記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2010.11.29 伊丹映画の「ナオシ・イズ・マネー」

メイキング・オブ『マルサの女』」展の終了がいよいよ12月6日(月)に迫ってまいりました。

あの大ヒットシリーズがどのようにして生み出されたのか・・・映画の制作過程や、それぞれの工程での伊丹さんの思考までのぞいていただける企画展でございます。

『マルサ』シリーズは、映画館で、テレビで、ビデオやDVDで、多くの方がご覧になった作品だと思いますが、お客様から「また『マルサ』を観たくなりました」とのご感想を何度もいただきました。みなさん、「あれ?このシーンって、どんなだったっけ?」「この人ってどんな役だったっけ?」とお感じになるのでしょう。(そのたびに、内心「フフフ、本編を観ていただける!」とほくそ笑む私。)

「脚本」コーナーでは『マルサの女』から亮子(宮本信子)が権藤(山崎努)を初めて訪ねるところ、『マルサの女2』からは取調室で鬼沢(三國連太郎)が逆上するところをピックアップして、それらのシーンがどのように書き直されていったのかをご紹介しています。人物像の肉付け、エピソードの具体化、ストーリーの伏線や緩急の配分が行われていった過程をご覧いただけます。

シナリオは『マルサの女』では3回、『マルサの女2』では5回、大きく書き直されています。
それぞれの稿は、きちんとまとめて保管されていましたが、順番が分からないものもありましたので「この原稿ではこれがあるけどこれがなくて、そっちはそうだから、えーと」という具合にえっちらおっちら読みました。そうこうするうち、映画本編にはないエピソードや設定を発見。

シナリオのブラッシュアップのために変更されたもの、上映時間の制約のために削らねばならず「泣く泣く捨てた」(伊丹さん談)もの・・・「ナオシ・イズ・マネー」(=映画が商売になるかどうかはシナリオの直しにかかっている)という伊丹さんの名言は、これだけの作業を重ねた自負から出てきたものだったのだなぁ、ということがよく分かる資料です。「こんなおもしろいもの、お見せしない手はないよ!」と、9点を選りすぐって、「幻の『マルサ』コーナー」にお出ししています。


marusa-poster-s.JPG  marusa-mania-s.JPG
前回ご紹介したポスターの向かいの壁面です。)


marusa-cut2-2-s.jpg私が最も驚いたのは、「ええ!?あの俳優さんが演じたあの役、当初は役そのものが存在してなかったの!?あんなに重要な役どころなのに!シナリオを直していく間に生まれたキャラクターなんだ!」ということが分かる、ある直筆原稿。初めて見たときは我が目を疑いました。ああ、この驚きをみなさんにも味わっていただきたい!(ですので、どなたの役かは今は申しません。)
このコーナーは、実は、私の一番のおすすめでありますが、やや・・・「マニア向け」の様相を呈しております。

「何回か観たから知ってるよ」という映画でも、場面場面の詳細は忘却してしまうもの。会期中にご来館予定のお客様は、ご来館前に映画本編をご覧いただきますと、このコーナーをもあますところなくお楽しみいただけると思います。

何せあと一週間です。「駆け込みどんと来い!」の心で、スタッフ一同お待ちしております!

学芸員:中野

=お知らせ=
  • 12月7日(火)は通常通り全館休館し、翌12月8日(水)?19日(日)は、企画展示室は閉室いたします。
  • この期間中は、大人500円、高・大学生300円、小・中学生200円で、常設展示室のみのご鑑賞となります。
  • 次回展のお知らせにつきましては、今しばらくお待ちくださいませ。