記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2013.07.01 ハリコノイヌトトラトガナカヨクアソンデヰルトコロ

記念館内のカフェ・タンポポには、伊丹十三の父・万作の油彩がございます。

伊丹万作と言えば松山が誇る脚本家・映画監督、『國士無双』や『赤西蠣太』といった名作で広く知られていますよね。
そんな映画人伊丹万作が「絵」を?と不思議に思われる方もいらっしゃることでしょう。実は、脚本家・映画監督になる前の若い頃の万作には、洋画家を目指していた時期がありました。岸田劉生に素質を認められたこともあったそうなのですが、生活に窮する中で絵の道を断念し、映画の世界に身を投じたのです(絵の才能があったからこそ、映画界で活躍できたのでしょうね)。

カフェ・タンポポに展示しております油彩は、万作が33歳の時、長男岳彦(本名・義弘、のちの伊丹十三)の誕生を祝って描きました。映画『國士無双』が公開されたのが32歳の時ですから、映画界で知られるようになっていた頃のものですね。

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   【伊丹万作 ハリコノイヌトトラトガナカヨクアソンデヰルトコロ 1933年】
この油彩をカフェ・タンポポに展示しております 

 
父の子に対する愛情いっぱいの愛らしい絵を眺めていると、私自身が親からもらった愛情へと思い及んで、不思議とほっとします。「親からもらった愛情があれば、たぶん何があっても大丈夫」そんな安心感を呼び起こす絵とでも言いましょうか。

皆様はどうお感じになりますでしょうか。

現在の企画展「 父と子 ― 伊丹十三が語る父・伊丹万作の人と芸術 ― 」(2010 年12 月20 日~2013 年12 月)では、万作の他の絵画作品もご覧いただけます。さらに、同企画展に展示されております『朱欒』(万作が画家を目指していた頃、友人たちと作った文芸・絵画作品の回覧雑誌)第4号には、「自分が繪描きで無かったら」という万作の詩が掲載されており(6月26日より展示)、その真摯な人柄に触れていただくこともできます。

0701kikaku.JPG【企画展の様子】
万作には挿絵画家「池内愚美」として活躍した時期もありました


尚、受付とカフェ・タンポポでは、当館に対するご感想をお伺いしております(ご希望の方に限り、用紙にご記入いただいております)。頂戴したご感想は、許可を得て「みなさまの声」としてHPに掲載しております。記念館にお越しいただきました際には、是非みなさまのご感想をお寄せください。
楽しみにお待ちしております。

スタッフ:淺野