記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2012.12.24 クリスマス

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。早いもので、今年最後の記念館便りとなりました。あと1週間で大晦日...ではありますが、ここ2、3日はやはり、年末というよりはクリスマス気分の方が多いのではないでしょうか。

最近は街中だけでなく、住宅街でもきれいなイルミネーションを目にする機会が多くなりましたね。私の家のすぐ近くにも、毎年きれいなイルミネーションで楽しませてくださるお宅があり、3歳になる姪が近くを通るたびに「きれい!」と嬉しそうに眺めています。イルミネーションのためだけに遠出することもなくなってしまったので、家のすぐ近くでクリスマス気分を味わうことができるのは非常にありがたいなぁと感じています。

加えて今年は、職場である記念館でも、クリスマスのイルミネーションとはまた違った趣のライトアップが楽しめています。寒さが深まるにつれてあたりが暗くなるのが早くなりますが、そうすると中庭の回廊や記念館が落ち着いた照明で浮かび上がってきます。この季節が一番きれいに見えますので、皆さまもぜひ足を運んでみてください。

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         【柔らかい、落ち着いた照明に照らし出される記念館(上)と回廊(下)】

また、クリスマスといえばケーキも大切な要素の一つですね。我が家ではホールのケーキを買って、家族で切り分けて食べています。普段ケーキを食べるときはカットされたものがほとんどですが、クリスマスだけはホールのケーキを買う、というのがなんとなく我が家の習慣になっているようです。面白いもので、均等に切っているつもりでも大きさなどがどこか違ってしまいますよね。今は特に気になりませんが、幼い頃は、親が切り分けるのをじっと監視している子供だったようです。大きいもの、飾りの多いものを狙っていたのだと思います...。

さて、ケーキつながりで、カフェタンポポの新メニューをひとつ。皆さまから好評をいただいている『季節のタルト』が、『いちじくのタルト』から『りんごのタルト』に変わりました!以前同様口当たりの良い、美味しいタルトです。お立ち寄りの際はぜひご賞味くださいませ。

  IMG_7383その2.jpg                                                    【新登場、リンゴのタルト】 

最後になりましたが、記念館便りをご覧いただいている皆さま、ご来館いただいた皆さま、今年一年本当にありがとうございました。今月19日より、模様替えを終え、より内容の濃くなった企画展示も開催されております。皆さまに「来てよかった!」「また行きたい!」とおっしゃっていただけるよう、スタッフ一同、今後も精一杯務めさせていただきます。

来年もどうぞ、記念館をよろしくお願いいたします。

スタッフ:山岡 

2012.12.17 夫婦のかたち

以前ご来館されたお客様で60歳前後のご夫婦がいらっしゃいました。
記念館ではご入館時に簡単に館内のご案内をさせていただくのですが、ご主人は説明をお聞きにならず奥様を残して展示室に入って行かれました。

残された奥様が私に向って
「あの人いつもああで私をおいて先に先に進んでっちゃうから、派手な服着せてるのよ~!遠くから見てもわかるでしょ!」とおっしゃいました。
そう言われてご主人のうしろ姿をみてみると、確かに派手な色の派手な柄のお洋服をお召しです。

「本人は気付いてないのよ!派手な服ばっかり着させられている理由!」
そうおっしゃって、奥様も展示室に進んで行かれました。

私は大変感心しました。開館当初の出来事ですが忘れられないエピソードです。夫婦生活を送る中で、困ったことを上手に解決された奥様に大変感心致しました。

さて、伊丹十三の奥さんはみなさんご存知のとおり当館館長宮本信子です。
結婚当時伊丹十三が36歳、宮本信子24歳。2人の年齢差は12歳。ひとまわりも年の差があったのですね。宮本信子はよく当時のことを振り返って「先生と生徒のような関係だった」と言っています。

「お蕎麦の茹で加減が伊丹さんの納得する水準に達しなかったら食べてくれず、何度も茹でなおした。そのあと一人でこっそり泣いたりした。」という話なんかからも、伊丹十三のような人の奥さんをするのは大変だったろうと想像できます。

あと、宮本信子は伊丹十三の事を「映画監督になるべくして生まれてきた人だ」と言って、伊丹十三に映画監督なることを強くすすめ、資金繰りなどでも伊丹十三が映画を撮れるようにいろいろと奔走したそうです。

お蕎麦は気に入るまで茹で直してくれる、成功も導いてくれる、伊丹さんは公私にわたって素晴らしいサポートを受けていたのですね。

それにしても、黙ってお蕎麦を茹で直してくれる人がいる生活なんて、羨ましいです!

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【画像:ドイツの伝統的な菓子パン「シュトーレン」。クリスマスの時期によく食べるそうです。現在、来春放送予定のNKH朝の連続テレビ小説「あまちゃん」の撮影で忙しくしている館長から、スタッフへのクリスマスプレゼントとして届きました!おいしかったです。】

スタッフ:川又

 

2012.12.10 企画展示室一時閉室とリニューアルにつきまして

展示品入れ替え作業のため、本日12月10日(月)の閉館後から、企画展示室を一時閉室いたします。
と、申しましても、「父と子 -- 伊丹十三が語る父・伊丹万作の人と芸術 --」展が終わってしまうわけではなく...

大好評につき...

延長開催いたします!!

12月12日(水)~17日(月)は、常設展示室のみのご鑑賞となりますので、ご了承くださいませ。(※11日(火)、18日(火)は休館日です。)

1週間お部屋を閉めてさせていただく分、そして会期を延長する分、より濃厚な展示にバージョンアップするべく奮闘努力いたします。12月19日(水)の再開まで今しばらくお待ちくださいませ。

え? 「いっぺん観たからもういい、新しい企画まで行かないよ」? いやいや、そうおっしゃらずに。
今度あたらしく展示に加える『朱欒』、すばらしいのです!

『朱欒(しゅらん)』とは、大正14年から15年にかけて発行された同人誌なのですが、まず、メンバーがすごい。若かりし頃の伊丹万作、中村草田男、重松鶴之助...and more!
彼らは、旧制松山中学の生徒たちが『白樺』の影響を受けて発行していた同人誌『楽天』のメンバーで、青年となって進学や就職で上京してからも、その仲間と集まっては芸術談義を続けていました。そうするうちに生まれた『朱欒』は9号まで発行されました。

そして、その作り方もすごい。各自、溢れ出る創作意欲でもって小説や詩や戯曲や芸術評論それから絵画をものし、毎月の編集日にそれらの作品を持ちよって綴り、手描きの表紙をつける...回覧して、批評を書き込んで次のメンバーへ...つまり、印刷ではなくオール直筆、世に1号1冊しか作られなかった雑誌なのです。

同じ方法で作られた松中の『楽天』のほうは、残念ながら戦災によってすべて失われてしまい現存していません。
『朱欒』もまた長らく行方知れずになっていたのですが、中村草田男が亡くなって数年後に草田男の弟宅で発見され、以来、現在まで、中村家で大切に保管されてきました。

芸術へのあこがれと友情によって編まれ、幸運によって遺った、奇跡のかたまりのようなこの『朱欒』を、中村家の皆様のご厚意により「父と子」展にご出品いただきます。

冊子のかたちをしているので一度に全部をくまなくご覧いただくことはできませんが、入れ替え・ページ替えをおこなって、いろいろなページをお目にかけてまいります。

乞うご期待! 引き続きよろしくお願いいたします。

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12月12日(水)~17日(月)の企画展示室閉室中は、入館料大人500円/高大生300円/小中生200円で、常設展示室のみのご鑑賞となります。ご了承ください。(※11日(火)、18日(火)は休館日です。)

学芸員:中野

2012.12.03 年賀状

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。日に日に寒さが増してきましたが、体調など崩されていないでしょうか。 

あっという間に1年の最後の月を迎えてしまいました。クリスマスや年末年始の準備など心も体もばたばたしてしまう月ですが、12月初めのこの時期になると、そろそろ年賀状の準備をしなくては!という気になります。最近はパソコンやプリンターなどを使って、写真やイラストを組み合わせたキレイな年賀状が自宅で簡単にできてしまいますね。我が家の年賀状作成でも、毎年パソコンとプリンターが大活躍です。 

絵柄をプリントしたものに一言自筆で添えるのが私の最近の年賀状スタイルになっているのですが、今年はそれにプラスして、記念館のショップで販売しているゴム印を押して送ろうと思っています。というのも、以前友人からの年賀状に自作のハンコ(花)が押されていて、非常にかわいらしく思ったことがありました。記念館のショップのゴム印を見てそれを思い出し、年賀状にポンポンっと押してみるのも楽しいかな、と思ったのです。 

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今まさに年賀状を作っているという方、これから作るという方、また既に作ってしまってあとは投函だけという方、年賀状のちょっとしたアクセントに、当館のショップで販売しておりますゴム印はいかがでしょうか(オンラインでもお求めいただけます→コチラ)。

せっかくの年賀状作り、ぜひ楽しんでくださいませ!

さて、最後に記念館からのお知らせです。

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●展示替え作業のため、12月12日(水)~17日(月)は企画展示室を閉室いたします。この期間中は、入館料大人500円/高大生300円/小中生200円で、常設展示室のみのご鑑賞となります。ご了承ください。
※11日(火)、18日(火)は休館日です。

● 12月28日(金)~1月1日(火)は休館させていただきます。1月2日(水)、3日(木)は開館時間を10時~17時(最終入館16時30分)とさせていただきます。

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スタッフ:山岡

 

 

 

2012.11.26 愛媛とみかんの関係

来週にはいよいよ12月となります。
近頃市場には「みかん」が出回りはじめています。
愛媛の家庭では、みかん農家でもなくてもなんだかんだの方法で家にやってきた「みかん」がたくさんある、というのが冬の風物詩となっていることが多いと思います。みかんの他にも「いよかん」などを毎日何個も食べるのが当たり前、という生活を多くの愛媛県民が送っています。昔行っていた美容室では一定の時期に利用者に「みかん」を配るサービスをしていたのですが、「うちにもいっぱいあるけんええわい~」とお客さんに断られることも多い、と美容師さんが言っていたのが印象的で忘れられません。あと、高校の修学旅行で東京に行ったのですが、なぜか学校が食事の度にみかんジュースを準備して出してきたことも今となってはよい思い出です。

それにしても最近はみかんの品種改良がどんどん進み、美味しいみかんが増えてきました。「清見タンゴール」「紅まどんな」「せとか」などなど、いろいろなブランドみかんがあります。
これからちょうどそんな美味しい品種のみかんの出荷がどんどん始まります。毎年この時期はワクワクします。そして数か月後には食べ過ぎて飽きていたりします。愛媛に来られるみなさんには、時期のものですので、タイミングがあえば是非とも旬のみかんをお召し上がり頂きたいと思いますが、もしみかんの時期でなくても、「みかんジュース」が結構おすすめです。多くのメーカーから様々な品種を使ったみかんジュースが出ています。みかんの品種改良が進むと同時に、みかんジュースの味もどんどん進化している様子です。

当館でも厳選したみかんジュース「愛媛みかん」「清見タンゴール」「デコタンゴール」の3種類をお出ししていますがどれも人気です。3種類を飲み比べできる「飲み比べセット」も人気です。大変個人的な話では~、酸味と甘みのバランスが良い「清見タンゴール」のジュースが一番美味しい!と思うのですが、ぜひともみなさまもお好みの味を飲み比べて探して見て下さい。

 

飲み比べ.JPGスタッフ:川又

2012.11.19 私家版『中年を悟るとき』

読書の秋。本を探すときに、書店や図書館に足を運んで縁ある一冊を選ぶ、新聞の読書欄をチェックする、という従来の方法に加えて、最近では、SNSなどウェブサイトでたまたま目にしたレビューや引用で「これ読んでみたい」と興味をもって入手に至る、って方も多いと思います。

Twitter「伊丹十三の言葉」をご覧になって、「へぇ、伊丹さんの映画だけじゃなくて本も面白そう」と感じてくださる方もいらっしゃるだろうなぁ、そうだと嬉しいなぁ、なんて想像もしていますけど、投稿の中にときどき「訳者あとがき」というのがあることにお気付きでしょうか?
そうです、伊丹さんは、エッセイ・対談集・映画撮影日記のほかに、翻訳もものしているのです。

【伊丹十三の翻訳書一覧】
 マーナ・デイヴィス『ポテト・ブック』1976年
 ウイリアム・サローヤン『パパ・ユーア クレイジー』1979年
 マイク・マグレディ『主夫と生活』1983年
 ピーター・シェーファー『ザ・ロイヤル・ハント・オブ・ザ・サン』1985年
 ジャンヌ・ハンソン『中年を悟るとき』1996年

数は多くありませんが、小説あり戯曲ありノンフィクションもあり、とジャンルは多彩ですし、翻訳の方向性も、伊丹さんらしい洒脱系オトボケ系あり、「西欧人の自我の確立をあらわすために人称代名詞を省略しない! 『達意の日本語』を捨てる!」という気合十分系あり、と原書のテイストによって練られています。
それらの翻訳書の「訳者あとがき」には、もちろん、伊丹節がバッチリとしたためられていますから、「伊丹十三の書き物」としても面白いのです。Twitterをやるからには、これをお届けしないテはありませんよね。

そんな「訳者あとがき」シリーズのうちでも、思わず納得、不覚にもプププ、「私にも覚えがあるワ」というところをくすぐって楽しませてくれるのは、何と言っても『中年を悟るとき』のもの。

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【表紙からしてプププとなってしまいます】

さてその訳者あとがきの一部をご紹介いたしますと——

・朝起きたとき、すでにして疲れている。
・残った歯を一生懸命磨く。
・ほどよく飲む、という境地にはいまだ到っていない。
・十年先にわが家を建てる計画なんぞ聞きたくもない。
・昔あんなに面白かったあの映画が、今見直してみるとちっとも面白くない。
・昔ちっとも面白くなかったあの映画が、今見てみると実に面白い(ただし、こんなことは実に希です)。
・「エート、ホラ、ホラ、あの俳優なんてったっけ」。映画の話の半分はこれだ。
・木や花の名前は結構知っている。
・クイズに漢字の問題が出ると、大いなる優越感を持って見る。
・「こんな社会間違ってる」と思っているうちに、その「こんな社会」を息子たちに残す側になってしまった。
・年を取ったらいい顔になるはずだったんだが。
・楽しいうちに死にたい。

「これがあとがきなの?」と不思議にお思いになる方もいらっしゃるでしょうが、これは伊丹的・中年を悟るとき。私家版なのです。

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【帯も思わず載せちゃいます】

『中年を悟るとき』は、1991年にジャンヌ・ハンソンが発表した"You knou you're grown up when.... "の日本語訳で、訳文を伊丹十三、イラストを南伸坊さんが担当し、1996年に飛鳥新社から発行されました。(伊丹さんのところで1年、南さんのところで2年、滞っていたらしいですヨ。)「俺もオトナになったもんだなぁ」、「ワタシも老けたものねぇ」と思うときのことが、チョットの哀しさと大いなる味わい深さをこめた108の短文であらわされています。
その訳者あとがきには「この本のさらなる楽しみ方」がこんな風に書かれていまして——

 この本をどのように楽しむかは読者の自由だが(速読術で読めば三分で読めてしまう)、トイレに置く、医者の待合い室に置く、ページを切り取って年賀状に使う、などの正統的な使い方のほかに、
(一)私家版を作る。
(二)それが高じてインターネット上に私家版のホームページを開設し、日本中の中年から投稿を募る。
(三)投稿が山のように集まる。
(四)それを飛鳥新社が本にしようとする。
(五)原稿が伸坊さんに回され、再びそこでいつまでも滞在する。
 などの展開も考えられる。
 それでは手始めに、以下、私の私家版を即席で捻り出しておこう。


——というわけで、これに続くかたちで、上のような伊丹さんの「私家版」が並んでいるのですね。

「それが高じてインターネット上に私家版のホームページを開設し、日本中の中年から投稿を募る」......ふむ、これ、今ならTwitterのハッシュタグ機能でやれそうですよね。楽しそう!
今度「#中年を悟るとき」で遊んでみませんか?
(註:Twitterでは、「# キーワード」を入れて投稿すると、同じキーワードを持つツイートを検索して一覧表示できる機能があります。「# キーワード」をハッシュタグと言います。)

というわけで、来るべき「中年を悟るとき祭り」に備えて、ワタシも伊丹さんよろしく私家版を考えてみました。

・毛染めのテレビCMを見つめる自分の視線、いつの頃からかかなりの熱を帯びている。ジットリ。(まだ買ったことはありません。)
・歯に何か挟まったらしいのを確認するつもりで鏡の前で「ニッ」とやったら、歯よりも歯茎の衰えの酷さに目が行き落ち込む。
・自転車ヨロヨロ運転のお年寄りを「危ないなぁ」という目で見ている自分が何もないところで転倒する。
・自分の生まれ年以降の作品や出来事を「わりと最近のもの」に分類してきた、その妙な「自分内基準」の見直しに迫られている。(昭和も遠くなりにけり。)
・「糖尿病になるぞ」と自分に言い聞かせると無駄食いを我慢できる。
・「便りがないのは元気な証拠」というのは20代までだなぁ。(友人と久し振りに連絡を取ると、みんな何かしらの病、それも結構な大病にかかっている。)
・「イケメンには興味ないけど男前には合掌したい」という思いが年々強くなる。(例えば田宮二郎)
・勝新や健さんのかっこよさが判ってきた自分がちょっと嬉しい。
・オバちゃんを「お姉様」、「お姉さん」と呼ぶ。
・友人の子供を「日本の宝」と言ってしまう。
・もはや運転免許を取れる気がしない。
・数限りない後悔のうちひとつあげるとすると、学生時代に日本の古典文学をひととおり読んでおかなかったこと、かな。
・とはいえ、「まだ手遅れではない、いろいろと」と思っている。(ゆえに余裕こいているところもあり。)

......えー、キリがないので今日はこの辺で。
みなさんも「私家版・中年を悟るとき」の楽しさをぜひ。
学芸員:中野

2012.11.12 もうすぐ冬

記念館便りをご覧の皆さま、はじめまして。この度新しくスタッフに加わりました山岡と申します。早く一人前になるべく、先輩スタッフの方々に助けられながら日々奮闘しております。どうぞよろしくお願いいたします。

さて、暦の上では冬を迎え、風も日に日に冷たくなってきました。現在は、中庭の桂の木も黄色い葉をたくさん付けていますが、これが全部落ちる頃には本格的な寒さがやってくるのかなと思います。

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寒くなってくると、温かい食べ物や飲み物が恋しくなりますね。体が冷えると気持ちまで縮こまってしまいがちですので、温かいものをおなかに入れながら、寒い季節を乗り切りたいものです。

当館のカフェタンポポにも、温かい飲み物を色々ご用意しております。特にこれからの季節、ホットコーヒーや紅茶などの定番メニューに加え、手作りのオリジナルしょうがシロップを使った飲み物がおすすめです。写真はそのしょうがシロップを使ったメニューのひとつ、「十三饅頭としょうが湯セット」です。

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 飲むとおなかから「じぃん」と温まる感じがします。私が家で飲んでいるインスタントのしょうが湯ももちろん体が温まりますが、当館のしょうが湯はその「じぃん」の程度が段違いで、さすが手作りは違うなぁと非常に感動しました。記念館にお越しの際は、ぜひカフェタンポポにお立ち寄りください。

スタッフ:山岡

 

2012.11.05 一期一会

記念館だよりをご覧のみなさま、こんにちは!

