記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2008.04.24 キャスティングについて展示をリニューアルしました

20080424a.jpg トップページでもお伝えしているとおり、このたび企画展示室を一部リニューアルしました。「『お葬式』にみる伊丹十三のキャスティング術」と銘打ったコーナーが改変部分です。

 「百の演技指導も、一つの打ってつけの配役にはかなわない。」

 伊丹十三は『お葬式』のチラシに、映画監督であった父親、伊丹万作のこの言葉を紹介しました。『お葬式』は処女監督作品です。伊丹十三は、映画づくりの最初からキャスティングの重要性に気を配り、入念な準備を積み重ねていたのです。
 資料を調べていくうちに、我々はキャスティングの面白さも伊丹十三の映画に通底する特徴ではないかと考えるようになりました。そして、ぜひ"伊丹流"を資料を通じて知っていただきたいと思いました。
 キャスティングに関する構想ノートや、メイキングの過程を綴った「『お葬式』日記」の直筆原稿では、配役についての伊丹十三の考えが伝わってきます。最終的に決定された俳優とは全くイメージの違う俳優が構想に入っていたり、ときには「こんな人も候補だったの!?」と驚いてしまう人が候補に挙がっていたりします。そんなことを考えながら完成された映像で各俳優の演技を見てみると、やっぱりこれが適役だと思ってしまうのだから不思議です。
 個人的には香川良介、田中春男、藤原釜足、吉川満子といった往年の名優を配役したところに、伊丹十三の映画への深い理解と慈しみが伝わってくるような感慨を持っています。俳優の魅力は映画の大きな楽しみの一つだと思います。展示をご覧頂き、『お葬式』の俳優たちの演技と、その舞台裏を感じて頂けましたら幸いです。

学芸員:浅利