記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2008.11.21 犬か猫か!!

 先日、とあるカフェに行きましたら、最近流行りの血液型の本が置いてありました。何かとツツかれやすいB型の私、話のタネにでもと手にとって読んでみましたら、たくさん並んだB型の性質の中に「猫に嫌われる」とありました。そんなことはないと思うのですが...ちょっとショックです。

 

 私がぜひ復刊して欲しいと願っている伊丹十三の著作に『小説より奇なり』という本があります。伊丹さんが諸先生方—井伏鱒二先生、丹羽文雄先生、山口瞳先生、岡本太郎先生などなど—に突撃電話をかけて不意討ちインタビューする「伊丹十三の編集するページ」というシリーズが収められていて、これがめちゃくちゃに面白いんですね。

 そのインタビューのお題のひとつ、「犬か猫か!!」は、一見他愛ない問いのようでいて、なかなかにあなどれない質問です。「病気で寝たきりになった猫をとことんまで看病した」というエピソードを披露した幸田文先生の「とことん」にも、「飼っているのは犬なんだけど、どちらかというと猫派。犬が好きというのは余り素直すぎてどうも気にくわないところがある」と語る山田風太郎先生の「余り素直すぎてどうも気にくわない」にも、それぞれの作風に通じるお人柄があらわれていると感じます。

 

 さて、私はと申しますと、「犬か猫か」との問いには、幼少の頃には「犬」と答えておりました。当時はただ何となく答えていましたが、超ワガママな小さき暴君だった私にとって、気まぐれな猫よりは従順な犬の方が自分に都合がよいように思えたのでしょう。(自分で書いていてもおそろしい理由ですね!)自分以外のもののワガママが許せなかったのではないか、と今は自己分析しております。

長じて、そんな私でも「人生は思うにまかせないものなのだなぁ」などとワガママではいられないことを人並みに学習すると、主に忠実であるように生まれついた犬を見るのがなんだか切なく、尻尾を振られようものなら申し訳なくいたたまれない気持ちがするようになりました。それにつれてか憧れからか「猫もいいなぁ」と感じはじめた頃、無類の猫好きと出会って親しくなりました。

 彼女は、街中でも、家の近所でも、大学の構内でも、猫を見かけると一も二もなく突進していき「猫可愛がり」しようとします。猫に許容されると、当然ほくほくと嬉しそうにするのですが、相手にされないと「あ?ん」と口惜しがって身をよじりはするものの、その様すら何とも嬉しそうなのです。「すげなくされて喜ぶとは、一体どんな心理か!」と驚き、「プイnya.jpgっとするのも猫のよさ。そこがたまらないの」と言ってのける彼女にまたまた驚き、猫好きの奥深さに触れた思いがしました。今日も彼女は猫にけしかけてはふられて身をよじってるんだろうなぁ、と想像すると、懐かしさと微笑ましさでついつい頬がゆるんでしまいます。

 

 今、「犬か猫か」と問われたら、「犬も猫もどちらもいい。強いて言うなら、猫好きな人を見るのが好きです」とお答えすることになろうかと思います。ああ、でも犬好きの人もいいんですよねぇ...。(つづく!?)

 学芸員:中野