日に日に寒くなり日が暮れるのが早くなりましたね。秋の夜長、みなさんはどのようにお過ごしですか?読書、DVD鑑賞など様々だと思いますが、私は今、一日一ヵ所掃除に取り組んでいます。掃除が苦手でなかなか片づけられない性格に加え、子供が激しく散らかすので部屋は荒れる一方でした。これじゃいかんと思い、一日一ヵ所掃除を始めました。

一気にやると嫌になるので、今日は洗面所だけ、今日は台所だけと決め少しづつ掃除しています。いつも鼻歌を歌いながら楽しい雰囲気を作ってやっているのですが、それを見ていた散らかし番長の娘も楽しそうに見えたのか一緒になって歌を歌いながらお片付けできるようになってきました。Before-Afterの画像を入れようと思いましたが、Beforeをみるとびっくりするといけないので控えさせていただきます。

さて、「一期一会」という言葉がありますが、当館で働いていますと一期一会の出会いが多くあります。辞書を引いてみますと、一生に一度の出会い、この機会は二度とないかもしれないと思い誠心誠意相手に尽くす、などというような事が書かれていました。

私自身、今まで出会ってきた友人にもお客様にも心の記憶に残してもらえるように接するよう心掛けています。残っているかは定かではありませんが、その時その時を後悔しないように出会いを大切にし、伊丹十三記念館に来てよかったと思っていただけるとうれしく思います。お客様との会話はとても楽しく、いろいろと勉強になることも多々あります。開館して5年になりますが、一度しか会ったことのないお客様との会話を今でも覚えていたり、あの方はお元気かなと思い出したりします。そんな風に私のことも思い出していただけると幸せだな~と思います♪

これからもたくさんの出会いが待っていると思いますが、お互いが出会えてよかったと思えるような出会いになればいいなと思います。

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IMG_7197.JPG IMG_7205.JPG スタッフ:木山

2012.10.29 「遠くへ行きたい」と伊丹十三のテレビ制作

すっかり秋です。旅行したくなるような、知らない町でも歩いてみたくなるような季節です。
知らない町を歩いてみたいと言えば、昨日28日の日曜日、伊丹十三記念館は日本テレビ系列の人気番組「遠くへ行きたい」で取り上げられました。
伊丹十三のことが大好きだという俳優の大浦 龍宇一さんとその息子さんがご来館され、館内を熱心にご覧くださいました。

さて、「遠くへ行きたい」と言えば、伊丹十三も1971年、30代後半の頃からレポーターとしてよく出演したテレビ番組です。映画監督になる10年以上前ですが、当時伊丹十三はテレビの可能性と面白さに目覚め、出演者であることにとどまらない、製作スタッフの一員と言えるような形で番組作りに携わっていったようです。
その様子を伺える本人の記述がいくつかあります。例えば、

「遠くへ行きたい」という旅番組をやっていたころ、スタッフを画面に出そうとしたことが何度もある。/物を作る人間のさまが全身に滲み出ているのであって、これを番組にとりこまぬ法はない。/「遠くへ行きたい」のスタッフたちが、カメラを向けられても平然として仕事を続けられるようになるまでは、一年以上もかかったろうか。
 そうして、スタッフの「出演」は、タレントやディレクターやスタッフの間に介在する、仕事場におけるカースト制を内部からぶち破って新しい人間関係を作り上げるのに大きな力を持ったし、それは、必ずや番組のメッセージとして見る人に伝わったと、私は信じているのである。

著書「女たちよ!男たちよ!子供たちよ!−(イチカメ)」一部抜粋

出演している芸能人の意見とは思えませんよね。この他にもテレビ制作に関して意見を述べている記述があります。

 テレビの仕事の特質は、みんなが横一線になって、同時に走るところにある。特にドキュメンタリーの仕事はそうである。レポーターもカメラマンも演出も録音も、各各、自分の責任と力量と判断において同時に走っている時、最も充実した仕事ができるように思われる。

著書「女たちよ!男たちよ!子供たちよ!−(スタッフ)」一部抜粋 

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【画像:著書「女たちよ!男たちよ!子供たちよ!」】

仕事全般に言えることで納得できる部分も大きいですね。どれほど真剣にテレビ番組の制作に取り組んでいたかがよくわかる文章です。

テレビ制作以外にもCM作成や様々なことにチャレンジした伊丹十三ですが、映画監督として成功した後のインタビューの中で、それまで自分が取り組んできた様々なことは、結果として全て映画監督になるための準備となった、ということを語っています。
映画監督になったのが、51歳ですから、割と大人になってからのチャレンジにも関わらず、第1作目の「お葬式」から大ヒットを飛ばしたのも、様々なことに興味を抱き、どの道でもプロとして真剣に取り組んできた結果だと思うと、納得ですね。

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【画像:カフェの「しょうが紅茶」。からだを温める効果のある生姜のメニューが人気です】

スタッフ:川又

2012.10.22 周防正行監督最新作『終の信託』と監督のお話

10月27日(土)、周防正行監督の最新作『終の信託(ついのしんたく)』が公開されます。

周防監督には、伊丹十三賞の選考委員を、創設以来、南伸坊さん・中村好文さん・平松洋子さんとともにお引き受けいただいて、私ども、大変お世話になっております。
さらに、ご存知の方も大勢いらっしゃると思いますが、伊丹十三監督作品の『マルサの女』(1987年)、『マルサの女2』(1988年)のメイキングビデオは、周防さんが監督してくださいました。(映画本編が劇場で公開される前にテレビ放送され、のちにビデオソフト化もされました。現在は、「伊丹十三FILM COLLECTION Blu-ray BOX Ⅱ」に封入されている特典ディスクでご鑑賞いただけます。)
そのようなありがたきご縁のゆえに、去る10月2日(火)、松山市のシネマサンシャイン衣山で開催された試写会とティーチインへお邪魔してまいりましたので、以下ご報告申しあげます。

 

tsuino_shintaku.jpgあらすじやキャスト、監督からのコメントなどはぜひこちらでご覧ください

 

『終の信託』は、自分の命の終わり方を託す人、引き受ける人、託され引き受けられたことを出来合いの秤に乗せずにはいられない人、のお話です。

公開前に私のドヘタな感想を申しあげていいものか悩みますが...

とても静かで、緊張する映画でした。
「静か」と言っても穏やかというわけではなく、音楽は最小限に抑えられていて、周防義和さんの音楽と、物語のモチーフのひとつにもなっている「私のお父さん」(プッチーニのオペラ『ジャンニ・スキッキ』の有名なアリアです)が効果的に用いられている以外、聞こえるのは登場人物の会話。言葉の合間の彼らの息遣い、眼差し、彼らが身を置く空間に充満している気の音が聞こえて匂いも漂ってきそうに思えたほどです。
ですから、「緊張する」と言いましても、嫌な緊張感ではなく(周防監督がそんなことなさるわけはありませんね)、スリルとサスペンス!というような緊張感でもなく、映画の世界に集中することで「この映画に応えられる観客でありたい」と思うような、心地よい緊張感でした。
上映時間は2時間24分、と長い作品なのですが、「体感時間1時間半」(監督談)はホントでした。

それで、拝見している最中、「この感じは何かに似ているな」と——ああ、そうです、大学生の頃、名匠と呼ばれる監督たちの映画に出会って、所謂「昔の」日本映画の中の、人と言葉と空間の絶妙な間にある(らしい)ものに強く惹かれたときの感じですね、それを思い出して、
「そうか、映画を観る喜びって、こういうものだった」
と嬉しく感じたりもしました。

そんなふうに拝見しましたので、上映の後のティーチインで、
「朔立木さんの小説を読んだとき、『この作品の空気、綾乃が経験する局面、空間の空気を映画で生み出したい』と思った」
と監督がおっしゃるのを聞いて、大いに納得、謎が解けたような思いでした。
(とはいえ、ごく少人数の登場人物と空間で映画を一本作るというのは大変なことだと思います。「原作の"世界観"を映画にしたい」と言って作られる作品の多くが音楽や躍動的なビジュアルを多用している...もちろん映画ですからそれも大いに結構ですし、素晴らしい作品もあるのですが...そういう作品であふれかえっている状況に、われわれ観客は甘やかされてもきたし、ちょっと誤魔化されてもいて、ちょっと疲れてきてたよね、と改めて感じました。)

ティーチインでは、この他に、客席からの質問により


・原作を読んでいるときから、主人公は草刈さんの姿で「見えて」いた(医師という責任ある仕事を続けてきた主人公も、バレリーナの道を歩んできた草刈さんも、無理をしてでも強気でいなければならないことが多く、弱みをみせない一方で孤独も抱えているであろう点で共通している)こと

・間合いや声量などの演技は役者さんにお任せし、監督としては「それをどう撮るか」に苦心したこと。監督自らカメラのポジションを探って決めたカットもある。が、カメラマンが「もう一度」と別の撮り方を提案したときは必ずやってみる。撮影中に限らず、シナリオを書いているときも、スタッフからの意見は受け入れることにしている。(曰く「自分ひとりの力では映画は作れないと思っています」)

・鎮静剤の点滴量は、実際には...(ご鑑賞の際、ココ注目ですよ!)

・「管(チューブ)」というモチーフ(ハイ、ココも注目ですよ~!)
というような、作品と作品作りに関するお話から、

・どうして映画監督になったのか

・次回作は...

というお話もお聞かせくださいました。

「どうして映画監督になったのですか?」との質問(私の席から質問者の方の姿は見えなかったのですが、お声から察するに、10代の少年だったと思います)に、周防監督は丁寧にお答えくださいました。
「立教大学の仏文科に入学して、蓮見重彦さんの講義を受けたことがきっかけ(多くの映画人を輩出したことで有名な講義です)。でも、映画は『自分の哲学』のようなものを持っている立派な人が作るもので、自分が作ることになるとは思っていませんでした。大学を卒業するときに、『好きなことをやったら、失敗したとしてもその次は何でもできるだろう』と考えて、映画監督の高橋伴明さんがよく来るというお店で待ちぶせして、『助監督にしてください』と頼みこんで、5年間助監督をやりました。そうして、映画の世界が現実になったことで、『じゃあ、自分はどんな映画を作りたいか』と考えるようになったんです」と。

冗談混じりに「もし...僕が東大の仏文科に行っていたら、映画の世界には入っていなかったでしょうね」とおっしゃっていましたが、遠い場所から「何が」したいかと考えるのではなく、「現実」になる世界に身を置いてみて「どう」したいかを考えたことが出発点、というお話は、質問者の未来ある少年にも、今現在仕事を求めている人にも仕事をしている人にも、励みになるお言葉だったと思います。少年、いい質問をありがとう!

と、いうようなことを、私は手持ちの手帳にアタフタと書き留め、それを解読しつつこの記念館便りをしたためているわけなのですけれども、スワローズファンとしても有名な周防監督のお話をメモした手帳がはからずもタイガース的な表紙で、しかもそれを携えたままご挨拶してしまったことが監督に対してほんとうに申し訳なく...映画館を出てから気付き...「うぉ~! 私ったら何てことを!!(でも、虎ファンのワタシの誕生日に友人が贈ってくれたものですのでどうかどうかお赦しください!!)」と...
監督は、伊丹十三賞の選考委員をお務めくださっていることも、記念館のことも、ティーチインの冒頭でご紹介くださいましたのに...いつかお詫び申しあげたく思っております...
監督、これに懲りずに、ツバメさんたちとともに松山へまたお越しくださいね。

『終の信託』は、今週末10月27日(土)より日本全国で公開です。みなさまぜひご覧ください。

あ、最後にもうひとつ。
ティーチインの終わりに、監督から観客のみなさんへステキな宿題が出されました。
「お家に帰ったら『ジャンニ・スキッキ』の物語を、ぜひ、調べてみてください。どんな物語かを知ると、この『終の信託』のお話がもっと好きになります。僕も原作を読んだ後に調べてみて、いっそう好きになりました」。
これからご覧になる方も、ご鑑賞後には『ジャンニ・スキッキ』の物語を調べてみましょう。ご鑑賞後、ですよ。

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昨年ご来館くださったときの写真でスミマセン...
(試写会では写真が撮れなかったのです...)

 

●『終の信託』公式サイトはこちら
●最近の私の大好物「週刊周防正行」(インタビュー動画です)はこちら
 観るとますます周防ワールドのトリコに! でも噴き出し笑いにご注意を!

学芸員:中野

2012.10.15 パワースポット

記念館だよりをご覧のみなさま、こんにちわ!秋が深まってまいりましたね~。記念館ではこの季節になると何度も記念館だよりでお知らせしたように、桂の木から甘い香りが漂ってまいりました。特に朝は香りが強く、外の掃除をしながら思いきり息を吸い込むと甘くて幸せな気分になります。秋晴れの空を見ながら深呼吸しているととても気持ちよくて、この過ごしやすい季節がずっと続けばいいのにと思う反面、日が暮れるのが早くなるにつれ、さみしいというか切ない気持ちになったりします。  

涼しくなっておでかけしやすくなったせいか、ここのところ大きなバックを持ったご旅行の方が多くご来館くださいます。観光客の方によくおすすめのスポットはないですか?とご質問をうけますので今回は意外と知られていない私のおすすめの場所をご紹介させていただきます。

松山と言えば道後温泉が有名ですが、この道後温泉の脇に「玉の石」という石がございます。

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  「伊予国風土記」には、大国主命(おおくにぬしのみこと)が、重病の少彦名命(すくなひこのみこと)を助けようとして、大分の速見の温泉を引き湯あみさせたところ、不思議によみがえり、立ち上がった少彦名命が踏んだ石に足跡が残ったという伝承があります。写真のくぼみがその足跡でしょうか?

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 石の前にはこのような立札と柄杓があり、石に道後温泉の御湯をかけながら願い事を唱えると叶うと言われています。

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たまにお客様にご紹介するのですが、今まで道後温泉行ってたのに全然知らなかった~という方が多くあまり知られてないようですが道後温泉の北側にひっそりとありますので松山へお越しの際はぜひ、このパワースポットへ行ってみてはいかがでしょうか。

そしてそして、道後温泉まで行かれたらその向かいにあります一六本舗道後温泉本館前店へもぜひ!当館は建築関係の方も多くご来館くださいますが、このお店も伊丹十三記念館と同じく中村好文さんが設計されています。2階には伊丹十三記念館のミニギャラリーがございますのでそちらもお見逃しなく!

 

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           スタッフ:木山

 

 

    

 

2012.10.08 消火器の使い方

半年に一度行っている消防訓練でありますが、消防訓練のたびに人間というのはすぐに忘れる生き物だと実感します。毎回「消火器の使い方」をすっかり忘れているのです。少人数の組織ですので、従業員全員が水の入った練習用の消火器を使わせてもらっていますが、毎度よく覚えていません。

大事なことですのでみなさんも絶対覚えておいたほうがよいですよ。

まず、消火器のてっぺんにある、黄色のピンを抜きます。

ホースを外してホースを火の出ているところに向けます。

IMG_6990.JPG上のレバーを押すと薬剤が出てきます。

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こんな簡単なことを忘れてしまうとは!

他に教えて頂いたことは、出てくる薬剤は結構勢いがあるのでホースを炎に直接向けると、炎が薬剤の下を伝ってきたり、炎が風圧で広がったりすることがあるそうなので、薬剤は火元からちょっと離れたところから箒で掃くように近づいていくのがよいそうです。

使い方は忘れてもこういったエピソードは結構印象深くて覚えていられますね。ちなみに使い方は消火器本体に書いてありましたのでイザという時はご覧ください。

また、印象深かった話としては、あまりに古い消火器を使用すると勢いで底が抜けて、その底で大けがをすることがあるそうで、定期的に点検をすべきだというお話しです。古い消火器をお持ちの方はお気を付け下さい。

それにしても消防士って大変なお仕事ですね。体力的にも精神的にも、想像を絶するような「キツイ」ことも多いでしょう。夜中もお盆も正月も、火事が起こる可能性も具合が悪くなる人が出てくる可能性も平日の昼間と同じわけですから、気が抜けないですね。

最後になりましたが、記念館も消防訓練を行う度に教えて頂いた知識を積み重ね、よりよい訓練ができるようになってきました。消火器の使い方もやっと今回で覚えました。
「備えあれば憂いなし」ということでみなさんもどうぞイザという時必要な「もの」や「知識」をどんどんお備え下さい!

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スタッフ:川又

 

2012.10.01 中村好文さんの展覧会

この記念館に勤めておりますと、伊丹さんのファンの方にはもちろんですが、「(記念館を設計してくださった)中村好文さんのファンなのではるばる来ました」とおっしゃる方に実にたくさん出会います。

そういった方は、どなたももれなく、それはもう嬉しそうに記念館の空間を眺めわたし、「これこれ」という表情でカウンターや展示室のハンドルや回廊のベンチやカフェのお釣銭置きのくぼみを撫でさすってニコニコなさっています。記念館の空気を心行くまで吸っていらっしゃるような、まさしく「満喫」のご様子を拝見しておりますと、「あ~、笑顔の巡礼~!」と思うのです。
笑顔で行ける聖地(自分の職場を「聖地」というのも気が引けますけど...)って、イイですよね。

とまぁこのように、人々をニッコリ呼吸法の境地にいざなう建築家・中村好文さんから、ある日おたよりをいただきました。中村さんの展覧会がこの秋各地で開催されるそうです。
中村さんを求めてここへたどり着いた方のために、お知らせいたしますね。


『中村好文の家具デザイン 1981-2012』

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ギャラリーやまほん(三重県伊賀市)
2012 年10月6日(土)~28日(日)
火曜日休廊 / 11時~17時30分
詳しくはコチラ


・中村さん在廊日
10月 6日(土)、7日(日)
・トークイベント『家具に魅せられて』
あやま文化センター / 10月7日(日)14時~ / 入場料500円 / 要予約

*中村さんが30年にわたって作りつづけてきた家具の代表作が集結。思わず触りたくなる家具ばかりに違いありません。これは...ファンにはたまらない展覧会ですね。

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『生活工芸プロジェクト 繋ぐ力 ideas for next Japan』

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金沢21世紀美術館 市民ギャラリーA(石川県金沢市)
2012年10月10日(水)~21(日)
10時~18時(最終日は17時まで)
入場料:無料
詳しくはコチラ


出展者:ギャルリ百草(安藤雅信 安藤明子)、クウネル、Zakka、高橋みどり、D&DEPARTMENT(ナガオカケンメイ)、中村好文、古道具坂田(坂田和實)、山田節子

・トークリレー 中村好文×辻和美、ナガオカケンメイ×山田節子、坂田和實×安藤雅信
 金沢21世紀美術館シアター21 / 10月10日(水)18時~ / 入場料2,000円 / 要予約

*出展者のお名前を見るだけで、豪華さと多様さに「どんな展示なの!?」と想像が膨らみますねぇ。「いつもモノと人との間に入っている方々」=「繋ぎ手」について掘り下げ、考え方に迫る展示だそうです。ナルホド!(ちなみに、画像は中村さんが施主のために作る階段の手すりのサンプルで、記念館のもありますよ!)
会場のすぐ側に新しくオープンする「モノトヒト」のショップとギャラリーも中村さんのデザインです。併せてどうぞ!

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『瀬戸内生活工芸祭2012』

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玉藻公園、女木島(香川県高松市)
2012 年11月23日(祝•金)11時~16時、24日(土)9時~16時
玉藻公園会場500円 / 女木島会場1,000円(フェリー代込)
詳しくはコチラ


*こちらは、全国公募で選ばれた88名の作家の作品が玉藻公園で販売されるクラフトフェア。中村さんの作品は選考委員の展示販売ブースに出展されます。フェリーですぐに渡れる女木島でも、招待作家の展示やお茶会などが行われるそうです。

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中村さんファンの方はさっそく「どう巡ろうかしら!」と悩んだり大蔵省にご相談なさったりしていることと思います。みっつも並べてご紹介してすみません...。ア、もちろん、当館にもぜひお越しくださいませ。スタッフ一同お待ちしております。

学芸員:中野

2012.09.24 消防訓練

記念館だよりをご覧のみなさま、こんにちわ~!今年も食欲の秋がきましたね~。おいしいものいっぱい食べてますか~?

