学生時代に「日本人かくあるべし」と思っていたようなカッコいい人物だけでなく、いかにも日本人的な弱さを体現しているキャラクターにも心惹かれるようになりました。

伊丹映画でいえば、高級レストランで赤面してしまうオジサンたち(『タンポポ』)ですとか、弱虫ホテルマン(『ミンボーの女』)ですとか、噂話であることないこと言っちゃうご近所さん(『静かな生活』)ですとか、「長いものには巻かれろ、右へならえだ」みたいな人たち(『スーパーの女』)ですとか......彼らがオロオロしたり、しょうもないズルをしたりするたびに「わかる、わかるわー」と思ってしまうのです。
自分を見るようで苦い気持ちになる、というのでしょうか。ダメキャラがやる気を出して頑張ろうものなら、まるで自分の分身を応援するような気持ちになったりもしますね。伊丹十三流のキャスティングの妙もあってこそのことですけれど。(どなたもピタリとハマってるんですよねぇ。)

というふうに、いい映画には、自分の前にスっと鏡を差し出してくれるようなところがあると思います。

映画のDVDやブルーレイをご自宅でゆっくりとご覧になるもよし、涼しい映画館へ出かけて新作映画をゆったりとご覧になるもよし、三連休の最終日がよい一日になるようお祈りしております。
あっっ、モチロン当館にお越しくださいましたら、とっても嬉しいです! スタッフ一同お待ちしております。

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伊丹映画のソフトはBlu-rayディスクで発売中
当館のグッズショップでも取扱っております
ボックスセットにはウレシイ特典がついてますヨ!

今年は「千年猛暑」との予測もあるのだそうです。字面や響きだけで、夏の終わりが見えないような、絶望的な気持ちになりますね。(注:千年「ぶり」の猛暑になるでしょう、という予報であって、千年暑さが続くでしょう、ということではないようです。そこはご安心ください。)
友人に教えましたら、「映画会社の記念映画のタイトルみたいやね。十二単を着た若尾文子が出てきそう」と言うので笑ってしまいました。みなさまも、笑いつつ涼みつつ、ご自愛くださいませ。


学芸員:中野