私は先日お土産でいただいた「ニンニク醤油バター」にハマっていまして、これがなんにでも合うんですよ!ごはんにかけてもおいしいし、スパゲティにいれてもラーメンにいれてもとってもおいしくて冷奴とかにも合うんです。にんにくのみじん切りとミンチのようなものがまざっていて、これだけ食べたりもしています。

さてさて、本題ですが先日9月19日に消防訓練を行いました。朝早くから松山南消防署の隊員のみなさんが熱心にご指導して下さいました。数回目という事もありスタッフも少し慣れた様子でしたが、今回は地震が起こりそれが原因で火災が起こるという前回とは内容の違う訓練でしたので、緊張感もありつつ始まりました。

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当館は火は一切使わないので火災が起こる確率は低いのですが、地震はいつくるかわからないので怖いですよね。訓練の時は冷静にできてもいざ本当の火事や地震がおこってしまうとパニックになって落ち着いた行動ができなくなってしまいそうです。そうならない為にも訓練を繰り返し、いざという時の準備をしておかなければなりません。

受付、カフェ、2階にわかれそれぞれ役割分担をし訓練した後、実際に消火器を使い水を出して練習しました。

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6月に防火管理者の講習会に参加させていただき、いろいろ勉強させていただきました。一瞬の判断の違いで命が助かったり大事に至らなかったりもするので、知識をつける事も大事だと思いました。

ここのところ数回松山南消防署に訪問させていただいたのですが、いつも汗だくになって本番さながらの訓練を真剣に取り組んでおられました。市民を守る為、こんなにも一生懸命訓練してくれているんだと尊敬の眼差しで見ていました。忙しい時間を割いて指導に来て下さった松山南消防署の隊員のみなさまにこの場を借りてお礼申しあげたいと思います。

この経験が生かされる事が無いことを祈りつつ、いざという時は冷静に落ち着いて行動できるように日頃から知識を身につけていきたいと思います。

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スタッフ:木山

2012.09.17 Caféタンポポのホットコーヒー

IMG_6954.JPG記念館カフェタンポポでお出ししているホットコーヒーは、オーダーが入り次第その都度スタッフがドリップしています。コーヒー豆も挽き立てのものを使用していますので、香りもよく、とても人気です。

コーヒーの淹れ方も、コーヒー豆を購入している業者の方に教えていただいたり、インターネットや本で調べるなどして、スタッフでいろいろと研究いたしました。

 

インスタントコーヒーはドリップしたコーヒーとは別であるけれどとても美味しいと思いますが、たまにお店で飲むドリップされたコーヒーは「ん?」と思うことがあります。
淹れてから時間が経ちすぎている、濃すぎ、薄すぎ、などなど、理由は様
々です。

 

職場にカフェがあることで、挽き立ての豆で淹れたてのコーヒーを飲む機会が増えることで、「コーヒーの淹れ方による味の違い」って結構大きいんだ!ということを知りました。

豆の種類とかはさっぱりわかりませんが、コーヒーが「美味しい」か「美味しくない」か、ちょっとだけわかるようになったことは「大人になったなあ」と感じるポイントの一つであります。ちなみに、Caféタンポポのホットコーヒーはたまに飲むと「やっぱり美味しい!」と感じます。お客様からも「ミュージアムの中の喫茶店のコーヒーだからあんまり期待してなかったんだけど、美味しかったですよ」などとお声をかけていただくこともよくあります。

 

これから寒くなりますので、カフェで温かいお飲み物をご注文される方が増えるかと思います。Caféタンポポのホットコーヒーをぜひどうぞ。

 

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【周りにはお湯をかけない/最初に蒸らす/などなどルールがいろいろあります。】

 

スタッフ:川又

2012.09.10 2012秋のお知らせ

9月に入り、方々でおもしろい展覧会やイベントが開催されています。お休みは限られているというのに、アレもよさそう、コレも楽しそう、と目移りしてしまう、悩ましい季節ですね。

さて、我らが伊丹さんもこの秋アチコチに登場します。以下お知らせいたしますので、スケジュール帳のご用意を。ハイ、よろしいですか? では......


【京都編】京都に「愛媛の友だち」が遊びに行きます!

9月15日(土)~28日(金)、恵文社一乗寺店(京都市左京区)の生活館ミニギャラリーで開催される「愛媛の友だち」展に当館のグッズいろいろが参加いたします。京都で生まれ育った伊丹さんですから、「ホッホ」と喜んでいることでしょう。

この催しは「"友達の住んでいる場所"と京都を結ぼう」というご主旨のもと、恵文社一乗寺店さんとコトバヨネットさんが共同で企画されたもので、今回は愛媛県をご紹介とのこと。光栄にもお声掛けいただき、ミュージアムグッズを展示・販売していただくことになりました。


ehime_friends.JPG【当館から上洛するグッズ】
・ポストカードセット(伊丹十三イラストセット)
・マグネット(3種:スパゲッティの正しい食べ方、ミモザ、ダッグウッドの悦び)
・ゴム印(3種:新しい理髪師、二日酔いの虫、猫)
・手拭い(2種:黒色、空色捺染手拭い)


当館のグッズの他には、小野セツローさん、中田窯、梅山釜、宮内大志さん、佐々木智也さん、畦地梅太郎さん(あとりえ・う)、吉井タオル、aron koron soron、瀬戸内工芸、N工所の、触りたい手に取りたい使いたい、毎日眺めて暮したい、つまり「ワタシのものにしたーい!」と思わずにはいられない、イイものが集うようです。

*詳しくはこちらでどうぞ → 恵文社一乗寺店ブログ「愛媛の友だち展」紹介

例えば、遠くに住んでいるお友だちと久しぶりに会ったとします。お友だちからもらったお土産や、何気なく使っているものがとてもステキで、それがその人の町のものだと知ったら、「アンタ、ええとこに住んでるねんなぁ」とチョット羨ましくなる----と、いうようなことはみなさんもご経験おありだと思いますが、「愛媛の友だち」展はまさにそんな感じ。

地図だとさして広くなさそうに見える愛媛ですが、いざ旅行でまわろうとすると案外と広うございます。そんな愛媛のイイものが一箇所に集合していて、そこへ行けば出会うことができる。これってすごいことなのでは!(集める方はさぞかし大変だったことと思いますが...)
関西にお住まいの方、京都へいらっしゃるご予定の方、"愛媛の友だち"の世界を覗きに行ってください。

<このイベントに携わっているみなさん>
・恵文社一乗寺店(京都市左京区) http://www.keibunsha-books.com/
 ※書店フロアでは、当館のガイドブック、伊丹十三のエッセイも扱ってくださっています。
・コトバヨネット(京都市左京区) http://kotobayo.tv/
 ※古書と雑貨と松山の不耕起・無農薬柑橘のお店。恵文社と併せて巡りたいですね。
・BRIDGE(愛媛県松山市) http://www.bridge-dogo.com/
 ※コトバヨネットさんのお友だちとして、愛媛のよきものをセレクトなさった松山の雑貨屋さん。
  道後公園のすぐそばなので、松山の方も旅のお方もぜひ。


【東京編】監督作品全部上映!「再発見!伊丹十三の映画」


それから、9月15日(土)~28日(金)、アラ、なんと「愛媛の友だち」展とまったく同じですね、東京の映画館・オーディトリウム渋谷では、伊丹十三の監督作品が上映されます。

*詳しくはこちらでどうぞ → オーディトリウム渋谷「再発見!伊丹十三の映画」特集ページ

昨年、東京で開かれた回顧上映「JUZO AGAIN」は3日間で各作品1回ずつの上映でしたから、お好きな作品の上映時間にご都合のあわなかった方もいらっしゃったことと思います。
が、今回はタップリ2週間! 各作品5~7回上映されるそうなので、じっくり予定を立てられますね。10作全部を観ることも、お気に入りの作品を繰り返し観ることだってできちゃいます。(ワタシは2週間オーディトリウム渋谷に「住み」たいです...!)


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【イタミワールドてんこ盛りのチラシです】


一般1,400円、学生・シニア1,200円の当日券のほか、お得な回数券もあるそうです(3回3,300円 / 5回5,000円、複数人でのご使用も可だなんて太っ腹な回数券!)。ぜひ伊丹映画をスクリーンでご覧ください。


【全国編】ご自宅が伊丹十三劇場!

「そんなこと言われたって、京都も東京も遠くて行けないもん! ぶー!」という方にお勧めいたしますのが、日本映画専門チャンネルの『伊丹十三劇場』。

9月の「天皇の世紀」放送のあと、10月13日(土)からはアンコール放送が始まります。監督作品のほか、主演女優の宮本信子館長が伊丹映画を語りつくしたインタビュー、「新・13の顔を持つ男 その3『宣伝する人』伊丹十三」も放送されます。

監督作品アンコール放送
 「お葬式」初回放送は10月13日(土)23時~、「タンポポ」初回放送は10月20日(土)23時~
「新・13の顔を持つ男」
 初回放送は10月13日(土)25時09分~
宮本信子インタビュー
 10月6日(土)21時~「マルサの女」本編とともに放送されます

※日本映画専門チャンネルは申込みの必要な有料放送です。視聴方法などチャンネルに関する詳細情報はこちらをご覧ください。

日本全国の伊丹ファンの皆々様、どうぞくれぐれもお見逃しなく! 宮本館長のトークは、なななんと、お試し視聴放送期間! デジタル受信機をお持ちの方は「BS255ch」にチャンネルを合わせてみてください。「最初で最後」(本人談)だそうですヨ!


学芸員:中野

2012.09.03 いろんな虫

記念館だよりをご覧のみなさまこんにちは!夏も終わりに近づいてきましたが、いかがお過ごしですか?秋が近づくとなんだかさみしくなるのは私だけでしょうか。。。日が暮れるのも早くなるし損した気分になります。

さて、話は変わりますが、記念館の朝はクモの巣との戦いから始まります。毎日取っても取っても次の日にはまた同じ所に巣をはっています。なかなか根性のある虫ですね。水をかけたくらいでは全くくずれないしっかりした巣で、専用の棒を使ってクモの巣撤去に励んでいます。みんな生きていく為に必死なのにごめんねと思いながら、隅々までとっていきます。

 

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クモの巣チェックをしているといろいろな虫を発見します。今まで見たこともないような不思議なものや、知らずにさわってしまうと電気がはしったように痛くなる虫や、蟻のように小さいくせに刺されると赤くひろがり大変な思いをさせられた事もあります。みなさんもむやみに見たことのない虫にさわるのはやめましょうね。

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この緑の虫を私たち記念館スタッフはガチャピンと呼んでますが、さわると痛いので気を付けてください。

まだまだ見たことのない虫によく遭遇するのですが、写真がないのが残念です。

伊丹十三さんは中学1年生の時に昆虫図鑑並みにそれはすごい昆虫観察ノートを描いています。お客様もよく驚いていますが、中学1年生が描いたものとは思えないほど細密です。

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他の日記などの文章を見ても子供とは思えないしっかりとした内容になっています。大人の私でもかなわない天才児は当時お友達と話は合ったのでしょうか?

ぜひ驚きの昆虫観察ノートをご覧になりにいらしてくださいませ。

 

スタッフ:木山

2012.08.27 スパゲッティのおいしい召し上がり方

「アル・デンテ」という言葉を一番初めに日本に伝えたのは伊丹十三、という説があるそうです。

エッセイ「女たちよ!」の中に「スパゲッティのおいしい召し上がり方」という話があります。まずこのエッセイで伊丹十三は「スパゲッティは饂飩ではない」と、強く訴えています。
本人曰く当時の日本のレストランで食べるスパゲッティはほとんど例外なく、「茹ですぎてふわふわ」になってしまっていたそうです。

ここで伊丹十三は、イタリア人の理想のスパゲッティの茹で加減である「アル・デンテ」の紹介をしています。

イタリー人はスパゲッティの理想の茹で加減を「アル・デンテ」という言葉で表現する。アル・デンテとは「歯に」ということであって、つまりスパゲッティを茹でながら、茹で加減を見るために一本取り出して前歯で噛んでみる。
 硬すぎたり芯があっては問題にならないが、軟くなる一歩手前の、前歯でスコッと噛み切る時にまだかすかな抵抗が感じられる、この状態をアル・デンテと呼ぶのであります。

次に、アル・デンテに麺を茹でる方法を詳しく述べていますのでそのままご紹介いたします。

一、 イタリー製のスパゲッティを買う。五十センチの長さのもの一ポンドが百五十円くらいだろう。  これが約四人分から六人分である。
一、 スパゲッティはなるべく大量の水で茹でるのが好ましい。大きなシチュー鍋でも金盥でもよろしい。大きな容れ物で大量のお湯を沸すこと。これはどの麺類にも共通していえることだと思う。つまり水が少いと麺から出た澱粉でお湯が濁って、茹で上がりがねばねばするのですね。イタリーのスパゲッティの包み紙には一ポンドのスパゲッティに八リットルの水、と記されている。八リットルとは一升壜約四本分にあたる。
一、 塩を一摑み入れる。標準をいうなら一ポンドのスパゲッティに対して約四十グラムとでもいおうか。食卓塩の一瓶が百グラムだからね。あれでおよその見当がつくはずだ。
一、 煮えたぎっているお湯の中へスパゲッティを長いままで入れる。
一、 アル・デンテに茹で上がったら、
一、 手早くお湯を切り、
一、 バターを、左様、一ポンドのスパゲッティに対して約四分の一ポンドのバターを、湯気の立っているスパゲッティの中へほうりこんで手早くかきまわすと、スパゲッティもまだ熱い、鍋もまだ熱いからたちまち溶けるんじゃないの。


~略~

このエッセイを書いたのは伊丹十三が30代の頃、昭和30年代後半から40年代前半のことでしょうか。
今では割りと知られたスパゲッティの茹で方も、当時はとても新しい情報だったみたいですね。今でも「若い頃読んで、衝撃を受けた」というご感想を記念館で教えて下さる方がたくさんいらっしゃいます。
個人的には水八リットルのことをわざわざ「一升壜約四本分にあたる。」と書いてあるのが時代を感じるところです。

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【画像:伊丹十三が描いたイラストで作ったマグネット。右はスパゲッティの水切り器のイラスト。】


スタッフ:川又

2012.08.20 『天皇の世紀』視聴レポート

日本映画専門チャンネル「伊丹十三劇場」での『天皇の世紀』、ご覧になられましたか? 本編も特別番組も、面白かったですねぇ。

グっと来たところ、衝撃を受けたところ、思わず笑っちゃったところ、深々と考えさせられたところはいくつもありましたが、当館と関連のあるエピソードを、最終回の第26話からひとつご紹介します。

滅多にサインをなさらない、ほとんどの場合は丁重にお断りなさったという大佛次郎先生(原作者)が、生前、熊本のロシア料理店のマダムに頼まれて、珍しく色紙をお書きになったことがあるそうです。「弟が『天皇の世紀』を熱心に読んでおりますので、サインをいただけませんでしょうか」とお願いされて大佛先生が書かれた言葉は、連載担当記者の櫛田氏の回想によれば、このようなものだったそうです。

どの花も
それぞれの
願いがあって
咲く

酔 大佛次郎

私はハっとしました。
実は、同じ文句を伊丹さんが書いた色紙が記念館に所蔵されているのです。


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この色紙を初めて見たとき、「いい言葉だけど、何だか伊丹さんのイメージとちょっと違うような」なんて思っていたのですが、元は大佛先生のサインだったのです。

「『天皇の世紀』撮影中、伊丹さんは大佛先生の原作本を片時も手放さなかった」という逸話も特別番組で紹介されていましたし、伊丹さん、大佛先生を心から敬愛していたんですね。

「熊本のロシア料理店を訪れてみたけれど、マダムは前年の5月に急性白血病で亡くなっていて色紙は行方知れず」と、このエピソードは結ばれていました。
色紙はその後も「発見」されていないのでしょうか......大佛先生の色紙も拝見してみたいですねぇ。できることなら、二人の色紙を並べて眺めてみたいですねぇ。

伊丹さん版サインのほうは、伊丹さんが大佛先生から受けた影響の浅からぬことを示す資料として、いつかお客様のお目にかけたいと思います。


ところで。(※ここから先は無駄話でございます)

8月13日(月)の放送初日、『天皇の世紀』「夜の部」を鑑賞するために、ワタクシ、鼻息を荒げて自宅のテレビの前に陣取っておりました。

本編開始前、特別番組のスリリングな構成に「興奮メーター」の針は早くも振り切れ、本編第1話「福井の夜」に続いて第2話「宵山の動乱」へ快調に突入、というところで、窓の外で雷鳴が......あら、稲光まで......嫌な予感......ほどなくして雨が......あっという間に土砂降り......あ、画像が乱れた......音声が途切れた......と思った直後、予感的中、画面は真っ暗闇に......しんとなった部屋に響く激しい雨音............

ええ、泣きましたとも。第2話の途中、嵐電に乗りながら京都の町並みについて説明する伊丹さんの姿が画面に映し出されてからも、しばらくの間はさめざめと泣きましたとも。よりにもよって『天皇の世紀』が40年ぶりに放送されているときに雷雨なんて! 神様、あんまりです! このために加入したのに~!(いえ、「昼の部」を録画しておかなかった自分が悪いのですケド......)

ま、そんなこともございましたが、翌日記念館で館長代行とカワマタさんに話したら結構ウケてくれたので、幾分かは元が取れたような気がします。悪天候で映像が乱れたり映らなくなったりするのが衛星放送というものですしね。これから加入される方も、その辺はよーくご了承ください。


ロンドンオリンピック、高校野球、さらに『天皇の世紀』一挙放送、ということで、我が家のオンボロテレビおよびレコーダーも私の心身も、耐久レースのような日々でした。
『天皇の世紀』をひととおり見終えて、すばらしい作品を満喫した充足感と、何だか妙に燃え尽きた感があります。「ああ、夏が終わったな」と。


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【『天皇の世紀』最終回を見届けた後、ちょっとお出かけしてきました】


とはいえ残暑は続きます。そして、そろそろ夏の疲れが出る頃。
皆様、引き続きシッカリとご自愛くださいませ。

・・・・・・・・・・

『天皇の世紀』再放送予定のお知らせ

ドキュメンタリー版 : 日本映画専門チャンネル / 9月18日(火)から
ドラマ版 : 時代劇専門チャンネル / 本日8月20日(月)からと、9月16日(日)から

ワタクシのように予想外の事態で悲しい思いをなさった方も、まるまる見逃した方も、再放送をぜひ。

※ドキュメンタリー版とドラマ版で放送チャンネルが異なる点、どちらも契約の必要な有料チャンネルである点、何卒ご了承くださいませ。

・・・・・・・・・・

もひとつ告知です!

伊丹十三監督作品『タンポポ』が「山田洋二監督が選んだ日本の名作100選喜劇編」(BSプレミアム)で放送されます。8月21日(火) 21時から、お見逃しなく!


学芸員:中野

2012.08.13 封緘(ふうかん)

封緘(ふうかん)ってご存知ですか。
封筒の封じ目によく「緘」と押してありますよね。
あれのことです。

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記念館の取引先で面白い封緘を押して、郵便物を送ってくれる会社があります。

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「封じた感」がよくでていますね。
遊び心があって、その会社らしさがよく出ていて素敵です。

記念館でも一風変わった封緘印を使っています。
こちらです。

IMG_6737.JPG映画撮影の際使用する「カチンコ」のイラストで作ったオリジナルのゴム印です。
もちろん、伊丹さんの描いたイラストです。

他のゴム印も押してみました。
こんな封緘で封書を受け取ったら、なんだかちょっと和みそうですね。

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伊丹十三記念館オンラインショップにはこの他にもいろんなゴム印を取り揃えています。→こちらから。

 

 

スタッフ:川又

 

2012.08.06 2012夏のお知らせ・その2!

引き続き暑中お見舞い申しあげます。
ワタクシ、先日、暑さのあまり頭痛とふるえを催す、ということがございました。「すわ、危険水域!」とちょっと慌てました。大事にはいたりませんでしたけれど、ハイ、みなさまもご自愛くださいませ。


さて、今週もまたまた『天皇の世紀』関連の重要なお知らせでございます。
日本映画専門チャンネルの番組ホームページ、もうご覧くださいましたでしょうか?

「もう見たよ~」という方も、まだの方も、番組ホームページの「特別番組」のボタンをクリックなさってみてください。なぜかといいますと、1973年から74年に制作された『天皇の世紀』を大解剖する(らしい)この特別番組がめちゃくちゃに面白そうなのです!

特別番組「ドキュメント"天皇の世紀"をドキュメントする」(全3回)
http://www.nihon-eiga.com/osusume/tennounoseiki/specialprogram.html
(↑とりあえずクリックしてみよう!)


----見ました? 見ました!? すごい面々ですね!! 私はもう、初めて見たときは腰が抜けそうになりました。

当時の制作者、現在活躍中のドキュメタリストの方々のコメントが少しずつ載っています。
「これこそがテレビ」、「テレビ的手法」、「テレビというものを学んだ」----
「危険な番組」、「とんでもない企画」、「斬新」----
これらの言葉を見るだけでも、「歴史とは何か」、「日本人とは何か」というテーマだけでなく、「テレビとは何か」、「テレビのおもしろさは何か」という問いにも挑んだ番組だったことが分かります。どんな挑戦だったのか、みなさんのお話で詳しく伺うのが楽しみですねぇ。

『天皇の世紀』は8月13日(月)11時40分の特別番組の放送から始まります!ぜひ、きっと、どうしてもご覧ください!

●再放送もあるそうですよ。放送予定のチェックには、こちらが便利です。
 →http://www.nihon-eiga.com/program/index.html#4
●月間番組表はこちら
 →http://www.nihon-eiga.com/timetable/pdf/201208.pdf


7月から始めたTwitter「伊丹十三の言葉」では、伊丹さんのテレビ論に関するこんなつぶやきもお読みいただけます。

およそ表現の仕事というものは、何をどう表現するかもさることながら、その表現自体が、一つにはメディア論になっており、つまり、テレビでいうなら、番組自体が「テレビとは何か」という問いかけを含んでおり、なおかつ、表現自体が組織論にもなっておらねば何の価値もあるまい。

『女たちよ!男たちよ!子供たちよ!』(文藝春秋、1979年)より

o_o_k.jpg【名著! しかし残念ながら絶版なのです...復刊希望!】


どうです? われわれ視聴者も、テレビについて深々と考えさせられる、そんなひとことでしょう? ...ハッッ、これ、まだ投稿してないつぶやきでした! ととと特別です! ヒ、ヒミツですよ!!

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と、いうわけでございますので、8月、9月の「伊丹十三劇場」では『天皇の世紀』と特別番組をお楽しみください。伊丹十三監督作品(映画本編)と、ドキュメンタリーシリーズ『新・13の顔を持つ男』の放送は10月までお休みとなります。

プロデューサー・ディレクターの浦谷年良さんが『新・13の顔を持つ男』と並行して(!)お作りになったドキュメンタリー『ベニチオ・デル・トロ広島へ行く』が、広島平和記念日、広島に原爆が投下されて67年の本日8月6日(月)、13時から放送されます。こちらも日本映画専門チャンネルで、ぜひご覧ください。

  • 日本映画専門チャンネルは申込みの必要な有料放送です。視聴方法などチャンネルに関する詳細情報はこちらをご覧ください。
  • 『ベニチオ・デル・トロ広島へ行く』8月6日13時からの放送は、ノンスクランブルの無料放送です。アンテナと受信機(テレビ、レコーダーなど)視聴できる環境があればご覧いただけます。
学芸員:中野

2012.07.30 2012夏のお知らせ

暑中お見舞い申しあげます。
えっ?「誰よりもぐだぐだどろどろのアンタにお見舞い言われても」? ええ、ハイ、もう、スポーツ飲料で露命をつないでいるような有様でして...お恥ずかしい限りです...

ホンっト、松山のみなさんの暑さに強いことには毎年驚かされます。お見舞い申しあげたいというより称賛申しあげたいぐらいです。(まぁ、冬になると、松山の方の寒さに弱いことに驚かされるんですが...あっ、すみません!)

clouds_2012.JPG【松山の夏雲はむっちりとしています】


7月に暑い暑いとコボしまくり、8月になるとコボす元気さえなくなりあきらめに至る、というのがここ数年の私の定番なんですが、今年はちょっと違います。ある楽しみをね、8月に控えているので(やや)元気なのです。その「楽しみ」は何かと言いますとね——

名作ドキュメンタリー「天皇の世紀」、
8月13日(月)より日本映画専門チャンネルで全26話放送!!

番組詳細はこちら

「天皇の世紀」については前回も大まかにお知らせいたしましたが、明後日8月1日(水)まで放送されるドラマ版と、このドキュメンタリー版とでは、原作(大佛次郎氏による長編史伝)を同じくしながら、趣きはガラリと変わっています。

そもそも「幕末から明治にかけての日本を舞台としたドキュメンタリー」に「伊丹さんが案内役で毎回出演」ってどういう作品なのでしょうか?

  • 台本はなく、歴史的事件や出来事のあった場所に赴いて撮る!という現場主義。
  • 伊丹さんの訪ねる先々で歴史的事件が再現されたりする。(そこは往々にしてセットや「昔風の町並み」ではなく現代の日本のマチナカであります。「今いるこの場所で、こういうことが起こりました」あるいは「こういうことがあった場所は、今はこういう場所です」と、「今」から「当時」に分け入ったり、逆に戻ってきたりする感じです。)
  • 伊丹さんの役割は、そこでかつて何が起こったのかを説明するレポーター。(台本はないわけですから、コメントはスタッフとのディスカッションや伊丹さんの即興によるものです。)
  • 伊丹さんは研究者に質問して解説を促したり、視聴者に疑問を投げかけたり、視聴者と一緒に悩んだりもする。
  • そして、侍の扮装で現代のパリを歩いてみたりなんかもする!?

...私の説明が拙いこともあり、「ちょっとー、どういうことなの、よく分かんないじゃない!」というお声が聞こえてきそうですが、つまり、観てみなくては分からないほど、冒険的な番組なのです!(うまいこと言い逃れしたみたいで申し訳ないですけど...)
記念館で限定販売しているDVD「13の顔を持つ男」でも名場面の数々が紹介されている「天皇の世紀」ですが、今回の放送は全編通してご覧いただくチャンスです。お見逃しなく!

※日本映画専門チャンネルは申込みの必要な有料放送です。視聴方法などチャンネルに関する詳細情報はこちらをご覧ください。


ハイ、それから、大変長らくお待たせいたしました...

第3回伊丹十三賞受賞記念 内田樹氏講演会
「伊丹十三と『戦後精神』」採録ページ一挙公開いたしました!!

こちらからどうぞ!

kouenkai_3.JPG
【館長とのミニトークもございます】

80分の講演をすべて採録いたしましたので、全7ページで少し長うございますが、そして、現代の日本に生きる者として「耳が痛いよぅ!」と感じずにはいられないお話でありますが、お時間おありのときに、じっくりとお読みください。
伊丹さんが映画『北京の55日』で演じた会津藩出身の明治の武人・柴五郎氏の生涯についても触れられていて、「天皇の世紀」と強くリンクするところがあります。読んでから観ても、観てから読んでも、より理解が深まると思いますので、ぜひ併せてどうぞ。


また、ご好評いただいております万作さんのつぶやき(Twitter「伊丹万作名言集」)に続きまして

十三さんが「伊丹十三の言葉(@juzo_itami)
つぶやきを開始いたしました!!


伊丹さんの著書・訳書から、ユニークなひとことをセレクトして、7時・17時・22時の1日3回ツイートしています。アカウント登録・フォローしてリアルタイムでキャッチするもよし、ときどきまとめて読むもよし、お好みのペースでお楽しみくださいましたら嬉しく存じます。
(時間になると、いろんな著書からのフレーズがランダムに投稿される仕組みなのですが、ロンドンオリンピックの開会式がまさに行われている最中には、イギリスに関係のあるひとことが投稿されていて「しょえぇぇぇ!」となりました。しかもちょっと辛口な感じでしたし...ハラハラ!)

juzo_bot.jpg
【ニャンキチを抱く伊丹さんの写真が目印です】

以上、だいぶインドアな情報ばかりでしたが、みなさまの夏のお供となりましたら幸甚です。それではごきげんよう。
学芸員:中野

2012.07.23 中庭で生まれたセミが無事成虫になって飛び立っていったようです。

先日中庭の回廊を歩いていると桂の木の枝にセミの抜け殻がくっついていました。

0723-1.jpg

地面に落ちているのはよく見かけますが、枝にくっついているのははじめてみたので記念撮影しておきました。

調べてみますと土から出てきたセミの幼虫は木を登って、そこで羽化して成虫になるそうです。

IMG_6584 - コピー.jpg

雨の日は亀やカエルが館内をうろついていることもある記念館ですが、セミの幼虫が館外から歩いてきたとも思えないので、中庭の土の中から出てきたということだと考えられます。
記念館ができるまでこの土地はアスファルトに覆われた駐車場だったので、記念館がオープンした2007年夏以降に中庭で生まれたのでしょう。中庭の土の中で育ち、無事成虫になり、飛び立っていったのだと考えると実に感慨深いものです。

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感慨深いですが、おなか側は昆虫感が強くちょっと気持ち悪かったです。

IMG_6574 - コピー.jpg

スタッフ:川又

2012.07.16 「天皇の世紀」が放送されます!

何の因果か、今年も海の日に「記念館便り」の当番が廻ってまいりました、中野です。
(ちなみに、去年の海の日のエントリーはコチラです...)

「海の日」が祝日になったのは1996年。私はすでに高校を卒業していましたから、何だか馴染みの薄い祝日なのですが(あ、大切な日だとは思っていますよ!)、「国民の祝日に関する法律」というものがございまして、何のための祝日なのか、ちゃーんと法律で定められているのです。ただ単に海で遊ぶ日ではないのです。ご存知でした?

「海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う。」

前半は何となく分かっていましたし、誰にとっても理解しやすいと思うのですが、後半が難しいですねぇ。「国の繁栄」を「願う」...今の日本ではどういう状態を「繁栄」と見做し目標とするのか、そこからして難しいような気がしますね...ともかくまぁ、それを「願う」...具体的に何をすればよいのでしょうか...

さて、答えの出ぬまま表題の件に移りますが...

なななんと、あの「天皇の世紀」が放送されます! しかも本日スタートです!

「天皇の世紀」は、朝日新聞に連載されていた大佛次郎(おさらぎ・じろう)氏の長編史伝で、幕末・明治維の日本を舞台としています。

天皇の世紀_文春文庫.jpg
(原作は文春文庫から復刊されています)

これを原作としたテレビドラマが連載中の1971年秋に放送されました。残念ながら連載中の1973年4月に大佛さんが亡くなられたため原作は未完となりましたが、その年の秋から翌年の春にかけてドキュメンタリー版が放送されました。

伊丹十三は、ドラマ版・ドキュメンタリー版の両方に出演しています。
ドラマ版では岩倉具視役、ドキュメンタリー版では時代の波に揺れる日本各地で起きた数々の事件について解説・案内する「ホスト役」としての出演でした。

番組ホームページの熱い解説(日本映画衛星放送様、ありがとうございます!)でお分かりいただけると思いますが、ドラマ版もドキュメンタリー版も、スタッフといいキャストといい趣向といい、トンでもなく贅沢で斬新で重厚な番組でございます。テーマにおいてもスタイルにおいても、「日本人とは何者か」、「テレビとは何か」という問いに満ちた作品です。

もうすぐロンドンオリンピックが始まります。テレビをつけて日本代表選手の競技する様に熱中すれば、平和の貴さやスポーツの面白さとはまた別に、否応なく、あるいはたやすく、自分が日本人であることを感じることもできますが、その一方で、というか延長線上でというか、「じゃあ日本って、日本人って何?」と大の大人が頭をひねってウンウン考える夏にするのもよいのではないか、と。その貴重な機会として、この番組をぜひぜひご覧いただきたく思います。
まずはドラマ版、本日7月16日スタート!!

<「天皇の世紀」放送予定>

●ドラマ版(全13回)...時代劇専門チャンネル
 7月16日(月祝)より 毎週月~金、22時~

●ドキュメンタリー版(全26回)...日本映画専門チャンネル
 8月13日(月)より 連日12時~

番組ホームページはコチラです!


長引いた梅雨のせいか、体調を崩していらっしゃる方が多いようです。
皆様、くれぐれもご自愛くださいませ。
学芸員:中野

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もひとつ告知です!

NHK松山放送局「いよ×イチ」HPの動画コーナーで宮本館長のインタビュー動画を公開していただいています。5月23日に愛媛県内で放送された番組ですので、見逃した方、他県にお住まいの方、ぜひコチラをご覧くださいませ! 5周年ライブの様子もご覧いただけますヨ。

2012.07.09 子供ノ誕生日ニ

「子供ノ誕生日ニ」

岳彦 オメデトウ         今日ハオマエノ誕生日ダネ

十年前ノ今日           オマエガウマレタトキ

父ハ物置ニハイツテ       郵便受ケヲツクツテイタ

ソノトキ父ハ嬉シサト       心配ノアマリ

何ヲシテヨイカ          自分ノスルコトガワカラナカツタノダヨ

スルトソノウチ          突然オマエノ最初ノ声ガ

高ラカニ聞エテキタ

ソノ声ヲ父ハ一生忘レナイダロウ (中略)

 

IMG_6470.jpgこれは伊丹十三の父・万作が息子の10歳の誕生日に書いたものです。

心から子どもの誕生を喜ばれているのが伝わってきますよね。

現在の企画展「父と子 — 伊丹十三が語る父・伊丹万作の人と芸術 —」の中でこの父から子への手紙のゾーンは多くの方が涙を流されています。私も初めて読んだ時は号泣でした。

  IMG_6482.jpg  

岳彦 オマエガ六ツノトキ    父ハ病気ニナツテシマツタ

始メノウチハネテイルコトガ苦シカツタガ

何年カタツトソレニモ馴レテシマツタ

タダ ヨク晴レタ日曜日ナド

オマエタチノ手ヲヒイテ郊外ニ行ケタラ

ドンナニ楽シイダロウト思イ

折角ノ夏休ミヲ      ツマラナク過ゴス

オマエタチノ姿ヲ見ルト   泳ギヤ舟遊ビニツレテ行ケナイコノ身ガ

悔マレテナラナイノダヨ   (以下省略)

 

  IMG_6485.jpg病床でこれを書いている万作さんの気持ちを考えるとなんとも言えなく胸が苦しくなります

明日は娘の4歳の誕生日です。生まれてきてくれた日の感動を忘れず、日々大切に過ごし明日は起きたらまず、生まれてきてくれてありがとうと伝えようと思います。

 スタッフ:木山

 

2012.07.02 しょうがの収穫

カフェ・タンポポの「ジンジャーペリエ」と「ゆずジンジャーペリエ」が大人気です。
炭酸の泡や上にのったミントが見た目にもさわやかで、納得の結果です。

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子供の頃でしたが、ジンジャーエールのジンジャーが「しょうが」だと知った時の衝撃が大きかったことを覚えています。
衝撃が大きかったといえば、昨年秋ですが、初めてしょうがの収穫をしました。
情けない話ですが、しょうがといえばスーパーでごろごろ袋詰めされて販売されているものしか見たことがなかったため、この収穫の際にみたしょうがには心底驚かされました。

 この植物の根っこが、

DSC_0397.jpgこんなふうになっています。ゆっくりゆっくり傷つけないように土をのけると・・・

DSC_0398.jpgミミズがいたりします。

DSC_0400.jpg取り出すとこんな感じです。一番右端の色の違うしょうがが「親」といいますか、「たね」です。
土をのけるとこんな感じです。

DSC_0403.jpg袋詰めで販売されているものに比べると、収穫したてのしょうがはずいぶんと水分が多く、みずみずしいように感じました。

DSC_0408.jpg

近頃しょうがはブームみたいですから、みなさんもご来館の際にはカフェ・タンポポでジンジャーペリエとゆずジンジャーペリエをどうぞご賞味下さい。

スタッフ:川又

2012.06.25 「傘は人なり」

毎年雨の季節になりますと、「傘が欲しいなぁ」と思うのです。いえ、「欲しい」というよりは、「私もイイ年、マトモな傘の必要をヒシヒシと感じる」というほうが正確でしょうか。

もうかれこれ15年ばかり、これぞという傘を探しているのですが、色柄がイマイチ、ハンドルが気に入らない、石突が尖りすぎ、などどこかが不満。ピンと来るものに出会えずにいます。
運よく「まあまあかな」というものに出くわしても、「...落とすかも」、「...盗られるかも」と心配になり、「ま、どうしても欲しいわけじゃないってことよ。次のご縁まで保留!」と先送りにしてしまうのです。
そして「明るくて見通しもよくていいじゃない、視界良好!」と透明のビニール傘をつい愛用してしまうのです...

何と言いますか、このように、「これではイカンと思いつつ私がおざなりにしてしまっているもの」をキチンと選んでいる人って偉いなぁと思います。そういうところにこそ、人柄が現れるような気がするんですよね。「傘は人なり」と言っても過言ではないとさえ思います。

そんなこんなで「私のビニ傘生活はいつまで続くんじゃ~」と悩んでおりました2年前のある日、長らく入院していた友人が、快気祝いに素敵な傘を贈ってくれたのです。すばらしい! さすがわが友! 私の残念な傘っぷりも自分じゃ選べないのもよく知っている! ありがとう!
しかし。喜びが大きい分、「...落とすかも」、「...盗られるかも」という心配も大きく、なかなか使えないでいるんですよねぇ。もちろん、タグには住所と名前を書きました。書いたんですが、どうにももったいないので大切にしまっておいて、今日も結局ビニ傘通勤です。(単なる貧乏性なのでは...)

さて、ワタクシのような妙な庶民の話はさておきまして—
伊丹さんの愛用の傘をご紹介しましょう。ブリッグ(SWAINE ADENEY BRIGG)の傘です。メイド・イン・イングランドでございます。

brigg.JPG(記念館のグッズショップで扱っております)

イヤー、カッコいいですねぇ。この傘、伊丹さんのエッセイにさりげなーく登場してるんですよ、ご存知でした?

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 五歳か六歳の子供のころ、女物の傘を持たされてお使いに出されたことがある。
 この、女物の傘、というのが、どういうものかひどく恥ずかしかった。恥しさのあまり、私は傘をたたんで、ぬれながら雨の中を走った。(中略)
 そこで私は、母親を迎えにいくところだ、という顔をして走った。迎えにいくところだから傘はささない。相手が母親だから女物の傘を持っているんだ——そういう理屈にもならぬ理屈を自分にいい聞かせながら私は雨の中を走っていった。
 
 大人になった私が、過度に男性的なこうもり傘を所有して快としているのは、右のような事情によるものと思われる。
「傘 のぞきめがね」『ミセス』1971年7月号

思い出話から始まって、自分の現在愛用の傘を紹介する、という趣向のエッセイですが、ブランド名など書かれていない、なのに、どんなに素晴らしい傘なのかが挿絵でバシっと伝わってくるのが心憎いですねぇ。

それからここにも...

europe_1.jpg
ここです、ここ。

europe_2.jpg
本文にも登場するんですよ。

 そもそも、わたくしの秘めたる憧れは英国人のお洒落であった。が、これは肉体的な条件が許さないよ。つまり、英国人的な肉体条件というのがあるのだ。(中略)
 まあ、われわれは、せいぜい、「ブリッグ」の蝙蝠傘を持ち、「ダンヒル」のパイプをふかすくらいで我慢したほうがいいと思う。そうして、そのブリッグの傘も、と、わたくしの畏友、白洲春正君はいう、英国人のように細く巻かずに、ばさばさのままついて歩くほうが安全であろう、と。
 つまり、英国の傘を持ってはいるが、それは傘がいいから持って歩いているのであって、英国人になりたいからではない、ということを示すわけあいであろうか。
「英国人であるための肉体的条件」『ヨーロッパ退屈日記』1965年

白洲春正さんまで登場しての傘談義...いい傘をあえてぞんざいに扱ってみせることで、自分という人間を表現する...どんなにいい物でも、「物に頼り仕えることはしない」という態度...うーむ、やっぱり「傘は人なり」なのに違いありません。

次の休みに雨が降ったら、友人にもらった傘を差して出掛けることにして、「いい傘ですね!」って誰かに言われたら、傘じゃなくって友人を自慢しようと思います。

umbrella.JPG
(マイ傘であります)
学芸員:中野

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※今回ご紹介した「傘 のぞきめがね」は、残念ながら単行本未収録ですが、『伊丹十三の本』に収録されています。「英国人であるための肉体条件」の収録されている『ヨーロッパ退屈日記』は新潮文庫で今もお読みいただけます。

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【お知らせ】
宮本館長、出勤中! 本日6月25日(月)、16時までおりますので、みなさまぜひお越しくださいませ。

2012.06.18 普通

 みなさま、こんにちは。6月に入り本格的な梅雨に入る時期ですね。5月はお天気が続いたので梅雨の時期にまとめて降ってほしいと個人的には思います。理由は私が住む町ではよく水不足で断水になるからです。断水になるとたちまち困るのがトイレ。私の家のトイレではペットボトル(1リットル)が4本必要になります。普段、普通にあるものを大切にしたいなとこの時期になると改めて感じます。

 ヘデラ雨.jpg

 

水といえば伊丹さんがエッセイ『女たちよ!』で水の味について書いています。伊丹さんと一緒に旅行した相手が「水にうまいまずいはないだろう」といい、そこを伊丹さんが「水というものは場所によっていろいろに味が違うもんだよ。」という話が書かれています。

私たちの生活に普通にある水。水といってもスーパーに行くと色んな場所で採れる水を購入できます。一見何気ないことですが、普通に感じてしまうと普通で終わってしまい、普通でないと感じて他の事も感じるようにすると、見た目や味がいつもと違うように感じることもできると思います。

 伊丹さんのエッセイ全体で共通して私個人として感じることがあります。それは他人が普通と感じることを普通と感じずに、物事などを追及して伊丹さんの感じ方(答え)を出している点です。

私は今まで毎日生きていく中で特に何も感じずに生きてきたのですが、伊丹さんのエッセイを読むと、このまま普通に生きてきたのではもったいないなと感じるようになり、最近は今まで普通にしていたことに自分なりのこだわりを少しだけ入れるようにしたり、私が普通にしていたことに「これは本当に普通なことかな?」と見直しをするようにしました。

今まで自分が普通と思っていたことに普通でないかもしれないと考えるのは少し勇気が入ります。けれど、普通でないかも?と考えると少し世界が広がると思います。

伊丹さんは一般的に普通と思われていることを普通でないと世間に広めた勇気ある人だと私は思います。別の意見がある方もいると思いますが一つの考えとして読んでいただけたら嬉しいです。

そしてそんな伊丹さんに興味がでてきた方、そうでない方もご自身の考え方を見つけ直す良いきっかけになるかもしれません。是非記念館へお越しくださいませ。

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上の写真は雨の日の記念館入口の様子です。

 

スタッフ:井川

 

 

 

2012.06.11 ジンジャーペリエ

記念館だよりをご覧のみなさま、こんにちは!ジメジメ梅雨到来ですがいかがお過ごしですか?

昨年11月から始めました、大人気のしょうがメニューに今回夏バージョンとして新メニューが登場致します。

夏といえばやっぱりシュワ~と炭酸が飲みたくなりますよね。まずは手作りしょうがシロップとペリエのコラボ!「ジンジャーペリエ」。記念館栽培のミントがいい香りで夏らしさアップ↑です。

続きましては、これまた夏に大人気中のゆずペリエに手作りしょうがシロップをまぜた「ゆずジンジャーペリエ」です。さわやかな炭酸とゆずの甘さとしょうがの風味が相性バッチリです。冷房で冷えきった体を中からあたためてくれます。冷たいものばかり飲みすぎがちですが、お腹にもやさしいしょうがドリンクをぜひお試しくださいませ。

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6月1日から開始したこの夏メニューですが、カフェ入口前の黒板で紹介させていただくと、めずらしいから味の想像ができないねと興味津々でオーダーしてくださり、「これは新発見だ!」「とってもおいしい!」などと好評です。

中庭の緑を眺めながらカラカラと氷の音をさせながらジュースをまぜる。桂の葉は風に揺られてそよそよ気持ちよさそう。想像するだけで心地よくなりませんか?

 

tayorikatura.jpg

しとしとと雨が降ってもまた風情がありとても雨の似合う中庭です。記念館へお越しの際はぜひカフェタンポポでひとやすみしてくださいませ。

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スタッフ:木山

2012.06.04 自然について

記念館では毎日開館前にスタッフ総出で掃除や準備を行います。先日外の庭の掃除をしているとスズメより少し大きいくらいの鳥の死骸が落ちていました。
記念館は川の近くだからなのか(?)日常的にいろいろと動物や昆虫がうろうろしています。これまでも亀やら何やらの死骸が転がっていたこともありましたが鳥は初めてでした。仕事でなければ正直走って逃げ出すところですが、開館前にどうにかせねば!と紙を上からかけて「火ばさみ」ではさみ、運びました。「火ばさみ」の間から鳥が転げ落ちたりします。まともに見ることすらできませんでしたが、なんとか運びだし、埋葬しました。

話は変わりますが、焼き鳥は好きですか。お店に行くと一口大になった鶏肉が葱と交互に串にささっていたりして、甘辛いタレがついたり塩がふりかかったりして、出てきます。焼き鳥ができる工程のイメージは正直な感覚で言うと、工場で小麦粉的なものに魔法の粉的な何かを混ぜて、水を入れて練って機械からポンポン発生してできているような、とてつもなく不自然なイメージを持っています。鶏をさばいているところを想像しては焼き鳥など食べられませんから勝手に自分の中で都合のよいように変換しているのでしょうか。実際に鶏をさばいているところを見たことがないからでしょうか。自分でもよくわかりません。

自分が想像している焼き鳥のできる工程のほうがよほど不自然なことにも関わらず、死んだ鳥を見るという「自然界の中でごく自然なこと」に対して取り乱したりして、自然界からすっかりかけ離れてしまっている自分の感覚に驚くばかりです。

子供の頃、都会の子供が生きているカブトムシを分解して「電池が入っていない」と言ったという話を聞いて(今考えるとこの話は本当なのでしょうか?)「最近の子供は!」と驚き呆れていましたが、大人になるにつれて自分もその都会の子供と大差はないな~と実感しています。

さて、伊丹さんのエッセイの中で「死教育」というエッセイがあります。伊丹さんの愛猫の「コガネマル」が死んだことで、幼い息子にどう死を伝えるかという事を悩んでいたようです。家族で庭の梅の木の下に「コガ」を埋めたそうですが、私も鳥を埋葬しながらこのエッセイのことを思い出しました。このエッセイはもともとは伊丹さんの著書「女たちよ!男たちよ!子供たちよ!」(文藝春秋)に掲載されたものです。一部ご紹介いたしますのでよろしければご一読下さい。

 

「死教育」 女たちよ!男たちよ!子どもたちよ! 伊丹十三著

~略~

これは、私の子供が生まれて初めて直面した死の実相というものだったわけですね。このあと、子供の話の中にやたらとコガの死、あるいは、死一般についての質問が多くなり始めた。

~略~

「死ぬとどうなりますか、トオチャン」
「それは判らない」
「どうして判らないんですか?」
「それはね、死ぬと他の世界へ行っちゃうだろ。ところがその世界からこっちの世界へ帰ってきた人がいないから判らないんだ」
「世界ってなんですか?」
「世界?−ウーン、世界っていうのは世間というか−そうだねえ、世の中というか−お前、世の中って判るか?」
「判りますよ。あのね、真っ暗なの、ヤミですね」
「それは世の中じゃなくて夜中なんだよ。ウーン、弱ったな。じゃあね、死ぬとね、みんな原子になるんだ」
「動けますか、それは?」
「動けるよ。お前もトウチャンも原子になって宇宙の名を飛びまわるんだ」
こんな説明で納得するわけがない。今日も子供は「ボクは死ぬのいやだ」と叫んでいる。
「トオチャン、死なない薬を発明してください。死なない薬はどうやって作ればいいんですか。野菜とあと何を入れればいいですか?」
と叫んでいる。
「死教育」はいかにあるべきか。これが私の現在の悩みである。

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【画像左が伊丹十三著 「女たちよ!男たちよ!子供たちよ!」(文藝春秋)。現在絶版。右の松田哲夫氏編「中学生までに読んでおきたい哲学6 死をみつめて」(あすなろ書房)は今年5月に刊行された本でこの「死教育」のエッセイが全文掲載されています。他にも著名人の「死」に関するエッセイが多数掲載されています。】

スタッフ:川又

2012.05.28 収蔵庫ツアーのご報告

皆様こんにちは。今週もワタクシ中野が登場して何を申しあげるかといいますと、毎年恒例の開館記念イベントなりました収蔵庫ツアーのご報告です。
今年は5月11日(金)から13日(日)の3日間、11時からの回と15時からの回、計6回開催いたしました。

当館の収蔵庫の中の「展示風」になっているスペースに所蔵されておりますこんなものや

artichoke.JPG
こんなものや
books.JPG
こんなものを
shoes.JPGご覧いただく催しで、これにご参加いただきますと、「伊丹作品や展示室の見え方が変わる」(お客様多数・談)、ハイ、そのような効用がございます。

ご案内役はワタクシが務めさせていただいておりまして、「これは何年に伊丹さんがナニナニの作品に出演した際に書いたナニナニでございます」ですとか「これは伊丹さんがドコソコで買ってきたナニナニでございます」というようなご説明を申し上げるわけです。が!

前回も申しあげましたように「物を見ていただく」、「お話を聞いていただく」だけでなく、ご質問やご感想をどんどん述べていただいて、気軽におしゃべりしながらご見学いただくのがこの催しの愉快なところです。思わぬ角度から鋭いご質問が飛んできますとウロたえて瞬時に汗まみれに...てなこともございますが、お客様のふとしたひとことや素朴な疑問で話がふくらんだり、初対面のお客様同士が意気投合して情報交換が始まったり、と盛り上がりますと、ワタクシ、もうほんとうに、うれしいのです。(そして、時には厚かましく私のほうがお客様にご質問してしまうこともあります。スミマセン...)

お客様6名様(収蔵庫内のご鑑賞スペースの都合で定員制とさせていただいています)という小ぢんまりとしたイベントのよいところですね。(あ、もちろん、ジックリ派の方はじい~っと聞いていただくだけでもいいんですよ!)

と、いうわけで今回は「収蔵庫ツアー参加者のご感想一挙掲載スペシャル」でございます。

※アンケート用紙に「掲載可」とご記入くださった方のご感想のみ掲載しております。
※また、掲載にあたりまして若干の編集を加えさせていただきました。ご了承くださいませ。

とても楽しく拝見させて頂きました。一緒に周った方々も興味津々でらっしゃる方ばかりで有意義なツアーとなりました。伊丹十三氏がどんなことに興味をもち、どういうものに触れ接していたかがとても良くわかりました。感性の欠片が沢山ありますので多くの方々に見て頂けたらいいなあと思いました。いいものが沢山ありますが、いいものを見る目がまず一人の人間の中にあったと思います。

説明がとても詳しく面白かったです。次回もお願いします。

伊丹さんのセンスを感じ取る事が出来る貴重な体験をさせて頂けました。日本の民俗学に熱心であったと聞きましたが、収蔵庫のお品は多国籍なものであふれ、自国と他国、それぞれの良さを知られているんだなあと感心しました。物に対する深い愛情を感じずにはおれません。詳しく楽しく説明して頂き、有難うございました。

お話とともに貴重な収蔵品がみられたことはとても嬉しかったです。たくさん質問しても楽しくお答えいただき、いい時間をすごすことができました。伊丹さんの持ち物からさらに魅力が伝わり、自分の世界の目を広げていただきました。面白いものをつくる人の視点を知ることができたのもとても有意義でした。ありがとうございました。

伊丹さんの描かれた絵、読まれたご本の中に伊丹さんが落ち着かれていました。館長に感謝いたします。

湯河原のダイニングの一部を再現してあるコーナーで、伊丹十三の生活に触れられたようで震えました。日々の生活を見直すきっかけにしたいと思います。

伊丹十三の中味を深く知ることが出来てよかったです。

今日は貴重な物が見られて、とても心が弾みました。
私は伊丹さんの料理や器に関する物に興味がありましたので、一階の展示室には無い、初めて見るものがたくさんあり良かったです。もう少し近くでじっくり見たかったなぁ...と思いました。本日はありがとうございました。

日頃見せて頂けない貴重な品々を目にすることが出来、とても嬉しいひと時でした。ご本人がすぐそこにいらっしゃるような思いも致しました。イラストの原画に出会え、その奥深さに趣きを感じます。収蔵庫ツアーに参加出来感謝します。

親切丁寧に説明していただきました。ありがとうございます。初めて収蔵庫ツアーに参加しましたが、このような見学方法では奥がわかりづらいので、全体が見えるようにご一考くださればうれしいです。小物類は興味があるのでなおさらです。

蔵書の数の多さ、状態の良さにびっくりしました。どんな本を読まれていたのかを目の当たりにして、伊丹十三さんの思考回路の一端に触れた気がしました。モノへのこだわりがすべてにあったのだと、それの行きついた先が映画だったのかな、と思いました。もっともっと見ていたかったです。楽しく素晴らしいひとときをありがとうございました。

本日はありがとうございました。伊丹十三氏の私服や愛用品、書籍などを見ることが出来て、氏の人柄をより近いものと感じることができました。氏の作品をまた観返したいと思います。

本日は貴重なご資料を見せていただきありがとうございました。伊丹さんのプライベートなものを拝見して自分の暮らし方、生き方みたいなものをあらためたいと感じた次第です。また、面白いイベントなどありましたらお教えください。

本日は伊丹十三さんを身近に感じ見ることができ、嬉しい一日となりました。テレビ、映画、本などで知る伊丹さんと違う一面で、本当に多面な人だと思いました。

大変たのしゅうございました。十三さんが身近に感じられるところと、自分たちとはかなり違うところの多い方かな~と思いました。でも大変興味深く日常的でない時間を過ごせました。

伊丹さんの物を選ぶこだわりとすばらしい感覚には感動します。貴重なものを見せていただきありがとうございました。

数々の収蔵品を見せて頂き、あらためて伊丹十三の多才能におどろくばかりです。また、作品を手にすることがあれば思い出しながら楽しみたいと思います。

念願の収蔵庫ツアーに参加させて頂いてありがとうございました。心にほんわかとするものと、厳しい目で美学を貫いていて目が喜びました。いいかげんな雑な物選びの自分を反省しました。


tour_2012.JPG(「これが収蔵庫?」と意表を突かれる一画もございます。)

ああ、おかげ様で今年も楽しくご案内させていただきました。こう見えて結構キンチョーしてるんですが(ホントですよ!)、収蔵庫ツアー、大好きなイベントです。ご参加くださった皆様、まことにありがとうございました。

収蔵庫ツアーは毎年4月半ば頃に参加者を募集しておりますので、ご興味おありの方はぜひ次の機会にご応募くださいね! お待ちしております。

学芸員:中野

2012.05.21 開館5周年記念イベントのご報告

去る5月15日(火)、伊丹十三記念館は開館5周年を迎えました。
今年は恒例イベントに加えてスペシャルイベントも開催いたしました。以下、5年分の感謝の気持ちを込めまして、ご報告申しあげます。


4月1日(日)無料開館

節目の5周年、どーんと行きましょう! ということで、5周年記念イベントの第一弾は当館初の無料開館。なにせ初めての試みなものですから、スタッフの誰も予想しなかった結果に...日曜日ということもあって、なんとなんと、1506名ものお客様がお越しくださいました! (もちろん開館以来の新記録、大記録です。)
とても驚きましたが、この機会に当館を「イイ!」と感じてくださった方々がまたご来館くださいましたらとても嬉しく思います。


5月11日(金)~13日(日)収蔵庫ツアー

さて、記念イベントの第二弾は、毎年恒例となりました収蔵庫ツアーでございます。
当館の収蔵庫には、伊丹十三の映画制作資料のほか、愛用品や直筆原稿、イラスト原画、蔵書などが収められています。そして、収蔵庫の2階部分は、それらを「展示風」に収蔵できる作りになっています。
tour_2012.JPG【伊丹さんのお家の一室を再現したコーナーもあります】

このようなスペースをお客様にご覧いただきつつ「どんなゆかりのあるものか」「どのように使われていたものか」というようなことを、口から生まれて34年のワタクシがご説明申しあげるのですが、「物を見ていただく」、「お話を聞いていただく」だけでなく、ご質問やご感想をどんどん述べていただいて、気軽におしゃべりしながらご見学いただくのがこの催しの愉快なところです。私もお客様方に大いに楽しませていただきました。ご応募のお手間を厭わずご参加くださった皆様にお礼申しあげます。

参加者の方々からありがたいご感想をたくさんお寄せいただきましたので、来週ご紹介させていただきますね。


5月15日(火)ミニジャズライブ

さてさて、記念イベントファイナルは、ミニジャズライブ! 記念館の中庭を囲む回廊で開催しました。ご出演くださいましたのは...

伊丹十三監督作品の映画音楽を数多く手がけた作曲家にして名サックスプレーヤーの本多俊之さん! いえいっ♪

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奥様でピアニスト、しっとり美女の本多尚美さん! いえいっ♪

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そしてジャズの大好きな「歌う館長」宮本信子~! いえぃいえいっ♪♪

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英語詞・邦訳詞のスタンダードナンバーあり、オリジナル曲「シャンパンが抜けない」(作詞:宮本信子 / 作曲:本多俊之)あり、そして...サックスとピアノの演奏に宮本館長の思い出語りの詩をのせた「伊丹映画メドレー」あり。アンコールの「港町十三番地」(ひばりちゃん!)まであっという間の45分間でしたが、約170名ものお客様がライブをお楽しみくださいました。

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【中庭を囲む回廊でのライブでした】

伊丹さんの79回目のお誕生日でもある開館記念日を、たくさんの方に笑顔で祝っていただいた思いで感無量...本多さん、尚美さん、音響照明のスタッフの皆様、ご取材の皆様も、本当にありがとうございました! 館長、お疲れ様でした!

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【「歌うのが楽しくって仕方ないんです~♪」館長談】

ところで、本多さん・尚美さん・館長はしばしば集合するとっても仲良しな三人組なのですが、このトリオでのライブは実は今回が初めてだったのだそうです。記念館での音楽イベントも初めてでしたし、「伊丹映画メドレー」は世界初公開! 初めて尽くしのまことにプレミアムな催しに寿命が延びました。(お天気の心配で寿命が縮みもしましたが...)
ライブ中のMCで館長が語ったところによりますと、「伊丹映画メドレー」は打ち合わせの食事会で尚美さんが提案してくださったのだそうです。伊丹組による伊丹十三記念館での伊丹映画の音楽の生演奏、シビれましたねぇ。

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【ライブ後の三人衆です】

*本多さんのブログにもご掲載いただきました!
*宮本館長の「タンポポだより」もぜひ!


年明けから打ち合わせを重ね企画した5周年記念イベントには、地元から、ご遠方から、ほんとうに多くの方がご参加くださり、5月19日(土)には開館以来の累計入館者数が11万人を突破いたしました。これまでご来館くださったすべてのお客様、お力添えくださったすべての方々に心よりお礼申しあげます。
引き続きどうぞよろしくお願いいたします。末永く~!


宮本館長からのごあいさつ

皆様へ

伊丹十三記念館の5周年の記念に、何かしなければいけないと思いました...大切な節目です。
私はオープンした5月15日(伊丹さん誕生日)にこだわりました。
「中庭でライブをしよう!」
それしかないと決め、仲良しの本多俊之さんに助っ人をお願いしたのです。
当日は朝からの雨が17時には上がり、しっとりとした雰囲気の中で始まりました。
時折吹く風に、桂の木の葉っぱが私と一緒に歌っているようでした。
それはそれは楽しかったです!
お客様の笑顔とアンコールの手拍子が忘れられません。

また、記念館入館者数11万人~~~突破しました!本当に嬉しいことです。
これも皆様の応援のお蔭です。これからも、何卒よろしくお願い申しあげます。

感謝
宮本信子

staff_2012.JPG「ごしゅ~ねん!」
学芸員:中野

2012.05.14 緑がある記念館

あっという間に4月が過ぎ、5月に入りました。桜も散り、緑が生い茂る時期になりましたね。記念館の中庭や周辺にクローバーやたんぽぽが多く見られるようになりました。てんとう虫など虫を見ることも多くなり植物が成長し昆虫の活動が盛んになるこの時期、記念館では開館5周年記念イベントを行い5月はお客様や関係者の皆様で賑わうと思いますので外ですくすくと育つ植物たちに負けないよう館内を盛り上げていきたいです。今回は記念館の外観を囲むように植えられている植物と中庭の植物についてご紹介します。

まず前庭の木からご紹介。

入口からベントレー側にあるトサミズキは地面から太い枝を出して茂っているのが特徴です。葉はまるい形です。3月から4月にかけてぶら下がるように黄色の花を咲かせます。葉がミズキの植物に似ていて高知県(土佐)で発見されたのでこの名前がついています。

トサミズキ縮小.jpg

 

 駐車場入口側にあるヤマボウシは葉は楕円形または卵円形で緑色です。こちらもミズキ科です。幹は灰褐色。ヤマボウシの隣にあるユキヤナギは地面の際から枝が何本も枝垂れて細く、ギザギザの葉をつけます。雪白の小さな花を3月から5月にかけて枝全体につけるためこの名前がつきました。バラ科の植物です。右がユキヤナギ、左がヤマボウシです。

ユキヤナギとヤマボウシ (3)縮小.jpg

 

 記念館の周囲を囲む山桜はユキヤナギと同様バラ科の植物で桜の中では寿命が長いといわれています。開花時期は3月から4月です。成長した葉は緑色です。淡い紅色の花を咲かせます。

 

山桜縮小.jpg

 

 

入口にある記念館看板近くと中庭に1本ずつある(計2本)桂の木はハートの形に似た円形の葉が特徴で、秋には黄色く紅葉します。その落ち葉は甘い香りがします。中庭に春~初夏にかけて咲く紫色の小さな花はビンカミノームという姫ツル日々草の一種です。

 

桂縮小.jpg

  ビンカミノーム縮小.jpg

 また中庭には西洋タンポポが植えられています。

 

たんぽぽ縮小.jpg記念館はこのように植物が多いことも特徴だと思います。カフェから中庭を眺めるためにご来館されるお客様もいらっしゃいます。少し休憩のため記念館の庭をゆっくりご覧になるのも良いと思います。是非ご覧くださいませ。

 

スタッフ:井川

2012.05.07 5周年ありがとう!

記念館だよりをご覧のみなさまこんにちは!

G.Wは9連休だった方、カレンダー通りだった方、お仕事だった方など様々でしょうが、今日からまたいつも通りの生活に戻る方が多いのではないでしょうか。

私どものような観光施設はみなさまがお休みの時は仕事で、忙しくさせていただいておりますが、当記念館は特に5月は忙しい季節になっています。ご存知の方も多いと思いますが、2007年5月15日、伊丹さんのお誕生日にオープンしました伊丹十三記念館は、来る5月15日で5歳の誕生日を迎えます。

この5周年を記念いたしまして、様々なイベントをご用意させていただいております。去る4月1日はオープンして初の無料開館日と致しまして、まだご来館した事のない方や以前の企画展は見たけど、今の展示はまだ見ていなかったという方などなど1500名以上のお客様がご来館下さいました。想像以上のご来館でスタッフ一同驚きと、多くの方に興味を持っていただけているという喜びの一日となりました。当日は駐車場も常に満車状態でご来館くださったお客様には大変ご迷惑をおかけ致しました。この場をお借りしましてお詫び申しあげます。

tayori4.1.JPG5月11日(金)~13日(日)は恒例となりました収蔵庫ツアーを開催致します。今回も多くの方にご応募いただき、遠方からこの収蔵庫ツアーの為に来松される方もいらっしゃり大変うれしく思っております。今回は残念ながら抽選ではずれてしまわれた方や締め切りに間に合わなかった方など、ぜひまた次回ご参加下さいませ。イベントの際にはホームページでご紹介しておりますので、チェックしてくださいね。

そして、5月15日(火)オープン記念日にはメインイベント館長・宮本信子のミニジャズライブを開催致します。中庭を囲む回廊で開催させていただく為、先着200名様限定とさせていただきます。通常火曜日は休館日なのですが、この日は15時から18時30分まで臨時開館致します。ライブは17時開始となっております。当日は駐車場が大変混み合う事が予想されます。無料開館日の時にはお車が停められず困っている方が多くいらっしゃいました。ぜひ、公共の交通機関をご利用して来てくださることをおすすめ致します。当日は早くから来ていただいても、定員になった時点でご入場できなくなりますので、ご了承くださいませ。このイベントを公開してすぐ、多くのお問合せをいただき、たくさんの方が楽しみにしてくださっている事を知り有り難く存じます。当日は大変混み合います事と定員があります事、駐車場に限りがございます事、何卒ご了承くださいませ。

  tayori5.7.jpg5月16日(水)は前日の歌手・宮本信子から館長・宮本信子になり、みなさまをお迎え致します。15日に遠くからしか見られなかったという方も16日の方が近くで見られたり、お話しできたりというチャンスがございます。ぜひ生館長に会いにいらして下さい。当日の状況により多少時間の変更がある場合もございますが、11時から16時頃まで出勤予定となっております。

こうやって無事5周年を迎えられるのも日頃から記念館を支えて下さっている関係者の皆さま、たくさんのファンの方のおかげと心から感謝しております。6年目も皆さまに愛される記念館になれるようスタッフ一同がんばってまいりますので、今後ともどうぞよろしくお願い致します。

スタッフ:木山

2012.04.30 看板がつきました

IMG_5990.jpg記念館の敷地内に看板を設置致しました。
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記念館らしいデザインで敷地内といえども国道33号線からも結構目立ちます。
オープン当初より「この前の道を通ったけどどこにあるのかわからなかった!」というご意見を頂くことがありましたがこれで一目瞭然!

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 来月には開館5周年を迎える記念館ですがせっかくご意見を頂戴してもなかなか実現することが難しいこともありますが、このように良くなることは今後もどんどん実現していければと思います!

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IMG_5993 - コピー.jpgタンポポの綿毛って「ふーっ」とするとすぐに飛んでいくイメージがありますがこれが意外と飛びません。綿毛になってから1週間程度経過してやっと数日後にふわっと飛びます。と言っても多くは雨風で近くにおち、周りでどんどんタンポポが増えていきます。看板の前の土地が記念館で一番のタンポポ畑になっていますので、看板とあわせてご覧ください!

スタッフ:川又

2012.04.22 第4回伊丹十三賞の贈呈式を開催いたしました

4月19日(木)、国際文化会館で第4回伊丹十三賞の贈呈式を開催いたしました。

受賞者の森本千絵さん、森本さんのご家族・お仲間、そして伊丹十三にゆかりのある方々、当財団の関係者の皆様、約80名様にお集まりいただきました。以下、贈呈式の様子をご紹介いたします。


選考委員・中村好文さんの祝辞

「選考会の直後、森本さんにこの賞を受けていただけるかどうか打診したのですが、そのときの反応はあまりにも愉快。かつ、いかにも森本さんらしいものでした。森本さんは伊丹十三賞の受賞者に選ばれたと聞いて、間髪を入れず『チョーウレシイ!』(場内笑)と言ったそうです。この言葉を聞いたとき、その場に居合わせた人たち全員の顔がパッと笑顔に輝き、あたりが華やかな空気に包まれました。そしてその瞬間、私は森本さんを選んだことが間違いではなかったことを確信したのでした。
今回の授賞理由の中には『子供から大人まで、わかりやすく楽しく、こころの奥にまで届く独自の世界観』という言葉が入っていますが、森本さんの笑顔はまさにわかりやすく心の奥にまで届く笑顔なのです。

伊丹十三は様々なジャンルで才能を発揮し、独自の世界を作りあげた人でしたが、その仕事を眉間にシワを寄せてするのではなく、いつも本人が一番楽しみながらしてきたように思います。森本さんもジャンルという面倒な垣根を軽々と乗り越え、ご本人が誰よりも楽しみながら仕事をしている方だとお見受けします。

森本さん自身もen°報という一種の壁新聞の最新版に伊丹十三賞受賞の言葉として『しばらくまとまることなく、できることをどんどん楽しんでいきたいと思います』と書かれています。そのような発展途上の人、そしてこれから切り開かれるであろう無限の可能性に対して、伊丹十三賞を贈呈できることを選考委員のひとりとして誇りに思います。」

nakamura_san.JPG巻紙にしたためられた中村さんのご祝辞は、軽妙なエッセイのようでもあり、森本さんへのラブレターのようでもあり、ワタクシ、キュンとしてしまいました。中村さん、ありがとうございました。


森本千絵さんのスピーチ

「本日は、ほんとうにありがたい賞...チョーウレシイ賞(場内爆笑)をありがとうございます。ここにいらしてくださった方々、学生時代からの仲間であるスタッフ、みんなで分かち合いたいと思います。

私は小さい頃から絵を描くことがほんとうに大好きで、とくに賞を目指してとか広告を目指してということではなく、楽しいほう楽しいほうに流されていって、やることすべてに必然的な出会いがあって、目の前の人と楽しみたくなって、誰かが喜ぶとすごく嬉しくなって、それにお調子者でもあって、それで動いていくとものごとがどんどんカタチになって、知らない間にこういうかたちになっていて、『何屋さんなの?』って聞かれることがよくあるんですけれども、いろんなことをやらせていただいてます。伊丹さんほどではないんですけど(笑)、実際のところは、広告をはじめ絵を描くこと、空間のお仕事、映像のお仕事をやってますが、どれに対しても態度は変わらず、難しさも変わらず、迷惑かけることも変わらず、やらせていただいてます。

伊丹さんは『私自身は空っぽの容れ物にすぎない』とエッセイ(『女たちよ!』前書き)に書いています。私も自分がないというのは変ですが、もしほんとにひとりぼっちだったら自分が楽しいことも見つけられないし、自分がどういうものなのか分からないですけども、ひとりひとり、その人に出会うと、気持ちがドクっと動くものがあって、「あ、こんなことが好きなんだ」、「こんなことがしてみたいんだ」っていうことが見つかっていくので、たくさんのことを今やらせてもらっているのは、それだけたくさんの人に出会ってきたからだと思ってますし、まだまだたくさんの人に出会うかと思うと、自分でも想像したことのないこともこれからやるんじゃないかな、とも思ったりしてます。

かっこいいと思ってる人の賞をもらうのが根本的にめちゃくちゃ嬉しいです。上手い下手とか、正しいとかじゃなくて、かっこよく生きてるな、楽しそうだな、と思う人の作品が好きで、だから伊丹さんの作品も、選考委員のみなさんの作品も『かっこいいなぁ~!』と思って見てきました。

広告とかの肩書きの中にはまった賞をもらったときは『見てろよ~』っていう気持ちが多少あって(笑)真面目にしゃべんなきゃって思うことはあるんですけど、この賞は、人間としてというか森本千絵として、父と母に育てていただいて、たくさんのお友達に出会って、たくさんの仕事をして、肩書きに関係なくみなさんに支えていただいたことが、私はめちゃくちゃ幸せに生きてるなぁというか、捨てたもんじゃないなぁ、というふうに、ほんとうに個人的に、森本千絵として、めちゃくちゃ嬉しいです。ほんとうにありがたい賞だと思ってます。そして、こういうことがあるから『いろいろやってやろう』ってますます思うし、これから流されるまま楽しいこといっぱいあるんだなぁっていうふうな希望も湧いてます。ほんとうにこんなありがたい賞をいただいて、とても嬉しく思ってます。ありがとうございます。」

morimoto_san.JPG「肩書きではなく、ひとりの人間としての賞、だから関わった人たちに感謝したい」...賞を差し上げる私たちにとっても、ありがたく光栄なお言葉を頂戴いたしました。
スピーチの合間に「あぁキンチョーする...」、「こんなに汗をかいたのは初めてです(笑)」と仰っていましたが、笑顔を交えて飛び出すライブな表現もとてもチャーミングで、ご来場の皆様もチョーウレシそうでした! 森本さん、伊丹十三賞を幸せな賞にしていただき、ほんとうにありがとうございました。


宮本館長のごあいさつ

「今日はたくさんの方々にお集まりいただき、まことにありがとうございます。森本さんが控え室でものすごく緊張してらして、もう初々しくって可愛らしくて、伊丹さんも、森本さんにこの賞を贈ったことをすごく喜んでいると思います。そして、ますます自由に、いい仕事を、楽しく、そういうことをいっぱいして欲しいって、そう思います。がんばってください。では、みなさんと一緒に、森本さんを祝福したいと思います...」

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ということで、館長の「カンパーイ!!!」の音頭とともに祝賀パーティーが始まったのでありました。
ご来場くださった皆様のおかげで、今年もまたあたたかくにぎやかなパーティーにしていただきましたこと、厚くお礼申しあげます。ご取材にお越しくださった皆様、会場の国際文化会館の皆様も、まことにありがとうございました。(来年もどうぞよろしくお願いいたします...!)

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学芸員:中野

2012.04.16 春風で感じたこと

こんにちは。4月中旬となり、ようやく桜も咲き始めてお花見ができるようになりましたね。愛媛県の今年の春がくるのが少し遅かったようです。そして4月3日は春風という名の暴風雨でした。台風並みの風で外出していた人は大変だったと思います。でも幸い火曜日(休館日)でしたので記念館にお越しになるお客様は大変な目に合わずに済み本当に良かったです。私は用事があり外出をしていました。暴風雨の中、飛ばされそうになる傘を支えながら思ったのは「伊丹さんなら天気が悪い日でも快適に外出できるような道具などを発明していただろうな」ということでそこから私の頭の中で「強い風の中でも前に向いて歩ける道具」ならどんなのがあるかなと勝手に考えを膨らませていました。既に皆様もご存知かもしれませんが、伊丹さんは多方面で活躍していました。イラストレーター、CM作家、商業デザイナー、俳優、エッセイスト、映画監督など・・・。

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一つの事柄に対して強い探究心を持ち、伊丹さん自身の丁寧な答えを完成した作品などで一つずつ表していました。「強い風の中でも前に向いて歩ける道具」というような漠然とした考えで留まってしまう私ですが、きっと伊丹さんなら現実のものとして実現でき、かつ他人が理解できるものを作ってしまうんだろうなと思います。記念館でそんな伊丹さんの世界に触れることで「なるほど!」と思う気持ちが芽生えるかもしれません。それがもしかしたら皆様の「新しい何かのきっかけ」になることもあるかもと思います。私が「伊丹さんなら・・」と思ったように記念館に訪れた方々がご自身にプラスになる「何か」を掴んでいただけたら良いなと考えます。4月は新生活、新しい習い事、新学期のスタートの時期ですね。新しいことで戸惑いがあったとき伊丹さんについて触れると良い考えが閃くかもしれません。記念館にはカフェがありゆっくり座れるスペースがあります。中庭が見え開放感もあり、中庭の桂の木やタンポポを見ながら、建物からも伊丹さんを感じていただけると思います。

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 館内は静かで時折かすかに鳥の声が聞こえてきます。自然の中に1軒だけ立っている建物のようで良い雰囲気です。是非お一人でも気軽にお越しくださいませ。スタッフ:井川

2012.04.09 5周年記念グッズセットの販売について

5月15日の開館5周年を記念して、記念館オリジナルグッズのセットを販売致します。
特典として館長宮本の直筆の色紙や、非売品の『マルサの女2』缶バッジをプレゼントいたします。

期間:2012年5月1日~5月31日の期間限定販売
価格:6,405円のところ→5,000円(税込)
販売数:10セット限定販売

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【セットの中身です。Tシャツはお好きなデザインをお選びいただけます。】

・Tシャツ(お好きなデザイン、サイズをお選び頂けます。)
・伊丹十三記念館ポストカードセット(全26枚入り)
・クリアファイルA4 2枚(2デザイン各1枚)
・クリアファイルA5 1枚
・缶バッジ(猫の右手)
・伊丹十三記念館オリジナルシール

今年は特典が豪華です。メインは館長・宮本信子直筆のサイン色紙です。松山に来る時間が取れなかったため、購入したサイン色紙を東京まで送り、記入・返送してもらいました。
その他にも、非売品の『マルサの女2』の缶バッジと、館長・宮本からこのグッズセットを購入してくださった皆様へのメッセージカードもございます。

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【館長・宮本信子直筆の色紙】

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【はがきサイズのメッセージカードと非売品の『マルサの女2』缶バッジ】

 

セットの発売は5月1日から行いますが、本日よりオンラインショップにて予約を承ります。
10セットの数量限定販売ですので、皆様お早めに!

ご予約はこちらから → 開館5周年記念グッズセット

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【中庭のタンポポが満開です。】

 

スタッフ:川又

2012.04.02 第4回伊丹十三賞の受賞者が決定しました!

毎年春の恒例となりました伊丹十三賞。第4回の受賞者が決定いたしました!

あ、「伊丹十三賞ってナーニ?」という方のために、ごくカンタンにご説明いたしますと(このご説明も毎年恒例となりつつありますが...)、「伊丹十三が活躍した分野で、多くの方の知性に生き生きとした刺激を与える面白い仕事をなさっている方にお贈りする賞」でございます。

※詳しくはこちらをご覧ください↓
当館ホームページ内「伊丹十三賞概要
宮本信子Official Site内「タンポポだより

今回の受賞者は、goen°(ゴエン)主宰・コミュニケーションディレクター・アートディレクターの森本千絵さんです!

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(c)kazumi kurigami

森本さんのご活動は、広告・映像制作・音楽映画ドラマの宣伝美術・舞台美術・ブックデザイン・空間デザイン・ワークショップ...非常に多岐にわたりますが、こちらをご覧いただきますと、たとえば、サントリーBOSSシルキーブラックのCMや、是枝裕和監督の『空気人形』のポスター、Mr.Childrenのジャケット写真にポスターにPVなど、「あ、これ! グっとくるなぁって感じてたけど、森本さんのお仕事だったのね!」という作品をたくさん発見していただけると思います。それから、「へえ! こんなお仕事もなさっているのね!」という作品や活動にも、さらにたくさん出会っていただけると思います。


そんな森本さんのお仕事、すなわち「子どもから大人まで、わかりやすく楽しく、こころの奥にまで届く独自の世界観と、ジャンルを問わない作品の可能性にたいして」、第4回伊丹十三賞をお贈りさせていただくことになりました。ご受賞、まことにありがとうございます。

贈呈式は4月中旬に東京都内で開催する予定です。どんな式になるのでしょうか...レポートいたしますので、お楽しみに!

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<ちょこっと告知>
開館5周年記念・収蔵庫ツアー参加者募集中です。

直筆原稿などの仕事や、衣類、食器、楽器などの愛用品が収められている収蔵庫は、普段は公開していません。展示と併せてご覧いただきますと、伊丹さんをより身近に感じていただけます。絶好の機会ですので、4月23日までにぜひぜひご応募ください!
※詳しくはこちら

学芸員:中野

2012.03.26 春の季節

 

みなさまこんにちは。日が経つにつれて太陽の光が暖かく感じる今日この頃です。記念館の正面入り口前には菜の花が咲き、黄色に輝いて見えます。

 

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桜が咲くまでにはもうしばらく時間が必要のようですが、春はすぐ近くまできているようです。毎日開館前に掃除をしているのですが、記念館で掃除をするようになってから天候や気温、外の景色を気にするようになりました。景色等を気にするので自然と四季も感じるようになり、ご来館されるお客様について「今日はどのお住まいのお客様がご来館されるのかな。」など考えながら掃除をしています。そんな一日のはじまりからお客様をお迎えし、はじめてご来館されたお客様からは建物についてや展示物、開館日、私個人のことなどいろんなことをご質問していただけます。そのご質問内容はとてもまっすぐで、お客様の素直なお気持ちが伝わってきます。

そんなときに思い出すのが『問いつめられたパパとママの本』です。この本は知識に対する憧れと畏れ(おそれ)を身につけ、子どもの好奇心の芽を正しく伸ばしたいと希望する、心優しき大人たちへ向けて書かれた本です。子供の頃、密かに疑問に思っていたことを十三さんが優しげな文章で答えてくれています。私の気になる文章を一部ご紹介しますと『ドウシテ未開人ガイルノ?』(新潮文庫 146ページから152ページ)では未開社会の特徴は「閉鎖的」でそれを実行しているのが未開人であるけれど、「閉鎖的」というのは結果であって原因ではない。交流できない場所に住んだから未開人になり、孤立した社会を営んできたから閉鎖的になったわけで、人間はそもそも開放的で人間好きであるという内容です。「人間はそもそも開放的で人間好きである」という文章を読むと記念館のスタッフとして記念館を交流の場としてどう展開していけば良いかと考えます。良い展開であるということは一つだけではなく何通りもあると思います。

 

 

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  全国の色んな地域から来られる多くのお客様に良き交流の場になればこれほど素敵なことはないと思いました。スタッフ:井川

2012.03.19 ご縁

記念館だよりをご覧のみなさま、こんにちは~!いよいよ春到来!春の陽気が幸せな気分にさせてくれる今日この頃です。しかし、春は旅立ちや別れの季節でもあり切ない気持ちになったりもします。今年は子供の保育園の同い年のお友達が幼稚園に切り替えの年で、仲の良かったお友達やお母さんとの別れがあり、子供より私の方がさみしがってる毎日です。

みなさんは「ご縁」を大事にされていますか?私は昔あるTV番組を観てからすごく「縁」を大切に思うようになりました。なんの番組だったか憶えてなく内容もあいまいなのですが、人間が生きている間に関われる人の数は平均で4000人くらいしかいないというような内容だったと記憶しています。その時「少なっ!」と驚いたのを憶えています。 今現在、世界の人口は1分に137人、1日で20万人、1年で7千万人増えているそうです。今この時も世界には70億人という人が同じ時代を生きていて、80歳まで生きると考えると相当な数の人たちと共に時代を過ごしているのに、その間自分が関わりを持てるのはたった4000人しかいないなんて意外でした。その番組に出ていた方が、自分にとって必要な人が選ばれてめぐり合えるようになっているというようなお話をされていました。その中にはこの人とは合わないなという人もいるだろうけど、そういう人に出会ったからこそ自分が成長できる時もあり、どう接していくか悩んだりこういうような人にはならないようにしようと学んだり、人の気持ちがわかるようになったりと、いい人達ばかりに囲まれていてはそういう壁に出会う事ができず、視野を広げることができません。

私も何度か人間関係で悩んだ経験があります。しかし、今振り返ってみると、あの時のあの出会いがなければ今の自分はいないなとか、あの経験があったからこそ強くなれていたり、やっぱり自分にとって必要な出会いだったと感じています。これから出会う人も自分を成長させてくれたり、自分の為に必要な人なんだと思うとどんな人に出会えるのか楽しみになってきます。その番組を観てからは人との接し方も変わってきました。なるべく多くの人に出会いたいと思い、自分からどんどん話しかけたりコミュニケーションを図ったり、合わないなと思う人と出会ってもその人のいい所を探して嫌なままにしないように心がけたりしています。身近な人からは八方美人と言われることもありますが、私はせっかく出会えたご縁を大切にして、お互いがあなたと出会えてよかったと思えるような関係をつくり、楽しく過ごしたいと思っています。 

この4000人という情報が間違った記憶だったとしても、それをきっかけに自分の考えが変わり人生をより楽しむ力となったのは確かなので、この番組に出会えた縁にも感謝です。

記念館にはいろんなお客様がご来館されるので、お客様とお話させていただく中でいろいろ勉強になったり、刺激になったり楽しませていただいております。伊丹さんのこれが好きとか昔TVでこんな事言ってたんだよなどとお客様とお話しで盛り上がっていると、別のお客様も入ってきて、自分の方がイタミスト対決なんか始めたりすると楽しくてたまらなくなります。気がつけば私は蚊帳の外で、お客様同士で盛り上がっています。ここでたまたま出会えた、同じ事に興味を持った人同士が昔夢中になった物や事について熱く語り、若かった頃の事を思い出しながら笑い合っている姿は見ていて幸せな気分になります。

いろいろな偶然が重なってここに来る事ができた方、ずーっと来たくてやっと来れたという方、たくさんの方がいろんな思いを持ってご来館して下さります。このご縁を大切にこれからも自分なりに一生懸命おもてなしをしていこうと思います。記念館にお越しの際はぜひお気軽にスタッフに話しかけてくださいね!これからもたくさんの笑顔であふれる記念館でたくさんの方と出会えることを楽しみにしています。

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319tayori7.JPGスタッフ:木山

 

 

2012.03.12 だまされるものの罪

進学や就職で来月から新しい土地での生活が始まる方、家族が引っ越しをすることが決まった方は準備に忙しい時期でしょうか。
突然ではありますが、新生活の荷造りのリストの中に追加して頂きたいものがあります。
伊丹十三の父・伊丹万作著『伊丹万作エッセイ集』(ちくま学芸文庫/税込価格1,470円)です。といいますのもその中で有名な『戦争責任者の問題』を読んでいただきたいからであります。

伊丹万作はこのエッセイの中で当時の日本人の「上のほうからからだまされて戦争をしてしまった」という雰囲気に「だますものだけでは戦争は起こらない、あんなにも造作なくだまされるほど批判力を失い、思考力を失い、信念を失い、家畜的な盲従に自己の一切をゆだねるようになってしまった国民の文化的無気力、無反省、無責任などが悪の本体である」とくぎを刺しています。

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話は少し変わりますが大学で一人暮らしを始めてすぐに100万円(?!)近くするパソコンを営業されて契約してしまった人や、高額なエステの契約をしてしまった人、大学に入ってすぐに友達から影響された宗教活動にのめり込み、大学を辞めてしまった人、いろんな人を見て来ました。みなさんも似たような話を見たり聞いたりしたことがあろうかと思います。「だまされた」と言ってしまうと問題があることもありますが、どちらにしろ周りのものは心を痛めて見ていることしかできません。

このエッセイの中で伊丹万作は「だまされるものの罪」についてこんなふうに語っています。

 

「だまされたということは、不正者による被害を意味するが、しかしだまされたものは正しいとは、古来いかなる辞書にも決して書いてはいないのである。だまされたとさえいえば、いっさいの責任から解放され、無条件で正義派になれるように勘ちがいしている人は、もう一度よく顔を洗い直さなければならぬ。
 しかも、だまされたもの必ずしも正しくないことを指摘するだけにとどまらず、私はさらに進んで、「だまされるということ自体がすでに一つの悪である」ことを主張したいのである。
 だまされるということはもちろん知識の不足からもくるが、半分は信念すなわち意志の薄弱からもくるのである。我々は昔から「不明を謝す」という一つの表現を持っている。これは明らかに知能の不足を罪と認める思想にほかならぬ。つまり、だまされるということもまた一つの罪であり、昔から決していばっていいこととは、されていないのである。」

 

この文を読んでみなさんはだまされた人はかわいそうだと思いますか。だましたものだけが悪だと思いますか...


「国は私たちをだましていたんだ!」とか「あの人は悪い人にだまされて人が変わってしまった!」とかいろんな「だまされた」が潜んでいるこのご時世に、このエッセイを読んでおいて損はありません。個人的にはもう教科書に載せて欲しいと思うくらいです。
ちなみにこの「戦争責任者の問題」のエッセイは当館の企画展示室に全文を掲載しております。また「伊丹万作エッセイ集」は記念館グッズショップにて販売しています。ぜひどうぞ。

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スタッフ:川又

 

2012.03.05 『ワイドサタデー』と伊丹さん

1970年代に伊丹さんが出演し、毎週土曜日の午後3時から西日本で放送されていた『多元生中継テレビショー ワイドサタデー』という番組をご存知でしょうか?

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"瀬戸内海をスタジオに"を合言葉に、西日本の民放局が系列を超えて(!)共同制作していた完全生中継(!!)の番組。しかも、スタジオからの生中継ではなく、各地に司会者が飛び出して行ってのリポートを2箇所あるいは3箇所、生中継で結ぶ(!!!)という、画期的な試みに満ちた番組だったそうです。その司会者のひとりが、伊丹さんでした。

という情報をお寄せくださったのは、当時、この番組の担当ディレクターでいらっしゃった、元南海放送の平岡英さん。長年大切に保管なさっていた台本・写真とともに、いろいろとお話をお聞かせくださいました。

hiraokasan&itamisan.jpg(宇和島からの生中継の日、平岡さんと伊丹さん)

この番組は、大阪の朝日放送を基幹局に、山陽放送、中国放送、大分放送、RKB毎日放送、南海放送、宮崎放送、四国放送が、それぞれの地域の面白い人物、風物などの紹介を企画、リポーターである司会者が各地に赴き、生放送の最中にさまざまな人々や出来事に出会う—というものだったそうです。
例えば、平岡さんにいただいた台本によりますと...
第197回(1974年10月19日放送)「終着駅の旅 その1」では、伊丹さんの担当した宇和島駅の他には、柴田美保子さんが門司港駅から、小林京子さんが宇野駅からリポート。
第209回(1975年1月18日放送)「たくましく生きる」では、伊丹さんは中山町(現伊予市中山)で昔ながらの暮らしを営むご家庭を訪問、柴田さんは尾道の魚売りの女性を取材、という具合です。

wide_saturday_2.JPG(平岡さんご担当、愛媛での伊丹さん出演回の台本です)

平岡さんは、「この番組の生中継のために、東京から西日本のいろいろなところへ毎週遠出していたわけですから、伊丹さんにとっては大変な労力だったと思います」とおっしゃいますが、スタッフの方々も相当なご苦労がおありだったことと思います。何しろ、街中ではなく山村漁村が舞台になることもあり、今のように衛星中継ではなく地上波での中継、カメラなどの機材もまだまだ重く大きかった頃ですから。

『ワイドサタデー』で、南海放送は(伊丹さんのリポート回ではなかったそうですが)宇和海海中公園の、文字通り「海の中」からの生中継という快挙も達成なさったそうです(カラー放送では世界初の水中からの生中継ではないか、と言われているそうですヨ!)。いわゆる「半ドン」の土曜日の昼下がり、遠い土地や見たこともない光景のライブ映像に魅了された方はたくさんいらっしゃったと思いますし、伊丹さんも、チャレンジ精神に富んだスタッフといろいろな場所へ行ける、刺激的な生中継を大いに楽しんでいただろうと思います。

ところで、平岡さんは松山東高校で伊丹さんと同級生でいらっしゃったそうです。平岡さんのお姿を見つけた伊丹さんから「やぁ、おひさしぶり」と声をかけられたというお話も伺って、「高校の同級生と約20年ぶりに現場で再会...なかなかにドラマチックですねぇ」と思いつつ、伊丹さんが言った「やぁ、おひさしぶり」の声と、ニッコリする表情が目の前の出来事のように想像されたのでした。

平岡さん、貴重な思い出のお品、お話、ありがとうございました。
この番組をご覧になったことのある方、ぜひその思い出をお聞かせください。

※当館では、伊丹十三に関する資料・情報提供をお待ちしております。
 ささいなことでも、ぜひお知らせくださいませ。

学芸員:中野

2012.02.27 記念館の建物について

2月下旬になって昼間の日差しが少し温かみが出てきました。伴ってインフルエンザなど冬を代表する伝染病も減少傾向にあると先日のニュースで見て、もうそろそろ外出しやすい気候になってきたかなと思っています。私は美術館に行ったりやあまり他では見られない建物の中を探索するのが好きで春など動きやすい時期になると出かけたりします。見知らぬ建物の中に入ったとき、入り口がどこかわからなかったり、トイレがわからなかったりします。広くない建物でも自分が知らないところだと自分のすぐ近くに自分の行きたいところがあったとしても見つけられなかったりわからず人に聞いたりすることがありました。わからない当人にとっては焦りがでたりします。せっかくご旅行でお越しになるお客様のためにも基本的なことになるのですが、ここで記念館の建物についてお越しになるお客様からよくご質問を受けたことを参考に写真でご説明させていただこうと思います。

よくご質問があるトイレは入り口から手前側が男性のトイレで奥が女性のトイレとなっています。ドアを開けて右手に電気のスイッチがありますのでつけてご利用くださいね。女性・男性両方のトイレは自動で水が流れます。

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受付より正面奥にカフェがあり、正面から見ると日光の状態で見えないときもありますが、実はカフェの中にも展示物があります。ご自由に中へ入れますので、見逃さなく是非ご覧ください。

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 ロビーには3つの自動扉があります。すべてガラス製です。透明でわかりづらいですが、戸の前で立つとゆっくり開くようになっていますので、ゆっくりお進みください。下記写真はそのガラス製自動扉です。

 

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カフェ入り口の扉もガラス製で自動扉です。黒い看板が入り口の目印ですよ。

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ロビーに並べている椅子はご自由にお座りください。展示室は常設展示と企画展示2つに分かれていまして、はじめは常設展示から見ていただき、次に企画展示を見て出口に行くようになります。展示室内はご来館いただいてからのお楽しみです。

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 出口も自動扉ですが、いったん出ますと、出口扉から展示室内には入れないようになっていますので、再度ご覧になるときはロビーにあります入り口扉から入るようになります。

 

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 記念館はさほど大きな建物ではありませんが、ご来館くださった方の疑問などを少しでも解消できれば嬉しいです。スタッフ:井川


 

2012.02.20 テレビ情報

本日を皮切りに、館長・宮本信子がゲスト出演するトーク番組、伊丹十三の出演作品や監督作品の放送、伊丹十三のドキュメンタリー番組、伊丹十三と宮本信子の生活を描いたドラマなどなど、伊丹十三記念館に関係の深いテレビ番組の放送がどんどんはじまります。
現時点でご案内できるだけのご案内をしたいと思います・・・と、言っているうちに本日朝10時5分より放送のNHK総合「BSコンシェルジュ」がもう始まってしまいます!!
記念館便りをご覧になるときには既に終了している番組もあるかと思いますが、時系列に並べていますので、皆様ご覧いただける限り、どうぞご覧くださいませ。

 
【2月20日(月曜日)】

『BSコンシェルジュ』

23日(木曜日)よりBSプレミアムにおいて放送される伊丹十三のシリーズ特集番組「こだわり男とマルサの女」の紹介をします。宮本がスタジオでインダビューに答えます。

番組名:『BSコンシェルジュ』宮本信子「伊丹十三」監督を語る・没後15年「お葬式」への道他
放送日:2012年2月20日(月)
放送局・時間:【NHK総合】午前10時5分~10時49分
放送局・時間:【BSプレミアム】午後6時~6時44分

 


【2月23日(木曜日)】

『スタジオパークからこんにちは』

「スタジオパークからこんにちは」に宮本信子が出演致します。

番組名:『スタジオパークからこんにちは』今"伊丹十三"を語る
放送日:2012年2月23日(木)
放送局・時間:【NHK総合】午後1時5分~1 時55分 生放送 

 

 

【2月23日(木曜日)・24日(金曜日)】

『こだわり男とマルサの女』 

伊丹十三のシリーズ特集番組。第1夜は宮本信子の目線から語られる伊丹十三との湯河原での日々を、ドラマで再現します。第2夜は映画監督に至るまでの人生の秘密に迫るドキュメンタリー番組です。

1夜目(ドラマ)
番組名:シリーズⅠ 宮本信子天才との日々(ドラマ)
放送日:2012年2月23日(木) 
放送局・時間【NHK BSプレミアム】午後10時~11時

2夜目(ドキュメンタリー)
番組名:シリーズⅡ 伊丹十三「お葬式」への道(ドキュメンタリー)
放送日:2012年2月24日(金) 
放送局・時間【NHK BSプレミアム】午後10時~11時

 

 

【2月25日(土曜日)・26日(日曜日)】

『山田洋次監督が選んだ日本の名作100本・家族編』

山田洋次監督が、邦画の名作を100本選ばれました。伊丹十三の出演作品と監督作品もセレクトされています。

伊丹十三監督作品
番組名:お葬式(映画)
放送日:2012年2月25日(土)
放送局・時間【NHK BSプレミアム】午後22時30分

伊丹十三出演作品
番組名:家族ゲーム(映画)
放送日:2012年2月26日(日)
放送局・時間【NHK BSプレミアム】午後23時30分

・2月21日(火)13:00~には伊丹十三の父親の伊丹万作脚本作品『無法松の一生』の放送もあります。

 

 

 【3月2日(金曜日)】

『第35回 日本アカデミー賞 授賞式』

昨年公開された映画『阪急電車 片道15分の奇跡』で宮本信子が優秀助演女優賞を受賞いたしました。数多くの俳優さんや映画に携わる人々が出席される『日本アカデミー賞授賞式』。華やかな祭典の模様をご覧下さい。

番組名:第35回 日本アカデミー賞 授賞式
放送日:2012年3月2日(金)
放送局・時間【日本テレビ】午後9時00分~10時54分

 

 

【3月3日(土曜日)・10日(土曜日)】

『伊丹十三劇場』

伊丹十三の監督全10作品を1年にわたり完全放送。映画のみでなく伊丹十三のオリジナルドキュメンタリーも放送いたします。第一回は十三の次男坊池内万平氏を通して伊丹十三の素顔を探る特別番組。記念館でも撮影が行われました。

番組名:お葬式(映画)
放送日:2012年3月3日(土)
放送局・時間【日本映画専門チャンネル】午後23時00分 他数回

番組名:「伊丹十三記念館の四季、冬篇~父から子へ伝えられたもの」(ドキュメンタリー)
放送日:2012年3月3日(土)
放送局・時間【日本映画専門チャンネル】午後14時30分、25時10分 他数回

番組名:タンポポ(映画)
放送日:2012年3月10日(土)
放送局・時間【日本映画専門チャンネル】午後23時00分 他数回

 

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【画像:2011年11月と2012年1月に発売された伊丹映画のブルーレイBOX。テレビで伊丹映画をご覧になって興味をもたれた方はぜひどうぞ。メイキング映像や幻の初監督作品「ゴムデッポウ」など特典映像も満載。】

スタッフ:川又 

2012.02.13 パニック

記念館だよりをご覧のみなさま、こんにちわ~!まだまだ寒さが身にしみますが、確実に春は近づいていますね。春が近づくだけでワクワク心が軽くなります。

先日、今まで生きてきた中で最大のパニックな出来事を体験しました。仕事帰りに保育園に娘を迎えに行き、いつものように帰っていると娘の様子がおかしく車の運転をしながら見てみると、アメを喉に詰まらせて息ができなくなっていて、背中を叩こうにも運転しながらだし、リュックを背負っている上にシートベルトで固定されどうしようもなく、それでもなんとかしようと前から胸の所を押したりオエ~ってやってみせたりしましたが、そうこうしているうちに顔が青ざめてきて目がおかしくなり飛び跳ねるように苦しそうになりこれはヤバイ!死んでしまうとパニック状態でした。

夕方の混んでいる時間で右折をするつもりだったので、真ん中の車線にいてすぐに横に停めることもできない状態でしたが、信号待ちの一番前だったので青になった瞬間一番左まで寄せて車を止め、子供を下ろしリュックをはずし背中を叩きながら、「誰か助けて下さい!!」と叫び続けました。 すると反対車線からとっさの判断でグルっとUターンして来て下さった方が「荒いようだけどごめんね」と子供を逆さにし背中を叩き助けてくださいました。

娘が泣き出して「これで大丈夫よ」と言ってくださった瞬間、体の力が抜けて泣きながら「ありがうございます!ありがとうございます!」と周りの方にお礼を言っていました。みなさんもよかったよかったと言ってくださり、みなさんの優しさにも感動し、なにより子供が無事だったことにホッとして涙が止まりませんでした。

あの時名前も聞かずちゃんとお礼もできずでしたが、見ず知らずの人の為にとっさの判断で車通りの激しい危ない場所を横切って来て下さり、あそこまでできる勇敢な優しさと行動力に心底感動しました。

当たり前の毎日は当たり前ではなく何が起るかわからないので、気を引き締めなければと思いました。今でも思い出すと胸がドキドキしてゾッとします。娘もあれ以来アメを食べようとしなくなりました。親子共々トラウマになりそうです。

当記念館もたくさんの方がご来館される施設ですので、地震や火災、不測の事態の時、冷静に迅速な行動ができるよう日々いろいろな知識を学び備えておかなければと思います。

先日、松山ではめずらしく雪が積もり、雪に慣れていない地域なので、ものすごい渋滞で出勤するのにいつもの倍の時間がかかり遅刻してしまいました。出勤途中自転車や歩行者の方が何人も転倒しているのを見かけヒヤヒヤする場面もありました。ちゃんと予測して早めにでるべきだったと反省しています。日々危機感と緊張感を忘れず、人を守れる強さを身につけたいと思います。

  yukinakaniwa.jpg tayo.jpgsintayori1.jpg                   5年目にして初めて雪の積もった記念館です。

 

スタッフ:木山

2012.02.06 新聞掲載&番組放送のおしらせ

立春を過ぎて日差しが春らしくなってきたとはいえ、まだまだ寒い日が続いています。
ウィンタースポーツのお好きな方はウキウキとお出かけなさっていることと思いますが、そうでない方は1分でも1秒でも長く屋内で過ごすために細心の注意をはらっていらっしゃるのではないでしょうか。(もちろんワタクシ、後者でございます...)

そこで、インドア派に朗報! (いやいや、アウトドア派の方にも、ここは一時的にインドア派に変身していただかねばなりませんが!)
本日の記念館便りは「お家で楽しむ伊丹万作・十三スペシャル」です。

●日本経済新聞『美の美』
 「伊丹万作と仲間たち」
 2月5日(日)より毎週日曜日

伊丹万作と松山で出会った仲間たちの絆をめぐる連載です。昨日の第1回は、旧制松山中学の後輩で友人の俳人・中村草田男さんとの友情について。若き日の伊丹万作が描いた油彩、早世した万作への思いを詠んだ草田男さんの俳句、草田男さんの随想と三女・中村弓子先生の回想によって、青春時代からの交流が彼らの生涯と創作活動を支え続けたことを詳らかにしていただきました。
お互いの存在によって高めあい、支えあい、生き甲斐にもなぐさめにもなる、そんな彼らの友情のあり方には、現代の私たちが学ぶことがたくさんあるように感じます。来週の日曜日も楽しみです。

●BSプレミアム
 「こだわり男とマルサの女
 2月23日(木)22~23時 第一夜 ドラマ「宮本信子 天才との日々」
 2月24日(金)22~23時 第二夜 ドキュメンタリー「伊丹十三『お葬式』への道」
 2月25日(土)23時30分~ 映画『お葬式』
 2月26日(日)23時30分~ 映画『家族ゲーム』(森田芳光監督)
※映画は「山田洋次監督が選んだ日本の名作100本~家族編~」のアンコール放送

第一夜は、伊丹さんと共に過ごした宮本信子館長を主人公にしたドラマです。宮本館長を演じるのは近衛はなさん、伊丹さんを演じるのは平岳大さん。伊丹・宮本夫妻と二児が過ごした湯河原のお家で撮影されたという点でも、伊丹ファンには見逃せません。
第二夜は、伊丹十三が51歳にして監督デビューするまでを追うドキュメンタリー。

●日本映画専門チャンネル (BS開局おめでとうございます!)
 「伊丹十三劇場
 3月3日(土)より監督作品10本を完全HD放送!

3月は『お葬式』、『タンポポ』と、オリジナルドキュメンタリー番組『伊丹十三記念館の四季 冬篇~ 父から子へ伝えられたもの(仮)』が放送されます。それぞれの放送時間は番組HPでご確認ください。

全10作の完全HD放送はもちろん、この企画のためのオリジナルドキュメンタリー番組も必見です。
演出はテレビマンユニオンの浦谷年良さん。伊丹さんと数多くのテレビ番組・CMを制作、伊丹映画のメイキングビデオも手がけ、そのご経験をあますところなく注ぎ込んで、『13の顔を持つ男』をどーんとお作りくださった方です。浦谷さんを通して伊丹十三の"14"番目の顔はどのように浮かび上がってくるのでしょうか。

申込みの必要な有料チャンネルですが、3月3日は無料放送だそうですよ!(一部ご視聴できない場合もあります)
※視聴方法などチャンネルに関する詳細情報はこちらをご覧ください。


三つもの特集が同じ時期に重なったのは偶然ですが、万作さん、伊丹さんに注目が集まり、たくさんの方に知っていただける機会、とても嬉しくありがたいことです。はるばるご取材にお越しくださった皆様、まことにありがとうございました。


BSプレミアム「こだわり男とマルサの女」取材の皆様
(何を撮影しているのかは...番組でご覧ください!)

...伊丹父子が注目されてモテモテだ!やったー! という嬉しさのあまり、ウッカリ自分がモテているかのような錯覚を起こしかけております。あぶないあぶない。伴天連の祭りに備えて、ぼちぼちとチョコレートを仕入れにいかねばなりませんね...営業努力...営業努力...
学芸員:中野

2012.01.30 動物はお好きですか?

突然ですが、みなさまは動物はお好きでしょうか。私はほとんどの動物が好きです。写真で見る動物も動物園で見る動物や近所で散歩をしている犬や猫を見るのも好きで動物と接するときも興味深々で接しています。朝、通勤途中に猫を見かけました。白い毛並の黄色の目をした猫で家のカーテンから身体を出し、ガラス扉からこちらを見ていましたので私も見ていました。白猫はまるで「朝は特に冷えるねぇ」と言ってるように感じ、なんだか面白い光景だなと思わず笑ってしまいました。動物にも感情があるとテレビや雑誌でききますが、その一場面に出会った一日でした。実は伊丹さんは猫を飼っていまして、猫と一緒に暮らしているからできる話がエッセイに書かれていたり、イラストで表現されていたりします。猫ではありませんが昔犬を飼っていた私も「そうゆうことあるなあ!」と思う部分があるので楽しいです。そんな楽しい部分を一部ご紹介します。伊丹さんが飼っていたコガネ丸との話です。

猫というものは人間がいやがることをよく知っていて、なにかの事情で復讐(ふくしゅう)しようとする時は、必ずそれを狙(ねら)う。たとえば真っ白いバス・マットの上にウンチをする。トイレット・ペーパーで爪(つめ)を研いで、トイレット一面紙をまきちらす。しかも残っている紙の方にも深い爪跡が残されていて、引っ張り出しても引っ張り出しても穴があいていて使い物にならぬ、といったようなことをわざとやってみせる。自分が構ってもらえない時、つまり、一人で二日間も無人の家に置いてけぼりにされたような時、立った腹の持って行きどころが無くてそうゆうことをやる。明らかに腹いせである。私たちが帰ってきても出迎えにもこない。呼んでも返事もせずに不貞寝(ふてね)をしている。こういう時にはこちらも陰険な手段を用いて復讎する。つまり架空の猫を登場させるのである。架空の猫にはシロネという名がついているが、{これは黄金(こがね)丸に対する白銀(しろがね)丸の訛(なま)ったものである)}架空の猫であるから姿も形もありはしない。この架空の猫に呼びかけたり賞めたりするのである。不貞寝をしているコガネ丸に聞こえるように大声で賞める。「シロネ、ハイ、お手!うわあ、えらいねえ!ハイ、次コロリ!コロリは?えらいねえ!うわあ、シロネはえらいねえ!」だいたいこの辺で、コガネ丸は耐えかねて釣り出されてくる。そうして、注文もされぬのに自発的にコロリをやってみせたりする。こうしてわれわれは和解するのである。『再び女たちよ』新潮文庫 309ページ引用

IMG_4946縮小.jpgこのエッセイを読んでコガネ丸に会いたくなりました。感情豊かですね。記念館に伊丹さんが描いた猫の絵を元にした商品があります。猫の表情や身体をよく観察して描かれている愛らしい絵です。色んな絵がありますので記念館にお越しになった際には是非ご覧になってお気に入りを見つけてくださいね。


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←寝ている猫の絵はコガネ丸です。




IMG_4961縮小.jpgポストカードと缶バッチです。→


スタッフ:井川

2012.01.23 2012年の目標

記念館だよりをご覧のみなさま、こんにちは~! ついこの間年が明けたと思ったら、もう1月が終わりに近づいていますね。1日1日大切に過ごさないと、あ!っという間に年とってしまいますね。

あっという間といえば、2007年5月15日にオープンした伊丹十三記念館もこの5月でめでたく5周年を迎えます。手さぐり状態で始まった2007年からもう5年も経つのかと時の流れの速さに驚きですが、あっという間とは言えこの5年の間にはいろいろな事がありました。オープニングを共にがんばったスタッフの結婚退職、私の出産に伴い1年間の育休など、細かいことを挙げればキリがありませんが、当館は限られた人数で運営していますので、何度ととなくピンチがありました。が、その度なんとか乗り越えて日々団結力を深めております。ピンチもたまにはなけりゃあチャンスにかえれませんし、人生も山があったり、谷があった方が楽しいですよね! 2012年もどんな事も楽しむ精神で1年張り切っていこうと思います。

今年は5周年という記念すべき年ですので、宮本館長はじめスタッフ一同お客様への感謝のイベントを目下考案中でございます。決まりましたらホームページでご案内いたしますので、お楽しみに~!

毎年、年が明けると今年の目標とか抱負など考えますが、なかなかその気持ちが持続せず、いつの間にか忘れて1年が終わるというのが私のパターンですが、今年こそは、なにかに挑戦したいと考え中です。「継続は力なり」と言いますが、私は継続が苦手で、今までも習い事やダイエットなど続いたためしがありません。

子供の頃も勉強が嫌いなくせに、塾に通ってみたいという理由で、「絶対続かんやろ!」という親の反対を押し切って公文に通わせてもらったのに、張り切って行ったのは数週間で、いつしか自然消滅のようにやめてしまいました。

中学の頃は人と違う事がしたいと、今までなかった女子柔道部を作り、たった5人でがんばっていましたが1人抜け2人抜けだんだんやる気もなくなり、練習も休みがちになり、なんとか中学3年間は続けましたが高校に入って1年生の時にやめてしまいました。私達の学校は伝統的に柔道や相撲が結構強くて、OBの方々がよく指導に来て下さっていました。その中には全日本女子柔道で監督を務め谷亮子選手などのご指導をされていた先生もいて、ものすごく恵まれた環境だったのに根気がなく辞めてしまいました。

20代の頃友人6人で始めたバトミントンサークルは友達の輪が広がり一時は60名ほどのメンバーになり週1回ペースで続けていました。それもなんだか自然消滅のようになくなりずっとやっていませんでしたが、昨年健康の為になにかスポーツでもしたいなとメンバーに声をかけたところ、数人が集まり月1回ペースで体を動かしています。月1回だとなんの意味もないような気もしますが、何もしないよりはいいだろうし、無理なペースでやって続かないよりはいいかなと今のところ続けています。今年はなんとか辞めないように続けていこうと思います。

ここ最近は愛媛マラソンが近いという事もあり、寒い中走っている方をよく目にします。夏の暑い時もこの時の為に体力作りをされて、目標に向かって継続されている姿にすごいなと尊敬の眼差しで見ていました。私の友人も何人か出場しますし、今年は歌手をしている友人が愛媛マラソンの挿入歌を歌うことになり注目しています。夢や目標に向かって頑張っている人はキラキラしていますし、私もなにかに向かって充実した毎日が送れるようまずは目標をみつけたいと思います。

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 2008年5月15日1周年記念撮影

こう見えて、私は妊娠9ヶ月でした。

 

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 2011年5月15日4周年記念撮影

毎年5月15日にはスタッフで記念撮影をしています。

 (写りが悪くてスミマセン!)

 

 スタッフ:木山

 

2012.01.16 メンバーズカード会員制度について

明けましておめでとうございます。今年もどうぞ伊丹十三記念館をよろしくお願いいたします。
今年のお正月も記念館メンバーズカード会員の皆様へ当館から年賀状を送らせていただきました。今年で2度目の試みであります。

メンバーズ会員制度は1年間に何度かご来館下さる方にとってはとてもお得なシステムとなっています。
3,000円のコースは会員様ご本人様対応ですが、5,000円のコースではお連れ様もご来館ごとにお一人様一緒に無料でご入館いただけます。ですから、「今日は家族と、今日は友達と、今日は同僚と」と使い方によってはたくさんのお知り合いを無料でご招待していただけます。

また、「収蔵庫ツアー」などのイベントも会員様限定でも行っております。収蔵庫は日常的には公開をしておりませんが、年に一度開館記念のイベントで事前にご応募いただき、当選した方にご覧いただいております。これがなかなか人気のイベントでご希望されるすべての方にご覧いただくことはできておりません。ですがメンバーズ会員様には上記の開館記念でのイベントとは別に年に2度会員様限定での収蔵庫ツアーを開催しております。これまでメンバーズ会員様にはご希望されるすべての方に収蔵庫をご覧いだいております。

収蔵庫には伊丹十三が住んでいた湯河原の家の一室を棚や机の寸法まで同じように再現したスペースもあります。そのスペース以外にも私物、愛用品、本人が書いた原稿、実際に着ていた洋服など様々なものを整理してご覧頂けるようにしています。収蔵庫にあるものはほとんどが伊丹十三が選び、実際に使用していたものです。当館の展示室や中庭、カフェ自体が「伊丹さんの家に遊びに来た」と感じていただけるような造りになっていますが、収蔵庫はその雰囲気をより強く感じられるスペースになっています。

次回の会員様限定の収蔵庫ツアーの開催はもうすぐです。2月末または3月頃を予定しています。収蔵庫に興味のある方はぜひメンバーズ会員制度をご利用ください。お電話・メールなどお問合せもお待ちしております。

メンバーズ会員制度に関して詳しくはこちらをご覧ください。→こちら

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スタッフ:川又

2012.01.09 「父と子」展、一部展示替えのお知らせ

みなさまお元気で2012年をお過ごしでしょうか。

前回の宮本館長からのごあいさつにもございましたように、5月15日に開館5周年を迎えます。館長以下スタッフ一同で鋭意作戦会議中でございます。お知らせまで今しばらくお待ちください。乞うご期待!
今年は他にもあれやこれやと...ああ早く言いたい!でもまだ詳しく決まってないから言えないよぅ!という情報がたくさんございます。順次お知らせをお出ししてまいりますので、ときどきこのホームページを覗いてみてくださいね。

さて。本年最初のお知らせが昨年末の情報で申し訳ありませんが...
企画展示室で開催中の「父と子 — 伊丹十三が語る父・伊丹万作の人と芸術」展。12月13日に一部を展示替えいたしました。
今回の入れ替えで新登場の展示品は
 大正15(1926)年11月1日の伊丹万作の日記
 昭和2(1927年)年11月30日の伊丹万作の日記
 『御存知源氏小僧』(1931年)ちらし
 『故郷』(1937年)上映予告
です。

とくに、大正15年11月1日の日記は、万作が松山市三番町におでん屋を開店した日のもので、仕入れの記録も書き込まれていて、興味深い日記です。(一部お目にかけます↓)

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それから、翌昭和2年11月30日の日記も、自作シナリオ『草鞋』について、監督デビューが決まる前から「これは自分で監督する!」と固く決めていたことが分かる、これまた万作らしい、貴重な資料です。

ぜひ展示室で実物をご覧ください。

「父と子」展は、4ヶ月ごとに展示品を少しずつ入れ替えています。
GWには、また新しいものをお目にかけられるように準備してまいりますので、本年もどうぞよろしくお願い申しあげます。

学芸員:中野

2012.01.02 館長・宮本信子から新年のごあいさつ

 

今年もよろしくお願い申し上げます。

この一年を恙無く過ごせますように...。

少しでも希望の光が灯りますように...。

 


     伊丹十三記念館は5月15日に5周年を迎えます。
     この日、記念館で何か楽しいイベントができないかしら?と...目下...考案中~(笑)
     皆様、どうぞ~お楽しみにしていて下さいませ。 
     中庭の桂の木と一緒に、スタッフ一同、御来館をお待ち致しております!

 

館長・宮本信子